やっぱり、なんか怪しい
なんだかんだでみんな楽しんで、帰ることになった。
「じゃあ、俺が優を送っていこう」
と高見が言うと、
「待て。
何故、お前が送っていく」
と伊吹が口を挟んできた。
教師の前でも偉そげな態度の高見は、
「王子が姫を送って行くのは当然でしょう」
と言い返していたが、伊吹は、
「お前は王子かもしれないが、こいつは姫ではないから、送っていかなくていいぞ」
い言い出した。
「こいつは、宇宙人に連れ去られたことがあるとかぬかす、ただのカワイソウ人なだから」
……先生、と思っていると、伊吹は、薫たちも高見もまるごと追っ払おうとする。
「ほら、散れ散れ」
しっし、と手を振る伊吹に、高見が、
「伊吹さん!」
と抗議の声を上げた。
……伊吹さん?
と優が思ったとき、高見のスマホが鳴り出した。
高見の手にあるそれをチラと見た伊吹は、そっけなく、
「ほら、帰れ、おぼっちゃま。
呼び出しかかったんだろ?」
と言う。
この二人は、やはり、元から知り合いなのか?
と優が思ったとき、茶髪で紺の学ランを来た男が何処からともなく現れ、高見に言った。
「さ、高見様。
お早く」
「小次郎。
何故、出てくる~っ」
と高見は男に文句を言い始める。
小次郎は高見を無視し、
「わたし、高見様にお仕えしております、小次郎と申します」
と笑顔で挨拶してきた。
なかなか可愛らしい顔をしている彼は、自己紹介のときには伊吹を見ず、あとで頭を下げていた。
だから、やはり、元からの知り合いなのだろう。
「ささ、お早く」
と小次郎は、ゲーセン前の道を両手で示し、高見に向かって言う。
「……お早くって、車ないのか?」
「ささ、お早く」
と小次郎は一番近くのバス停に走るよう、高見を急かす。
「お前が迎えに来る意味は何処にあるんだっ!?」
「ささ、お早く」
まったく動じず、小次郎はそう繰り返す。
車くらい手配しとけーっ! と叫びながら、ダッシュした高見の声があっという間に遠くなる。
さすが王子。
足も速いらしいな、と思いながら、優は、高見と小次郎が消えた道の向こうを眺めていた。
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