第2話八つ当たり

「りょうくん、おはよう。綾と何かあったの?」

教室に入り、挨拶をしたのは恵前亮治。彼とは仲が良く、入学式の日に声をかけてくれたことで友達になれた。ほどよい筋肉がついていて、ルックスが良い男子。

「ふゆかよ、おはよう。もう一回言って、ぼーっとしてたから」

爽やかな笑みを浮かべる恵前。

「何かあったのかなーって、綾と」

「綾とは関係ないことだよ。数学の課題、写させて。お願い、ふゆ」

手を合わせ、軽く頭をさげ頼み込む恵前。

「自分で解かないとだめでしょ。仕方ないなー、はい」

鞄からノートを取り出し、恵前の机に置く。

「ありがとう、ふゆ。好きなもんおごるから」

そう言って、私のノートを写していく。

私の席は廊下側で後ろから三番目。恵前とは離れている。

椅子に腰をおろすと、前の席の女子が八つ当たりしてきた。

「榎波、調子乗ってるよね?マジでイラつくんだけど、何笑ってんの?」

「調子なんて乗ってないし、笑ってないけど。佐々木さん達が戸惑ってるよ、いいの」

「「......」」

「何で......」

彼女が何か言いかける。

突っ掛からず、会話を再開させる波瀬久恵はぜひさえ

彼氏に振られ、八つ当たりする彼女。私は、嫌気がさしていた。

教科書類を机に仕舞い、読みかけの文庫本を開いた。


「時間だから席について、早くー」

担任が教室に入り、促している。

担任が教卓に手をついて、話している。

「今日──」

内容が入ってこない。


「──ゆ。ふゆ。どうした?」

「えっ、あれ?りょうくん、どうしたの?」

「一限目、体育だぞ。遅れるよ、早く着替えないと」

教室には私と恵前しかいない。

私は慌てて、着替え始める。

「わっ悪い。行くよ」

顔をそらし、教室を出てこうとする恵前の腕を掴む。

「一緒に行こう。りょうくん」

「それは......いいけど、見えてんだよ」

「あぁっ、これは......ちがっ」


体育の授業は遅れてしまった。



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