第1070話 邪神封印
三橋師範はダークウルフと戦いながら、グリムの様子を気にしていた。そして、邪神が居る方角から眩しいほどの光と膨大な量の魔力を感じ、何かあったと気付いた。三橋師範はグリムが心配になって邪神とダンジョン神が戦っている方へ行こうとした。
ところが、ダークウルフたちが邪魔をする。
「そうか。それが貴様たちの役目なのか」
三橋師範はダークウルフを殲滅しないと邪神のところへ行けないと感じた。
「仕方ない。疲れないように省エネモードで戦っていたが、全力で倒すとするか」
三橋師範は邪神戦に参加するために余力を残しておこうと考えていたが、さっさとダークウルフを殲滅する事にした。そこで『クロノスの指輪』に流し込んでいる魔力を増やす。
ダークウルフの動きが遅くなり空気が重くなった事で、さらに素早さが強化されたのを感じた。三橋師範は高速戦闘中でも使える『ホーリーブロー』を発動する。
次の瞬間、ダークウルフが襲い掛かってきた。二メートル半ほどの大きな身体が四つの足で地面を蹴って跳躍した。それを迎え討つ三橋師範は、ダークウルフの下に潜り込むように踏み込み、下から突き上げるようにアッパーを放つ。
その拳が黒い毛皮に叩き込まれた瞬間、煌輝聖光ウェーブが撃ち出されてダークウルフの心臓を破壊した。邪卒の狼が黒い霧となって消えると、別のダークウルフが襲い掛かってきた。三橋師範はそれらを次々に倒していく。
一方、三橋師範と一緒にダークウルフと戦っているジョンソンは、光の大剣デーモンキラーでダークウルフを倒していた。襲い掛かってくるダークウルフの頭をデーモンキラーでかち割り、舞うように滑らかな無駄のない動きで次のダークウルフへと向かう。
これは三橋師範から習ったナンクル流空手の足捌きを応用した動きだった。三橋師範とジョンソンが凄い勢いでダークウルフを倒したので、間もなくダークウルフが全滅した。
「邪神のところへ向かおう」
三橋師範が提案すると、ジョンソンが賛成した。二人は邪神の姿が見えるところまで来た。
「おっ、邪神が倒れているじゃないか」
ジョンソンが声を上げる。二人はグリムの姿を見付けて近寄った。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「邪神にトドメを刺さないのか?」
ジョンソンが尋ねてきた。俺は邪神の胸を指差す。
「あの胸に刺さっているのは、封神剣なんだ。攻撃して封神剣を壊すような事はしたくない」
ジョンソンは納得したように頷いた。近付いて武器で攻撃するなら封神剣を壊さないように攻撃できるが、邪神は弱々しいが苦しんで手足を動かしているので、近寄ると攻撃されそうだ。
「ダンジョン神様は?」
三橋師範が質問してきた。俺は烏天使がダンジョン神を介抱しているところを指差し、どういう戦いだったのかを伝えた。
「ダンジョン神様は相打ちとなってダメージを受けたが、封神剣を使うチャンスを作ったという事か。これで封印できないとまずいという事だな」
ジョンソンが気に入らないという顔をする。
「倒せるなら、倒した方がいいんじゃないのか」
「それはそうなんですが、どうすれば確実に倒せるかが問題です」
「身体を切り刻んで、燃やせば倒せるんじゃないのか?」
「精神だけになっても、死なないんじゃないかと心配なんです」
それを聞いた三橋師範とジョンソンが顔をしかめた。邪神が不死の存在だという事を思い出したのだ。アムリタを飲んだパルミロが不死の半邪神になった。だが、あれは偽物の不死者だったので霊体も残さずに消滅させる事ができた。
今度は邪神である。邪神の霊体はとんでもなく強力だろう。下手したら取り憑かれて身体を乗っ取られる事も考慮しなければならない。
「考えてみると、邪神の肉体だけを消滅させた場合というのは、無茶苦茶面倒なのだな」
三橋師範が難しい顔で言った。
「ダンジョン神なら、できるんじゃないのか?」
ジョンソンが言った。だが、ダンジョン神はダメージを受け、それが回復していない。
「今は無理ですね。俺たちにできるのは、邪卒が邪神に近付いて助けるのを阻止する事かな」
それがフラグになったのか、ダークセベクと邪卒王、それに黒武者の集団が近付いて来た。
「さあ、俺たちの仕事をしましょう」
俺たちは担当を決めて分かれた。ちなみに、俺はダークセベクの担当、ジョンソンが邪卒王、三橋師範が黒武者に決まった。
「またダークセベクか。面倒なんだよな」
ダークセベクは普通に魔法を使うので手強い。俺と相対したダークセベクは、戦斧を振り回して邪気の刃を飛ばしてきた。俺も神剣ヴォルダリルを振って神威飛翔刃を飛ばして迎撃する。上手く相殺した。
続けざまに神威飛翔刃を飛ばして反撃。すると、攻撃を躱したダークセベクが圧縮した邪気の塊のようなものを投擲した。それが迫って来る。俺は『フラッシュムーブ』で後方に退避する。邪気の塊は地面に着弾して爆発。凄まじい爆風が周りに広がった。
俺が爆風に耐えている間、そのダークセベクは両手を上に上げ、念話で何かを仲間に伝えた。伝えたのは分かったのだが、内容は分からない。邪卒の思考は異質すぎて理解できなかった。
すると、周りに居る邪卒たちから邪気が放出され、そのダークセベクに集まって黒い球体を形成し始める。
「えっ、その技は正義の味方側が、使う技じゃないのか?」
それは昔から最後に正義の味方が使う技として伝説になっている技だった。
―――――――――――――――――
【あとがき】
本日より新作のSF『ファンタジー銀河』の投稿を始めますので、よろしくお願いします。
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