再びの苦行
再び、再びこの時が来てしまったのです。
「親への感謝の手紙」
小学生最後の苦しかった思い出。それをまた味わう日が来てしまったのです。
「卒業式の日、来てくれた親御さんに渡します」
そう言ってまた封筒と便せんが渡されました。
あの時以上にぼろぼろの私にまたこんなことをさせるのか。
どうして親に感謝なんて。それをどうして美徳とするのか。
そりゃ、普通に考えたら親に感謝するものです。でもそれはしっかり育ててくれる親だったらです。
子どものうちは親の有難味がわからないとか、親になったらいつかわかるとか、もうそんなものじゃないんです。私の苦しみは。
だって、私は親を殺したいんです。罪にならないのなら。私の経歴に傷がつかないのなら。もし二人だけ好きな人を殺していいと言われたのなら。私は迷わず両親を殺します。
こんな話をしてしまってすみません。
それだけ私は親が嫌いなんです。嫌いなんてもんじゃないです。説明ができません。
この話を書きながら、すごく感情的になってしまいました。
私はこの感情的に書きなぐった文章をそのまま皆さんにお見せします。
それだけ、私の感情を揺さぶる出来事だから。
そして私はまた、紙に嘘を敷き詰めました。
昔より上手く、多くの嘘を。
なんて書いたのかは覚えていません。でもずっと悲しかった。ずっと苦しかった。
私の小説を書いてきた経験がこんなことに活かされてしまったことが虚しかった。
こんなことに使うために私は小説を書いてきたわけじゃないのに。
私はまた早くに書き終わりました。
しかし、小学生の時とは違って、今回は中身を先生に確認されることはありませんでした。
びっしりと最初から最後まで偽りの感謝が埋め尽くされた手紙。
先生に見られた時のためだけに丁寧に書いたその手紙は、そのまま母の手に渡りました。
「なんだ、まじめに書かなきゃよかった。こんなんだったら適当に『ありがとう』とかだけ書いて終わりにしたのに」
最初から先生が見ないとわかっていたら本当に「ありがとう」と一言だけ書いていたと思います。
ありがとうだけなら、嘘じゃないです。
「お金を使ってくれてありがとう」
って意味ですけど。
今回はほんとにひねくれた文章ばかりですみません。
ただ、これが私の本音です。
感謝をしたいと思えない親が憎かった。
感謝をしたいと思わない自分が悲しかった。
感謝できるような誇れる親じゃないこと、人として尊敬できる人じゃないこと、そんな人に産んでもらってしまったことが憎かった。
あの親に対してではなく、単純に親という存在に感謝できないことが悲しかった。
そして何より、また感謝を強制されたことが本当に本当に辛かったです。
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