第714話 アジ・ダハーカのドロップ品
ジョンソンたちはドロップ品を探し回り、琥珀魔石<小>と剣、槍、小さな宝箱を発見した。ハインドマンは、まずロングソードを鑑定モノクルで調べた。
「これは『ガラティン』だ。神話級、しかも格がメジャーに分類される魔導武器らしい」
ジョンソンとブラッドリーが興味を示した。
「それで、どんな機能や効果を持つ剣なのだ?」
ブラッドリーがハインドマンに尋ねた。
「そこまでは分からない。分析魔法使いに調べてもらうしかないだろう」
ハインドマンはブラッドリーに剣を預けた。そして、槍を鑑定する。
「この槍も神話級だ。だが、格はダブルAらしい。名前は『クールグラス』、ケルト神話に出て来る槍だな」
最後に小さな宝箱が開けられ、中から水晶球が出てきた。鑑定したハインドマンは、顔をしかめた。
「鑑定モノクルでは、鑑定できないものらしい」
ジョンソンがニヤッと笑う。
「躬業の宝珠は、鑑定モノクルで調べられなかったと聞いている。目的のものを手に入れたんじゃないか?」
ブラッドリーが頷いた。
「そうらしいな。帰るとしよう」
クレイトン大尉たちは、死んだカーディフ少尉の遺体を収納リングに仕舞ったようだ。ハインドマンからドロップ品の事を聞くと地上へ戻るように指示した。
地上に戻ったジョンソンたちは、アメリカ東海岸にある陸軍基地へ向かった。その基地の部屋でマクミラン中将とステイシーが待っていた。
「報告してくれ」
マクミラン中将がクレイトン大尉に命じた。クレイトン大尉は、龍蛇アジ・ダハーカとの戦いとドロップ品について報告する。
それを聞いたマクミラン中将は、満足そうな顔をする。
「カーディフ少尉の件は残念だが、結果に関しては満足できるものだ。ご苦労だった」
中将はドロップ品を出すように言う。
ハインドマンとブラッドリーが、テーブルの上にドロップ品を並べた。
「ステイシー殿、その水晶球が躬業の宝珠かどうか、調べてくれないか?」
それを聞いたステイシーは、グリムが持っているものと同じようなマルチ鑑定ゴーグルを取り出して装着した。
そして、水晶球に目を向ける。
「間違いありません。これは躬業の宝珠です」
「何というものなのかね?」
「『
マクミラン中将が鋭い視線をステイシーへ向ける。
「それは本当なのかね?」
「間違いありません。ですが、これは賢者が使って魔法に利用できるものではありません」
それを聞いた中将が、渋い顔になった。
「賢者システムで、利用できないというのは確かなのかね?」
「この宝珠を使った者に、特別な能力を与えるようです。使い方によっては、大きな武器になるでしょう」
「使い方というと、どういう風に使うのかね?」
ステイシーがちょっと考えてから答えた。
「そうですね。……例えば、爆弾を魔物の間近に転移させて爆発するという事もできるでしょう。さらには自分が転移して、魔導武器で攻撃する事もできます」
中将が頷いた。
「その爆弾を、魔物の体内に転移できないのかね?」
「分かりません」
「試してみるしかないという事か。面白い」
アジ・ダハーカのドロップ品は、軍が買い取る事になった。ジョンソンたちはそれぞれ大金をもらって解散した。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
その頃、俺は渋紙市で修業を続けていた。『鋼心の技 奥義』を修業した成果として『精神結界』という技術を習得した。それは巨獣が放つ覇気への対策にもなると俺は確信している。
次に『並列思考のペンダント』を使った修業では、二つ目の頭脳とも呼べる『二次人格』を使えるようになった。二次人格というのは、『並列思考のペンダント』が作り出した人工頭脳に、使用者の精神パターンをコピーしたような存在である。間違っても『二重人格』と混同しないで欲しい。
俺とアリサは屋敷の作業部屋で『並列思考のペンダント』について話し合った。
「『並列思考のペンダント』を使うと、同時に別々の魔法を使えるようになるのよね」
「そうだ。生活魔法は元々同じ魔法なら、複数同時に魔法を起動できるという特性があったけど、『並列思考のペンダント』を使えば、違う魔法を同時に二つ使える」
アリサが首を傾げる。
「でも、周囲のD粒子を集めて魔法を放つ生活魔法だと、D粒子不足にならないかしら」
「そこはD粒子収集器を使えばいい」
「なるほど」
アリサは納得したようだ。
俺は同時に二つの魔法を使うためだけに『並列思考のペンダント』の修業をしていた訳ではない。本当の目的は、神威エナジーを使った魔法を完成させるための下準備だった。
神威エナジーを使った魔法を使うには、
そこでどうしたら発動できるかと悩んでいたのだ。しかし、二次人格を使えるようになった事で発動が可能になった。いよいよ神威エナジーを使った魔法を創る時が来たのだ。その事をアリサに話した。
「それで、どういう魔法を考えているの?」
「巨獣だろうと邪神だろうと、切り裂く事ができる魔法かな」
「どういう事?」
「神威エナジーというのは、次元を超越して作用する意思を持つパワーだ。その神威エナジーを使って、別の次元に存在するものでも斬れる刃を形成し、撃ち出す魔法を創ろうと思っているんだ」
俺は神という存在は一つの次元だけではなく、いくつかの次元に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます