第1004話 ダンジョンボスのドロップ品
帰還ゲートに入った次の瞬間、俺はダンジョンの入り口から入ってすぐのところに立っていた。
「最終層のボス部屋から、ここに出るのか。楽でいいな」
俺はダンジョンの入り口から地上に出た。
「疲れた。ダンジョンハウスで休もう」
ダンジョンハウスに行って長椅子に座ると、全身の力を抜いた。
「エルモアたちはどの辺なんだ?」
メティスに確かめる。
『エルモアたちは、五層の山岳地帯を地上に向かっているところです。後半日ほどで地上に戻るでしょう』
「タア坊たちは大丈夫か?」
『楽しそうに、ダンジョンを歩いていますよ』
エルモアとネレウスが付いているので大丈夫だと思うが、ちょっと心配になった。
「そう言えば、タア坊とハクロがダンジョン内を移動するのは、初めてかもしれないな」
タア坊とハクロには見張り番かドロップ品探ししか頼んだ事がなかったので、ダンジョン内で長い距離を移動するのは初めてのはずだ。
エルモアたちが戻って来る間に、ドロップ品を確かめる事にした。まず透明な魔石を取り出し、マルチ鑑定ゴーグルで調べる。すると『ガイド魔石』と表示された。詳しい情報を調べると、全てのダンジョン内にある階段の場所を光を出して示してくれると分かった。
「これは当たりだな」
ダンジョン探索で使えば、時間の節約になる。冒険者なら誰でも欲しがるだろう。
次に黄色の宝石を出して調べた。しかし、マルチ鑑定ゴーグルでは調べられなかった。仕方ないので心眼を使って調べ、三十分ほど解析して重大な事が判明する。
「これは凄いものだぞ」
『何が凄いのです?』
「この黄色の宝石は、『封印石』という名前で、神剣グラムに組み込むと封印する能力が強力になるようだ」
『邪神を封印できるほど、強力になるという事ですか?』
「前回は、封印石を組み込んだ神剣とギャラルホルンを使って、封印したらしい」
烏天使から聞いた話を伝えた。
『ギャラルホルンですか。それがない場合はどうなるのでしょう?』
ギャラルホルンは邪卒に奪われ、破壊されてしまったからだ。
「ダンジョン神が、ギャラルホルンに代わるものを持っているかどうかが、問題だ」
『しかし、封印では将来に不安を残す事になります。できるなら倒したいですね』
「それはそうだけど、ダンジョン神たちでも封印するしかなかったんだ。七人の戦士が参加したとしても、邪神に勝てるかどうか」
根拠もないのに強気になるのは致命的だが、弱気になるのも禁物だ。分かっているが、邪卒王のような化け物を何匹も作り出せる邪神の力も感じていた。
『封印するというのは、どうするのです?』
「封印石を組み込んだ神剣を邪神の胸に突き刺してから、ギャラルホルンを使って封印力を強化して封印自体をロックしたようだ」
『なるほど。ギャラルホルンは封印力の強化に使われていたのですか。そうなると、ギャラルホルンに代わるものがあるかどうか。もしくは新しいギャラルホルンを作れるか……』
神剣グラムや封印石を作れる技術があるのだから、ギャラルホルンも作れるのかもしれない。ただ将来の不安となる封印ではなく、倒したいと俺も思っていた。
「ダンジョンボスが封印石をドロップしたという事は、新しいギャラルホルンか、その代替品が用意できたんじゃないか」
『期待しましょう。次は剣ですね』
俺はドロップ品の剣を取り出した。マルチ鑑定ゴーグルで調べると『虚無剣』と表示された。虚無というと黒炎を連想する。黒炎は虚無の炎とも呼ばれているからだ。
「虚無だそうだ」
『黒炎エナジーを使う剣なのですか?』
メティスは俺と同じように連想したらしい。
「ああ、黒炎を刃の形にして剣に纏わせる事ができる。その力は虚無の炎による消滅だ」
『ダークネスレイン』や『黒神雷』も黒炎エナジーを使っているので、物質を消滅させる力がある。但し、この二つの魔法は、消滅させる力がそれほど強くない。
だが、虚無剣から伸びる黒炎エナジーの刃は、消滅の力が強化されている。当たったものを虚無に引き込んで消滅させるようだ。
『邪神も切れるのでしょうか?』
「有効だと思う。ただ邪神に対して、どこまで威力を発揮できるか分からない」
ドロップ品も確認して寛いでいると、エルモアたちが戻って来た。俺を見付けたタア坊が走って来ると、飛び上がって胸に抱きついた。
「どうした?」
「魔物を倒したのね。楽しかった」
タア坊は嬉しそうに報告した。ハクロやネレウスも元気そうだ。無事にエルモアたちが戻ったのでホッとする。
エルモアだけを残して残りのシャドウパペットたちを影に戻す。
「そう言えば、二十五層の中ボス部屋にあった宝箱はどうした?」
『転移の罠は、一回起動するとクールタイムがあるようで、問題なく中身を回収しています』
エルモアが収納アームレットからドロップ品を取り出し、それを俺が受け取った。ドロップ品は生活魔法の『才能の実』が二個だった。
「俺の好みを調べているようだ」
『たぶん本当に調べているのでしょう』
俺は肩を竦めた。
「ちょっと予定外の事が起こったが、帰ったらグリーン館と屋敷にバリアを設置しよう」
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