鏡の中の私

 私の心はどんどんボロボロになりました。


 そしてついに、私は笑うことができなくなりました。


 私はいつも笑っている子でした。

 友達から「天使~!」なんて言われるくらい、ずっとニコニコしていました。


 なのに、笑えなくなりました。

 本当に笑えないんです。どうしてかわからないんです。

 顔が、動かないんです。笑っても、おかしいんです。


 お風呂の時に、鏡に向かって笑顔を作るんです。

 気持ち悪い顔をしていました。

 そんな自分を見て涙が溢れました。


「笑えなくなってしまった」


 鏡を見るたびに悲しくなりました。

 笑顔は私のいいところだったはずなのに、それがなくなってしまいました。


「笑え、笑え、笑える、笑顔の練習」


 ぽろぽろと涙を流しながら毎日笑う練習をしました。


 今思うと本当に気持ち悪いです。

 鏡見て笑いながら泣くって……やばいです。本当に極限状態でした。


 笑えなくなってから、私は毎日マスクをして学校に行くようになりました。

 そうすれば笑えなくても誰にもばれません。


 いつだったかは忘れましたが、いつの間にか笑えるようにはなりました。

 それでも、笑えるようになってしばらくの間は笑顔が変でした。自分でもわかるくらい、なにかが変でした。

 笑えなくなった影響なのか、少し笑顔が昔と変わってしまいました。

 目が笑っていないと言われることもありました。

 それに関しては正直自分ではわかりませんでした。何も意識していなかったので。


 親から笑顔を奪われたこと、今でも忘れません。許しません。

 私の親は私が笑顔を失っていたことを知りません。

 親に今までのことを全部言ったらどうなるんでしょう。何も思わないですかね?

 少しは罪悪感とか、抱くんですかね?

 もう今は謝らせたいとか、更生させたいとかそんな気持ちはないので、わざわざ労力を使って確かめようとは思わないですが。


 きっともう、あんな風に笑顔を失って苦しむことはないでしょう。

 それくらい、私にとって地獄でした。


 笑顔を失うってどういうことなんでしょう。自分の身に起きたことなのにイマイチ理解できません。

 表情筋が全く機能しなかったんです。気が付いたら笑えなくて。笑い方を忘れてしまったようでした。

 笑顔を失うってことは人として大事なものを一つ失ったような感覚でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る