最悪の脅し

 私は前回のお話で書いた通り、毎日体調が悪く、それでも学校に行き、進級し、なんとか高校生活を過ごすことができていました。


 しかし、体調は一向に良くなりませんでした。

 体調がいい日よりも体調が悪い日のほうが多かったです。

 学校に行きたくないわけじゃないのに。むしろ、家にいなくて済むなら学校に居たいくらいなのに。それなのに私の体は言うことを聞いてくれませんでした。


 そして、もう何度目か、どうしても体調が優れずに学校を休んだその日の夜。悲劇は起こりました。


 父も帰ってきていて、母と父と私で、今日私が学校を休んだことについて話し合っているときでした。


「そんなならもう高校やめさせる!」


 そう怒鳴った母が家の電話を手に取りました。

 高校の電話番号は登録してあります。よって、ボタンいくつか押すだけで簡単に高校に電話がかかってしまうのです。


「ごめんなさい、お願いします、やめてください」


 涙が溢れました。

 私は文字通り、懇願しました。


 今冷静に考えればその電話一本で高校を辞められるはずがないですよね。

 それに、先生はそれによって心配すると思います。

 というか、電話された方がよかったですかね。親がおかしいことをそれをきっかけに先生に言うことができて、どうにかできていたかもしれません。

 夜に怒った親が「娘を今すぐやめさせる!」なんて電話したら確実にやばいやつですよね。


 あの時、本当に辞めさせようとしていたのか、それともただの脅しだったのかわかりません。

 結果、電話はされませんでしたので。



 これ、私がおかしいんでしょうか? 私が悪かったんでしょうか?


 こんなに休んでるけど、出席日数ぎりぎりだけど、頑張ってるのに。

 学校だって楽しいのに。行きたくないわけじゃないのに。

 勉強だって、友達関係だって、問題があったわけじゃないのに。

 心配の一つもしてくれなかった親なのに。


 親の義務である「教育を受けさせる」ことすらしてくれなくなったら私の親はいったい何者になってしまうんだ?

 こんなに怒鳴られて脅されて、私が涙ながらに懇願しなければいけなかったことなのか、今でもわかりません。


 この出来事は私は一生忘れません。

 でも、親は絶対、もう忘れています。許せません。

 あれからどうやってその話し合いが終わったのかは覚えていません。ただ、次の日には昨日のことが嘘のように消えていました。


 あれは学校を休んだ私が悪かったのでしょうか。

 やっぱり、体調を崩すことはそれほどの罪なのでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る