木漏れ日レボリューション
澄岡京樹
男・伝説の樹・男
木漏れ日レボリューション
——あいつが好きだ。
——ここで告白に成功したカップルは永遠の幸せを手にする。
……目の前の男はそう言っていた。
崩壊しつつある校舎地下領域にて、俺たちは最後の戦いを始めようとしていた。
◇
/回想・木漏れ日の教室/
「伝説の樹って?」
俺がそう訊ねると、キリヤは、
「ああ! それって新
と訊ね返してきた。なんか聞いたことのあるやりとりだ。
「そうだけど、って、そうじゃなくって! 俺が訊きたいのは伝説の樹についてだよ!」
そう力強く言い放つと、キリヤは「そうだなー」とワンテンポ置いてからこう続けた。
「そこで告白に成功すると永遠に幸せになれるらしいぜ」
「ホントかよー」
俺はぶっきらぼうに返したが——
——トゥンク。
胸の高鳴りを確かに感じ取った。……他ならぬ、自分自身のである。
「嘘じゃねえって。実際、そこでカップルになったっていう人たちはこの前だったかに金婚式を迎えたらしいぜ。……いいなぁ〜〜、俺も素直にいられる相手とそういう関係にありたいもんだぜ。……俺にここまで本音を出させるほどだぜ?」
俺の手をガシッと掴みながらキリヤは言った。
「ああ、そうだな。……俺も、ちょっとだけ気になってきたぜ」
顔の紅潮を隠すように背を向けて、俺はそう言った。
/回想おわり/
◇
——しかして、校舎地下領域に〈伝説の樹〉は存在した。
それは樹ではなく、例えば愛のような……『人の持つ強固な感情に起因する願い』を叶えるアーティファクトであった。
それはあまりに過ぎた力であったため、校舎地下領域に封印されていた。だが、毎年『最も強靭な思いを持ったペア』のみ、その封印領域の障壁を潜り抜けることができる。……どうも、かつては最強の戦士が願いを叶えるためのアーティファクトだったようで、現在でも『今年の勝利者』を決めるために最低限の『1vs1』のみ発生できるようになっていたのだ。
そして、告白が成立した瞬間——二人は和解したことになり、カップルという『二人一組』という優勝者とカウントされ——永遠の幸せに至るということであった。
色々なことがあり、俺は——いや、俺たちはそんな真実を知った。その中で、なんやかんやで崩れゆく校舎地下領域での最終決戦が始まったのだ。
戦うのは、俺とキリヤ。願いが叶うのはどちらでであろうか。……俺は、実のところキリヤに勝ってほしかった。俺はキリヤのことが好きだからだ。
だがキリヤに勝ちを譲るだけではいけない。お互いに全力の戦いをして、そして勝たせなければならないのだ。
「……キリヤ。やっぱこうなっちまったんだな」
「そうだなカイト。ここで決着、つけねぇとなんだな」
お互いに目線を合わせて語り合う。この後殺し合わねばならない。その直前に、互いの心境を吐露しあっていた。
ゆえに——
「——キリヤ。最後に、言っておきたいことがある!」
「——奇遇だな、俺もだ!」
拳を握り、足を踏みしめ、今にも弾け飛んでぶつかり合う寸前のことであった。
「「俺は——」」
弾け飛び、拳と拳がぶつかり合う、その刹那。
「「お前のことが、大好きだ————……ッッ!!!」」
互いの想いが炸裂激突した。
互いが互いを思いやるその気持ちこそが、俺たちの望んだこと、願った景色。全く同一の想いが今ぶつかり合い、伝説の樹はその願いの成就を受諾した。
そして世界は永遠となり、俺たちは最高の戦いを繰り返した。
終わることのない戦い、ライバルとの戦い。
それは殺し合いではなく、それは校舎地下領域での出来事ではなく——
俺たちは、二人の人生を幸せに過ごすことになったのだ—— 。
物語は終わっていない。それは当然の帰結である。なぜならば、俺たちの人生は終わってなどないのだから——
木漏れ日レボリューション、了。
木漏れ日レボリューション 澄岡京樹 @TapiokanotC
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