最後の晩餐
それは百年前からのプロローグ
50、七と七と七
それは百年前。
昔、世界は幾つもの国に分かれていた。
争いは絶えず、日々繰り返される絶望の果てに誰もが安堵する刹那すらも感じ取れない。
絶望が連鎖し、そして感染する。
終わりなき悪夢、文字通り終わることはないだろうと、誰もが思っていた矢先、一人の聖女は現れた。
「皆さん、戦いは辞めましょう」
彼女は現れた。
そして世界中へ語りかけた。
彼女は特殊な力を持っていた。それが今では常識となっている異能の力。
その力がない世界において、彼女は絶対的力で世界の理を変えた。
彼女は戦う人々に温もりを与え、優しさで包み込んだ。
国という形は消失し、人は手を取り合い、長い長い戦争には幕は下ろされた。だがその間に死んでいったものたちはもう戻らない。
彼らを弔うため、ヒミコは一つ大きな祭壇を創った。その祭壇はこれまで起きた愚かな戦いの象徴とし、二度と戦いを繰り返さないために抑止力ともなっていた。
それから百年、世界は三つの勢力に支配されていた。
貴族、王国兵、龍教会。
「神ヒミコ、あなたの創った世界は素晴らしいですね。本当に素晴らしい」
龍教会教皇は言った。
「七つの大罪、その名を冠する者さえいなくなれば」
「教皇、我々
教皇の背に映る七人の影。
その先陣に立つのは白装束の男ーー霊代。
彼は笑みをこぼし、教皇へと言った。
「手始めに暴食でも討ちましょうか?」
「お前らならできるか?」
「当然です。悪魔を討つのは、私たち天使の役目ですから」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
そこはある貴族の屋敷。
そこで一人の男は口をハンカチで拭き、優雅にもワインを
「美味しいですね。やはり」
彼と向き合って座るその女性ーー神崎冬花は言った。
「これは龍教会に忍ばせている仲間から聞いた話だが、吸血鬼、お前は死ぬぞ」
神崎冬花の前で座っている男。
彼は暴食の名を冠する罪人ーー吸血鬼。
「そうか。死ぬか」
吸血鬼は慌てる様子もなく、落ち着いた口調でそう呟いた。
「吸血鬼、お前は」
「覚悟、なら十分にできている。死ぬということは私にとって重要なことではない」
「だが死を回避することはできないわけではない」
「そうかもな。だけど決定された死を回避することはできない。だから私はこれからやらなくてはいけないことをしに行く」
吸血鬼は立ち上がり、おもむろに歩みを進めた。
神崎は指の一本すらも動かさず、吸血鬼が去っていく姿を見ていた。
吸血鬼が去った後、入れ違いに現れた戸賀は神崎のもとへと歩み寄る。
「神崎さん。これで良いんですか?」
「ああ。あいつが覚悟しているのなら、わざわざ止める必要もない。それにこの過程は回避することはできないものだ。だから私も私が成せることをするだけだ」
神崎も動き出した。
これから起こる大事件、その日のために。
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