1号車4列-A 月曜日

 「ねぇ、一緒に遊ぼうよ」

「え~」

「電車の本ばっかり読んでないでさ、遊ぼうよ」

「しょうがねぇなぁ。何するの?」

「何しよっか。何にも決めてないや。」

そういうと、彼女は笑った。彼女は長野に引っ越してきたとき、隣の家に住んでいた人で、同い年だとわかってからは時々遊んだり、時には家族ぐるみで旅行にも行った。

中学生になってからは一緒に登校するということはなくなった。理由は明白だ。どちらも同性の友達ができてそっちが優先、という感じになってきたからである。しかし、学校では同じクラスになったりと、普通に今まで通り仲良くしていた。

そして、高校も一緒の学校に行った。高校になってからは、同じ方面に同じ学校に行く人がいなくなったので彼女と毎日一緒に登校した。彼女は放送部に入った。

彼女なら、頼める。










 「それで、参加することにしたんだね」

「はい。勝手に決めてしまってすいません」

「いやいや。構わないよ。もともと入るだろうという体で君たちに声をかけたからね。思いっきり楽しんでくるといい」

「ありがとうございます。それでは、私は授業がありますのでこれで」

「ああ。わざわざありがとうね」

「失礼します」


 昼休み。俺は彼女に会っていた。彼女は後輩に声をかけてきてもらって来たものだ。

「どうしたの?用って」

「ああ。実はな、俺たち『鉄道部』の活動に協力してほしいんだ」

「協力?いいけど…。私は何をすればいいの?」

「俺たちは今『189系プロジェクト』という、引退した車両でツアーをする、そんな企画をJRとやろうとしてる。」

「なるほど。それで?」

「お前にはその時の車内アナウンスをお願いしたいんだ」

「ふ~ん。別にいいけど。」

「本当か!?」

「いいよ。その代わり、一つ条件がある」

「な、なんだよ。条件って」

「写真撮影以外の時には私は乗務員室って言うんだっけ?に籠ってる。基本客対応はしない。これでいい?」

「ああ。もちろんだ。助かるよ。」

条件を出されたが、その分対応は俺たちがやればいい。俺たちにとってはそれほど気にならない条件だった。何より、旅客案内において大事な「アナウンス」を任せることができたのが一番嬉しいことだ。

「じゃあ、計画がまとまったらまた連絡するよ。本当にありがとう。」

「分かった。後さ…今日、一緒に帰らない?」

「いいけど…この計画を立ててからだぞ。いいのか?」

「いいよ。待ってる。」

「分かった。」


 

 「先輩、彼女と仲いいっすね。付き合ってるんすか?」

彼は笑いながら聞いてきた。しかし、あまりの突拍子のなさに俺は思わず吹き出してしまった。

「そんなわけないだろ。ただの幼馴染だよ」

「そうですかね。傍からみたらただの幼馴染とは見えませんよぉ~。」

「そんなことはどうだっていいんだよ。じゃあ、放課後いつもの場所で宜しく。」

「了解です、部長」

そういうと、彼は教室の方へ走っていった。俺も次は移動教室だ。急がねば。





 ただの幼馴染…。だよな?

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