第724話 ドロップ品と御神籤

 由香里はドロップ品を鑑定する手段を持っていないので、持ち帰って調べる事になる。

「よし、御神籤おみくじだ」

 白木は楽しそうに聖域の方へ歩いて行った。由香里も白木を追って聖域に向かう。


 聖域に入ると御神籤がある場所へ行く。

「まず、おれから引いていいか?」

「いいですよ」

 白木は楽しそうに御神籤を選び始めた。

「どれにしようかな神様の言う通り……これだ」

 選んだ御神籤を引き抜いた。その御神籤を確認すると『吉』と書かれていた。御神籤の良し悪しは『大吉』『吉』『中吉』『小吉』『末吉』の順番になっているので、『吉』は二番目に良い結果だ。



「やった」

 次の瞬間、御神籤が日本刀に変わった。白木も鑑定する手段を持っていなかったので、詳しい事は分からない。だが、刀身を見て伝説級以上の魔導武器だと感じた。


「白木さん、くじ運はいいみたいですね」

 由香里に言われた白木はニヤリと笑う。次は由香里だった。アイアンドラゴンを倒した者は、『中吉』以上が出ると決まっているので、最低でも『中吉』のはずである。


 御神籤を選んで確かめる。すると、また『吉』と書かれていた。そのくじがタイチが持っている『鑑定モノクル』に似たものに変わった。

「もしかして……」

 由香里は装着してみた。すると、レンズに『鑑定する物を選んでください』というメッセージが表示された。


「間違いない。鑑定モノクルね。しかも、タイチが持っているものより性能が上かも」

「由香里ちゃんも、そこそこくじ運がいいじゃねえか」


 由香里は魔導技術書を鑑定した。『魔力感知の奥義』と表示された。中身は秘蹟文字で書かれているので読めないが、貴重な魔導技術書のようだ。


 次に金属球を鑑定した。その結果、それが『神僕コア』と呼ばれるものだと分かった。神僕コアはシャドウパペットに使う魔道具らしい。この神僕コアを魔導コアと一緒に組み込んだシャドウパペットは、人間並みの知能を持つほどに高性能化するらしい。


 白木が由香里が装着している鑑定モノクルを見た。

「その鑑定モノクルの性能はいいのか?」

「そうみたいです」

「だったら、こいつも鑑定してくれ」

 由香里は白木が差し出した日本刀を鑑定する。


「それは『雷神刀』です。神話級の魔導武器で、格はシングルAのようです」

「よっしゃー、ラッキーだぜ」


 その後、由香里たちは地上に戻って冒険者ギルドに報告した。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 由香里がアイアンドラゴンを倒したと聞いた俺は、これで一番最初の弟子たち四人全員がB級になったと喜んだ。


 さて、次はタイチとシュンだけど、どうするのかな? アイアンドラゴンに拘る必要はないんだけど。御神籤を引くというイベントがあるので、アイアンドラゴンを倒してB級になりたいというのも分かる。だが、御神籤は試験官になれば引けるので、他のドラゴンを倒してB級になるのも選択肢の一つだと思うのだけど。


「由香里が手に入れた神僕コアが、気になったの。調べたんでしょ?」

 食堂でコーヒーを飲んでいたアリサが言った。

「ああ、魔導知能に似ているが、記憶媒体としての機能がメインらしい」


 心眼を使って神僕コアを調べてみたのだが、大量の情報を記憶するための魔道具のようだった。その他にも計算や論理的推測を支援する機能もあるが、それは限定的でメティスのような魔導知能には及ばないだろう。それをアリサに伝える。


「そうなんだ。そう言えば、初級魔導知能はどうなったの?」

 紅砂ダンジョンで手に入れた初級ダンジョン用の魔導知能は、メティスが教育中である。

『あの魔導知能は、『マリオン』と名付けました。現在、魔法文字、秘蹟文字、神殿文字の他に五つの言語を教え、分析魔法の基礎を教えています。そろそろ使えると思います』


 エルモアが金属球であるマリオンをアリサに渡した。

『マリオンは、テレパシーまたは精神感応と呼ばれる能力が低いようです。シャドウパペットに組込んで使用する事をお勧めします』


「そうなんだ。シャドウパペットか。どうする?」

 俺はアリサに尋ねた。

「そうねぇ、護衛と執事はベルカとサクラが居るから、小さなシャドウパペットでいいかな」


 俺はマリオンをエルモアのような戦闘用シャドウパペットにする事も考えていたのだが、アリサはダンジョン攻略の先頭に立って活動するタイプの冒険者ではないので、小さなシャドウパペットでも良いかもしれない。


「それなら、ハムスター型にするかい?」

「ええ、それがいいかも」


 アリサもシュンからシャドウハムスターの影魔石をもらっているので、それを材料として魔導コアと指輪を作製した。作業部屋に移動し、アリサがシャドウクレイを三キロほど取り出して『プチクレイニード』でD粒子を練り込む。


 それをハムスターの形に整形し、魔導知能と魔導コア、コア装着ホール一個、マジックポーチ、それにソーサリー三点セットを組込んでから、最終調整する。色は茶色と白のまだら模様にする。


 仕上げに魔力を流し込むと普通の猫ほどの大きさのハムスターが出来上がった。

「可愛い、大成功よ」

 俺から見ても可愛いハムスターに仕上がった。前足は小さいが器用そうな指が付いている。


「こいつの訓練はどうする。メティスに任してもいいけど」

「いえ、私が自分でやるから」

 アリサは、このシャドウパペットがかなり気に入ったようだ。


「こいつの名前は何にする?」

「魔導知能と同じ『マリオン』にしようと思うんだけど、大丈夫かな?」

「魔導知能が完全制御するなら、問題ないと思う」


 マリオンは精神感応力が弱く身体に接触していないと、思考の伝達はできないらしい。マリオンにはソーサリーボイスを使って会話させる事にした。


 アリサはマリオンに分析魔法や魔導工学の基礎を教え込み、魔法回路コアCを作れるように教育した。


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