恥ずかしい親

「私の親はおかしい」


 そう気づいてからは、親への見る目が変わりました。


「なんでこんな親なんだろう、一緒にいて恥ずかしい」


 一緒に外を歩くたびにそう思うようになりました。

 紹介の時に書いたように、外面はいいので、もちろん他人の前で親が何か非常識なことをすることはありませんでした。

 それでも私は恥ずかしかったです。自分がこんな人と親子だと、家族だと、他の人に思われたくなかった。


 それからというもの、親の言動一つとっても、どんどん目に付くようになっていきました。

 紹介のところで書き忘れてしまったんですが、私の親はヘビースモーカーです。父も母も煙草を吸います。特にひどいのは父親のほうで、私たちがご飯を食べていてもお構いなしに目の前でぷかぷか吸います。

 当時は電子タバコがまだなかったのか、それとも流行っていなかったのか、ライターで火をつけて吸う普通の紙煙草でした。今は2人とも電子タバコです。


 そのとき小学生だった私でも、受動喫煙というものは知っていたし、副流煙のほうが有害だということも知っていました。

 しかもそれを目の前で、毎日。


「私たちを殺したいんだろうか?」


 そんなぶっ飛んだ考えさえ出てきてしまうほど、当時は吸っていました。

 私はわざと目の前で咳ばらいをしながら部屋にそそくさと戻っていました。

 もちろん、それであの親が「自分の煙草を嫌がっているんだ」なんて気づくわけはありませんでした。それが目的なわけではなかったので特に気にしてはいません。

 でも、親のせいで日に日に自分の肺が壊されていっていると思うと憎くて仕方ありませんでした。


 さらに父はお酒、競馬、パチンコ、宝くじ、と、お金をどんどん使ってしまう人でした。

 パチンコは私が小学生のうちに気づいたらやめていましたが、ほかは今でも続いています。

 父の年収は私が調べた限り、平均より低いです。貯金もできません。


 母は家事があまりできません。

 料理と洗濯はあまり問題はありませんでした。一番大変だったのは掃除です。

 母も父も掃除ができませんでした。

 当時の私はそれに慣れていたのか、汚いと思いつつも実家に住むことはできましたが、1人暮らしをしている今の私が実家に帰ると正直汚くて無理です。

 泊りなんてしたくありません。トイレもお風呂も汚くて使いたくありません。


 それでも、毎日食事が出て、かろうじて住める家があって。

 それだけしてもらっているならばいい親だと思わなければだめだったのでしょうか?


 私はどうしても親を好きになれませんでした。

 もしこんな人が周りにいたら友達にはなりたくないし、好きにもならない。一緒にいたいとも思わないし、尊敬もできない。

 だから私は「お金をつかってくれてありがとう」としか思いません。

 お金を使ってくれる人ならあの親じゃなくてもだれでもよかったと、今でも思います。


 ペットはいくらご飯をくれる人でも、嫌なことをする人には懐かない


 というのをどこかで見たことがあるんです。

 私はペットではないけれど、それでも、ああ、その通りだと思いました。

 私はご飯もくれて家もあって、生活をしていくこと自体は問題なかったけど、嫌なもののほうがたくさんあった。

 だから私は親のことが嫌いで、そして嫌いになることは間違いではないんだと思うことができました。

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