第660話 新グリーン館の完成
歩いて新グリーン館へ行き、鍛錬ダンジョンの入り口へ向かう。そこには警備用シャドウパペットのGGシリーズ二体が見張りをしていた。
GGというのはグリーン館のガードという意味だ。俺は顔パスでダンジョンに入った。一層の草原と湖を『ウィング』で飛んで二層へ下りる。
そして、二層の岩山まで飛んだ。一番奥の岩山の麓に着陸し、岩山を見上げる。その岩山は四十メートルほどの高さがあり、綺麗な円錐形をしていた。
俺はエルモアと為五郎、ネレウスを影から出し、為五郎とネレウスは周囲の見張り、エルモアは魔法の検証を手伝ってもらう。
岩山から五十メートルほど離れると、『スキップキャノン』を発動する。岩山の上から十メートルほどのところをロックオンし、スキップ砲弾を放った。そのスキップ砲弾は長さ五十センチほどの拳銃弾のような形をしていた。
亜空間に入るのは三十メートル手前を選択したので、二十メートルほど飛んだスキップ砲弾は、突然消えた。次の瞬間岩山の内部から爆発音が響き渡り、岩山の一部がボコッと膨れ上がる。そして、その部分の岩が細かく割れて雪崩落ちた。
岩山には直径四メートルほどのクレーターが出来ている。俺の想像以上の威力だった。巨獣が全長五十メートルで、そこに四メートルの穴が開けば、大ダメージである。人間の大きさで考えると、十センチ以上の穴が開くという事になるから致命傷だろう。
但し、これは巨獣の防御力を考えていないので、それを考慮してダメージが三分の一に減ったとしても、数発撃ち込めば仕留められると計算した。これも机上の空論に過ぎないが、何らかの目安になる。
『威力は十分なようですね』
「スキップ砲弾が、重要な臓器の近くで爆発すれば、巨獣でも大きなダメージを与えられるんじゃないか」
ベヒモスとレヴィアタンの防御力が、どれほどか分からないので確実とは言えないが、内部からの破壊なのでダメージを受けるはずだ。
それから『スキップキャノン』の早撃ちの練習を始めた。まず連続で発動してスキップ砲弾三発を岩山に叩き込む。すると、連続で爆発音が響き渡り、岩山の半分から上が崩れてなくなった。
「ほとんど同時に爆発が起きたから、相乗効果で破壊力が増したのかな」
『そうだと思います』
俺は二つの岩山が消えてなくなるまで早撃ちの練習をした。ちなみに、岩山は一週間ほどで元の形に戻るようだ。
地上に戻った俺は、『スキップキャノン』の試し打ちで気になった点を改良してから完成させた。仕事が一段落したという感じで、今日は何もしたくない気分だ。
作業部屋のソファーでぐったりしていると、モイラが現れた。
「グリム先生、私のために護衛用シャドウパペットを作ってくれる、と言っていましたよね?」
「ああ、それがどうしたんだ?」
「できれば、為五郎みたいなシャドウパペットにして欲しいんです」
「ワーベア型にして欲しいという事か。いいけど、モイラは熊が好きなのか?」
「人間より、動物のシャドウパペットが好きなんです」
「そうだったのか。だったら、エイブもワーベア型にすれば良かった」
「なるべく熊に近いシャドウパペットが良いんです」
「だったら、熊型シャドウパペットにするか?」
『それだと、武器を扱えなくなります』
突然メティスが話に割り込んできた。
「そうか、ダメだな。やはり熊よりのワーベア型にしよう」
俺はモイラと話し合って、どういうシャドウパペットにするか決めた。
翌日、モイラと一緒になってシャドウパペット作りを始めた。シャドウベアとダークリザードマンの影魔石を使って魔導コアと指輪を作製し、シャドウクレイを百五十キロほど使ってエルモアに大体の形を作ってもらう。
それから顔などの細かい部分を仕上げていく。モイラの注文通りに体形はほとんど熊である。但し、器用そうな長い指と二足歩行が容易になるような骨格にする予定だ。
全身を長い毛で覆い、丸い尻尾を付けた。高速戦闘が可能なソーサリーアイなどの高性能なソーサリー三点セットを埋め込み、コア装着ホール五個、マジックポーチⅠ、バッテリー三個を組み込んだ。
最後に魔導コアを埋め込む。
「色はどうする?」
俺がモイラに確認する。考えて来るように言っていた事だ。
「パンダにします」
パンダにするのなら、もう少し顔を丸くするんだった。そう思いながら、白のシャドウパペット用塗料で塗装する。
その後、仕上げとしてモイラが魔力を注入する。粘土のパンダが生命を得て生きているパンダに変化した。このシャドウパペット作りが、一番魔法らしいと俺は思う。
モイラはパンダ型シャドウパペットを『リュリュ』と名付けた。リュリュの武器として、剣を振る速さが三倍になるという『魔剣オルナ』を与えた。伝説級の魔導武器で、リュリュのパワーで速さが三倍になると、凄まじい威力を発揮するだろう。
リュリュの訓練は、メティスが制御するエルモアとモイラが協力して行う事にする。モイラとしても良い経験になるだろうと思ったのだ。
新しい魔法の練習やモイラの鍛錬などをしているうちに、新グリーン館が完成した。貴族の屋敷のような豪華な外観だが、内部はシンプルになっている。
一階は三十人ほどが同時に食事ができる食堂とカフェやバーが付属したラウンジがあり、ここでメンバーが寛ぎ、ゆっくりとした時間を過ごす。
そして、二階は資料室や打ち合わせ部屋、応接室、武器庫などがあり、三階は浴室やトイレのある個室になっている。
地下には本格的な練習場があり、ここで魔物の心配をせずに早撃ちなどの稽古ができるようになっていた。
グリーン館という名前は新しいグリーン館のものになり、元のグリーン館は俺の屋敷に戻った。屋敷に住んでいるのは、俺と根津とモイラになる。
姫川や咲希は新しいグリーン館に住み、生活魔法を学ぶ事になった。新しいグリーン館を完全に機能させるには、何人かの人を雇いメイド型シャドウパペットを何体か作らなければならないだろう。
ただすぐには用意できないので、現在はトシゾウたち執事シャドウパペットが、姫川や咲希の世話をしている。
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