1号車2列

「僕たち『鉄道部』は、189系N102編成の保存に賛成します」







 「そうかそうか。やはり君たちはそう言ってくれるか。」

そういうと、男性はニコリと笑った。

「それじゃあ、私たちが今計画しているプロジェクトにも参加してくれるかね?」

「プロジェクト?189系N102編成に関係するプロジェクトですか?」

「そうだ。今から説明するから聞いて判断してくれ。」


 「現在、189系N102編成はあそこに約1年半置いたままなわけだが、先ほども言った通り解体派と保存派に分かれている。もちろん、私たちは保存派だが、このままこれ以上あそこに置いたままというわけにもいかない。そこで、その189系を再び動けるようにして運行しようと、そういうプロジェクトなんだよ。

しかし、JRにはそんな余裕も人員もいない。実際、このプロジェクトには私たち5人しかいない。だから、近隣の学校だった君たちの学校の『鉄道部』に目を付けたわけだ。」


なんとも偶然な話だ。たまたま俺たちが『鉄道部』として活動していただけでこんな大きなプロジェクトに参加できるかもしれないということが。


「どうだね。プロジェクトに参加して、私たちに手を貸してくれないか?」

「なるほど。プロジェクトの内容は理解しました。しかし、高校生の俺たちが何をすればいいんですか?」

「うむ。君たちには、運行した際の車掌業務や、お客様にどのようにして喜んでもらえるかのアイデアを出してもらおうと思っている。もちろん、私たちは君たちが出した意見を全力で叶えるよ。」

「なるほど。面白そうですね。」


「では、もう一度聞こう。長野高校鉄道部諸君。君たちも、このプロジェクトに参加してくれるかい?」

俺たちは顔を見合わせて一斉に言った。



「はい、是非とも!」


そう言うと、男性、いや、プロジェクト長は今まで一番大きな笑顔になった。

「良かった。改めて歓迎するよ。」

「いえ、こちらこそこれからお世話になります。よろしくお願いします。」

二人そろって頭を下げる。するとプロジェクト長は本当に歓迎してくれているようで、うんうんとうなずきながらニコニコしている。

「早速なんだが、ちょっと来てくれないかな」

「なんですか?」

「いや、歓迎祝いに現在の189系N102編成を見せようと思ってね。まあ、1年半野ざらしだったわけだから、だいぶ痛々しい姿になっているかもしれないけどね」

「えっ?本当ですか!?」

恐らく俺たちはだいぶ嬉しそうな顔をしていたんだろう。プロジェクト長はまたニコリと笑って、

「君たちは本当に189系が好きなようだね。良かった。さあ、こっちだ。ちゃんとついてきてね。」

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