第247話 アースドラゴン攻略準備
俺が人型シャドウパペットを作れるかもしれないと思いワクワクしていると、メティスが本来の目的を思い出させるように忠告する。
『その前に、アースドラゴンです。防御力はフォートスパイダーより低いですが、素早さは上です』
「素早いのか……厄介だな」
資料を見ると、ドラゴンの特徴であるブレスも吐くという。このブレスはストーンブレスと呼ばれている。但し、アースドラゴンだから石を吐き出しているという訳ではない。
魔力を圧縮して石のように固くなったものを超高速で雹のように吐き出すのだ。これは木の幹に穴を開けるほどの威力があり、人間に命中したら即死する。
「ストーンブレスの対処法も考えないとダメだな」
俺が呟くとメティスの声が頭に響いた。
『『マグネティックバリア』で防げるはずです。ですが、どれほど耐えられるかは不明です』
取り敢えず『マグネティックバリア』で防いで、『カタパルト』で逃げるしかないようだ。
「そうなると、素早く倒さないと危ないな。『ダイレクトボム』なら確実にダメージを与えられると思うけど、素早いアースドラゴンに命中させられるかが問題だな」
その点『ブローアップグレイブ』なら、確実に命中させられるだろう。俺は作戦を組み立て始めた。
『何を考えているのですか?』
俺が考え込んでいるので、メティスが心配したようだ。俺は小声で答えた。
「アースドラゴンと、どう戦うか考えていただけだ」
俺は明星ダンジョンの調査に戻り、各層の特徴と遭遇する魔物をチェックした。手強そうなのは、二十三層のソルジャーレックスと三十層のソーンサウルスのようだ。
ソルジャーレックスは二足歩行の恐竜タイプで、体高が二メートルほどである。この魔物は群れで行動しており、兵士のように巧みに連携して攻撃する能力がある。ソロの冒険者にとって嫌なタイプだ。
もう一方のソーンサウルスは、ハリネズミを恐竜にしたような魔物である。体長は四メートルほどで背中に大きな棘を剣山のように背負っている。
始末の悪い事に、ソーンサウルスは背中の棘をクロスボウの矢のように飛ばせるのだ。中ボス部屋の前で野営する時は、このソーンサウルスに気を付ける必要があるらしい。
明星ダンジョンを調べ終えた俺は、屋敷に戻った。
『グリム先生、アースドラゴンは強敵です。もしものために、エスケープボールを使えるようにしておいた方がいいと思います』
「エスケープボールか、上条さんからもらったものが一個ある。もう一つくらい購入するか」
『それがいいと思います』
三十層に辿り着いたら、すぐにアースドラゴンに挑む事はせずに十分休息を取ってから、中ボス部屋に入るべきだ。そのためには中ボス部屋の前で野営する事になる。
三十層にはソーンサウルスを始めとする手強い魔物が居るので、防御力の高い野営設備が必要だろう。
冒険者の中には、廃棄された戦車を利用したり、鋼鉄の箱を使って野営設備を作る者も居るらしい。俺は巨大亀の甲羅を利用しようと思う。
鋼鉄よりも頑丈な甲羅である。ソーンサウルスの攻撃だったら防いでくれるだろう。俺は庭に出て、収納アームレットから巨大亀の甲羅を取り出して地面に置く。庭に小さな山が出来た。
倉庫に保管していたものだが、アースドラゴン攻略で使おうと思い収納アームレットに移していたのだ。庭の警備をしているボクデンたちが集まってきた。
これは何だという目で甲羅を見ている。俺は危険なものじゃないとボクデンたちに説明してから『Dジャッキ』の魔法を使って、甲羅の片側を持ち上げた。そして、甲羅の中に入る。
「思っていた以上に広いな」
中の空間は六畳の部屋より大きく感じる。『Dジャッキ』を戻すと甲羅が下りて中が暗くなった。頭や足が出ていた部分から光と風が入ってくるが、十分なものではない。
これを使って、本格的な野営設備を作ろうとすると時間が掛かりそうだ。今回はこのまま使う事にしよう。
「野営はこれと為五郎たちが居れば、大丈夫だろう」
巨大亀の甲羅を確認した俺は、屋敷のリビングに戻った。コムギが影から出て来てテーブルの上に飛び上がる。
『アースドラゴンに対する作戦を考えていたと言っていましたが、どういうものですか?』
「ああ、基本は『ブローアップグレイブ』や『バーストショットガン』で、アースドラゴンの足を攻撃して動けなくしてから、『ダイレクトボム』でトドメを刺すというのがいいと思っている」
『基本的にはいい作戦だと思います。ですが、アースドラゴンにはストーンブレスがあります』
「そうなんだよな。どういう風にストーンブレスを避けながら攻撃するかだ」
俺とメティスは夜遅くまで話し合った。
それから数日は明星ダンジョンの攻略方法について検討して過ごした。そして、準備が終わったと判断した俺は明星ダンジョンへ向かった。
明星ダンジョンの入り口では、何か騒ぎが起きていた。入口近くに人垣が出来ており、ガヤガヤとした声が聞こえる。
野次馬らしい冒険者に騒いでいる理由を尋ねた。
「C級冒険者チームの『群狼』が、アースドラゴンに挑んで返り討ちに遭ったらしい。一人が死んで、四人が怪我をして戻ってきたようだ」
嫌な事を聞いた。縁起が悪いから、出直そうかと本気で考えたほどだ。だが、『群狼』とは違うと考え、着替えてダンジョンに入った。
『気にしないで行きましょう』
「そうだな。十分な準備はしたんだ。それに危なくなったら、エスケープボールもある」
一層から五層は『ウィング』を使って、短時間で通り抜けた。六層はファントムが居る廃墟エリアだったので、徒歩で進み始める。飛行中にファントムと遭遇すると不意打ちを食らう恐れがあったからだ。
半透明なファントムを発見した時には、近付きすぎていて対応できないという例があり、『フライ』を使う攻撃魔法使いもアンデッドが出るエリアでは、使わないようにしているらしい。
俺は聖属性を付与してある黒意杖と生活魔法を使って、アンデッドたちを倒し六層を攻略した。七層から八層は問題なく通過し、九層に下りた時に空中戦を行った。
相手は翼竜の一種であるファッドンである。この魔物は丸みを帯びた胴体に大きな翼を付けており、優雅に空を飛ぶ。
こいつの攻撃手段は、ファイアボールである。火の球を敵に向かって飛ばすのだ。
D粒子ウィングに乗っていた俺は、飛んできたファイアボールを避けて、二重起動の『バーストショットガン』を発動した。あまりスピードがないファッドンは、避けられずに小型爆轟パイルが命中。
ファッドンが空中で粉々になり消える。残念ながら魔石は諦める事にした。
それ以降は何事もなく九層を通過した俺は、十層の中ボス部屋に到着し、ここで野営する事にした。
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