親とのこと(続き)

 そして、夜寝る前に母親から、毎日父親の愚痴を聞きました。

「なんでこの人たちは結婚したんだろう」

 と、ずっと思っていました。

 私はただ、母親の機嫌が直るように、愚痴を聞きながら肩もみをしていました。肩もみをしないと「そんなこともしてくれないの!?」と怒られました。妹と弟は母親の肩もみなんてしません。愚痴を聞くのも肩もみをするのも全部私でした。

 家事のお手伝いをするのも私でした。洗濯や洗い物。

 家事のお手伝いくらい、やるおうちは普通にやるんだと思いますし、本来、私たちのこともいろいろやってもらっているので感謝しなければならないことだったんだと思います。

 それでも「なんでお前なんかを手伝わなきゃいけないんだ」と、思っていました。

 私の考え方は知らないうちにどんどん歪んでいました。


 それ以外には、

 どんなに頑張っても褒めてもらえないこと。

 そのくせ何か悪いことをするとすぐに怒鳴られてしまい、いつしか「怒られないようにしよう」と、ビクビクするようになっていました。


 子どもの言い分は全く聞いてくれませんでした。

 「大人の自分たちの言っていることのほうが正しい、だから大人の言うことを聞け」

 口にこそ出しませんでしたが、そんな威圧のようなものをずっと感じていました。


 何か大きなことがあり、それがトラウマになっていて、などではなく、日常の小さなひとつひとつ、そのすべての積み重ねによって頭に刷り込まれ続けていったものが、幼い私をじっくりゆっくり蝕んでいきました。


 こんなにたくさんのことを書いていると「なんだ、記憶あるじゃん」と思うかもしれません。これはカウンセリングを何度も何度も続け、やっと言語化できるようになったものを断片的につなげたものです。

「記憶」というより「感情」として、私の中に刻み込まれていたものでした。

 そしてそれは、このような「恐怖」「悲しみ」しかありません。

 これ以外の「楽しみ」「喜び」は、何1つ、覚えていません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る