彼女は恋人がいるにも関わらず、告白される

闇野ゆかい

第1話冬香には恋人がいる

「ねぇ、咲人。キスしよう~」

「しようか──」

私は咲人の唇をめがけ顔を近づけていき、あと僅かというところで、兄の樹から苦情を言われる。

「どこでイチャイチャしようが勝手だけど、お前らのは微笑ましいというより癪に障るからやめてくんない」

頭をかきむしり、苛立ちを抑えれずに言う兄。

私に恋人ができないでいると、彼氏つくってイチャイチャできるといいなと言っていた割にいざ彼氏ができて、いちゃついていると腹を立て、苦情ばかり言ってくる。

理不尽な兄だけど、家事全般が得意で料理ができない私が噛みつこうものなら、食事を抜きにされ、一日腹を空かせたまま過ごさなければならなくなる。

「樹先輩の前では気を付けます」

咲人はソファから立ちあがり、兄の目の前で頭をさげる。

私は咲人の耳元で、そこまでしなくていいよと囁くが、咲人は兄の指示を待って頭をあげない。

「かしこまらない、咲人。頭をあげる。フランクでいいよ、もう」

咲人はゆっくり頭をあげる。

「遅れるよ。支度しろよ、ラブラブカップル!」

兄は玄関に向かって歩き出す。

私と咲人は兄の後を追い、輝咲ヶ丘きさきがおか高校まで歩く。

20分で到着する。


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