お弁当

 小学校、中学校のお昼ごはんは給食でした。

 でも、土曜日の部活の日のお昼ご飯はお弁当でした。

 母は朝私より早く起きて、お弁当を作ってくれていました。

 それは今一人暮らしをしているからわかります。とても大変なことだと。


 でも、私は母のお弁当が大嫌いでした。


 ほかの部活のメンバーのお弁当がうらやましくて仕方がなかったです。

 みんなのほうがおいしそうで、いいものを作ってもらえてて、色もいい。対して私は、色は偏ってるし、冷凍ばっかり。味にも飽きてくるし、みんなに見せるのが恥ずかしかったです。

 でもその恥ずかしさが、本当にお弁当の中身が原因だったのか、今になってだんだんわからなくなってきました。


 今の私がバイトに行くとき、たまにお弁当を持っていくことがあるんです。その時、私も冷凍食品を使うことがあるんですよね。

 もちろん、その時は嫌な感情を抱くことはありません。

 なのでもしかしたら、あのお弁当が嫌だったんじゃなくて、あの母が作ったものだから嫌だったんではないか、と思うんです。


 違う話に例えて言うと、

 好きな人にされたら許せるけど、嫌いな人にされたら許せないこと。

 ってありますよね?

 そんな感じかなーと思うんです。


 ほかにも、私は親が口を付けたものを食べたり飲んだりすることができません。

 間接キスができないっていえばいいんですかね?

 友達とか、仲がいい人とは問題ないです。なのでもともと潔癖で受け付けないとかではなく、本当に「親だから」受け付けないんです。


 私の「親が嫌い」という感情が大きすぎるんだと思います。生理的に受け付けないと思うほどでした。

 親のにおいも嫌いでした。


 正直、この時の私はどうしてここまで親のことが嫌いなのかうまく言語化することができませんでした。

 大学生になってからカウンセリングをする中でやっと何が嫌だったのか言えるようになりました。自分の中でもやもやとしていたものの形が少しずつ見えてきて、それだけで少し楽になることができました。


 親が嫌いな理由が言語化できないからこそ「私は本当に親が嫌いなのかな? 思春期だから親が嫌いなのかな?」と、何度も悩み考えました。でも、考えるたびに「やっぱり私は本当に心の底から親のことが嫌いなんだ」と思いました。


 今になってやっと断言できます。やっぱり思春期だったからではなく、心の底から本当に親のことが嫌いでした。

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