第1058話 ストームドレイクのドロップ品

 俺が『オートランチャー』を発動すると、空中にグレネードガンが形成された。それを手に取って上からジョンソンに襲い掛かってくるストームドレイクに聖光励起魔力弾を撃ち込む。


 グレネードガンから撃ち出される聖光励起魔力弾は音速の三倍ほどで飛び、ストームドレイクの胸にめり込むと爆発して<聖光>が付与されたD粒子を撒き散らした。それによりストームドレイクの胸には大きな穴が開いて息の根が止まる。


 ジョンソンが俺の方をチラリと見てから、ストームドレイクを『ニーズヘッグソード』で攻撃した。俺とジョンソンは次々に襲い掛かるストームドレイクを倒し続け、その数が三十匹を超えた時に階段に逃げ込んだ。


「ハアハア、さすがにキツイ」

 ジョンソンが階段に座り込んで肩で息をしている。

「魔法レベルはどう?」

 今回の目的である生活魔法の魔法レベルが上がったかを確認した。質問されたジョンソンがニヤリと笑う。


「上がった。魔法レベルは『22』だ」

 ジョンソンが胸を張って答えた。

「『クラッシュサーベル』を習得できるな。今のうちに魔法陣を渡しておきます」

「ありがとう。時間のある時に習得しておく」


 そう答えたジョンソンは、魔法陣を収納ブレスレットに仕舞う。

「そう言えば、ストームドレイクのドロップ品を回収できませんでしたね」

 ジョンソンが階段の外に目を向ける。まだ上空には多くのストームドレイクが旋回している。


「当分回収できそうにないな。ドロップ品は何時間ぐらいでダンジョンに吸収されてしまうのだろう?」

 俺は首を傾げた。一日経つとドロップ品がダンジョンに吸収されてしまうのは知られているが、時間まで調べた冒険者は居ない。いや、確かめた冒険者は居るかもしれないが、それを報告した者は居ないようだ。


「ストームドレイクの数が減ったら、まだあるか確かめてみよう」

 ジョンソンが不変ボトルを取り出して万能回復薬を飲んだ。その不変ボトルはオークションで手に入れたらしい。俺も万能回復薬を飲んで魔力と体力を回復させる。


 一時間ほど待っていると上空のストームドレイクの数が減った。

「そろそろドロップ品を回収しに行こう。ストームドレイクが落ちた辺りに走って行き、『マジックストーン』を使って魔石を回収してから、大きなドロップ品がないか探そう」


 俺たちは一斉に走り出し、少し離れた場所でそれぞれが『マジックストーン』を発動した。それで魔石が飛んで来たのだが、その中には指輪のようなものが混じっていた。


 その後、急いで大きなドロップ品がないか探したが、見付からない。そうしているうちに、俺たちに気付いたストームドレイクが急降下してストームブレスで攻撃してきたので、階段に逃げ込んだ。


 階段で回収したドロップ品を調べると、ほとんどが黒魔石<中>で他に少数の指輪があった。その指輪を調べると『収納リング』だと分かった。容量は縦・横・高さがそれぞれ三メートルの空間と同じだ。


「魔石と収納リングの数を比べると、四匹に一匹くらいが収納リングをドロップするようだ」

 ジョンソンが数を数えて言う。


 最初にファイアドレイクを倒した時には、魔石の他に三種類ほどのドロップ品があった。それに比べるとドロップ品がしょぼいように感じるが、あのファイアドレイクは中ボスだったのだから特別なのだ。ジョンソンに確かめると、ドレイク種のドロップ品はこんなものだという。


「今収納アイテムが値上がりしているから、オークションに出せば一個で何百万ドルという金額になるぞ」

 邪神の降臨が近い事を感じている人々が多いからなのか、逃げる時に便利な収納アイテムは相場が暴騰しているそうだ。何百万ドルと言えば、数億円という事だ。確かに以前の相場と比べれば高騰している。


「収納アイテムは、相場が安定していると聞いていたのに」

 俺が言うとジョンソンが頷いた。収納アイテムは希少品だが、毎年安定した数が回収されるので相場は安定していたのだ。


「邪神眷属や邪卒、それにダークセベクが地上で暴れたから、人々は何か異変が起きていると感じて、不安になっている。その証拠にシェルターを建設する富豪が増えているそうだ」


 日本においてもシェルターを造る者が増えている。それとジョンソンの話を総合するとシェルター造りは世界的な傾向なのだろう。


 それから一時間ほど休憩した俺たちは、もう一度ストームドレイク狩りを始めた。今度は俺が囮になってストームドレイクを集め、ジョンソンが『ダークネスレイン』で一網打尽にしようという作戦である。


 俺は前に出てストームドレイクを攻撃した。予想通りストームドレイクが集まり、俺を攻撃してくる。その攻撃を高速戦闘モードで躱し、『ホーリーファントム』のホーリー幻影弾で反撃する。ストームドレイクの動きは、先ほどの戦いで分かっているので五十匹ほどが集まるまで回避する事ができた。


 ただ回避も限界に来ている。俺はジョンソンへ視線を向け、彼の準備が出来ているのを確かめてから走り出す。ジョンソンの方へ移動すると全てのストームドレイクが付いて来た。


 ジョンソンの横を通り過ぎた時、『ダークネスレイン』の一万五千発の黒炎弾が撃ち出されるのを待っていた。そして、ストームドレイクの群れを照準に捉えたジョンソンは黒炎弾を撃ち出す。


 一斉に飛翔した黒炎弾がストームドレイクの群れに向かって飛翔し、そいつらの肉体を貫通して穴を開ける。黒炎弾により撃ち抜かれたストームドレイクは、そのまま消えるという事もあれば、地面に向かって落下するやつもいる。


 一万五千発の黒炎弾は、固まって飛翔しているストームドレイクの八割ほどを捉えて撃ち抜いた。俺は『オートランチャー』の聖光励起魔力弾で生き残りを始末する。


 その時、身体の中でドクンという音がして生活魔法の魔法レベルが『35』になったのが分かった。ジョンソンの方を見ると落下したストームドレイクのトドメを刺し終わったようだ。


 そのジョンソンの顔が嬉しそうだった。ストームドレイクの群れを一網打尽にして魔法レベルが上がったのだろう。これで魔法レベルが『23』のはずだから、もう一つ上がれば目標達成である。ただ今日は終わりにする。さすがに精神的に疲れた。


 俺たちはドロップ品を集めてから階段に戻り、ここで野営する事にした。明日もストームドレイク狩りをするつもりなのだ。野営の準備を始める。と言っても、最近販売され始めた階段専用ハンモックというものを階段の途中に固定し、料理の準備をするだけである。


「グリム先生、回収した収納リングはいくつだ?」

「全部で八個」

「私が十二個だから、全部で二十個。やはりドロップ率は二十五パーセントくらいかな」

 ジョンソンが二個の収納リングを俺に渡した。半分ずつという約束だったのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る