第9話諦めない
少女は吠える。
「やめ、なさい!」
「暴れんな! 殺されてぇのか!?」
「きゃあ!?」
頬を今までで一番強い力でぶたれても。
挫けない。
家の名誉を守るためーーー違う
貴族の義務として、誇りを守るためーーー
一番にあるのは、こんなことで諦めてはあの人が失望するだろうから。
私はもう折れないし、強くなったんだ。
女の従者と共に、賊の隠れ家で拘束されたルルーナは、絶対に希望を捨てない、と心に決める。
ぼろぼろになって逆に扇状的になった服を着た彼女に舐めるような視線を送る輩をキッと睨みつける。
「おぉ、怖。こんな状況になっても折れないなんて、貴族様は強いですねぇー」
「そそるねえ。強気な女を落とすのが一番興奮するんだよ」
薄汚い男たちは、聞きたくもない欲望を口に出している。
これも心を折る作戦の一つなのだろうか。
ルルーナはふと思うが、だからどうした、と奮起する。
「何をしようが、私は絶対に屈しませんわ!」
ルルーナの威嚇も男たちはどこ吹く風。全くビビる様子はない。
「いいねえ。その態度がいつまで続くか見ものだわ」
一人がニヤニヤしながらルルーナの胸に手を伸ばす。
「っ……!」
本当ならこんな奴ら、魔法で全員瞬殺なのに……というもどかしさと、人質を取られて何もできなかった後悔。
そして、穢らわしい
むにゅり、とルルーナの豊満な胸が形を変える。
「ひぅ……!」
下劣で、卑怯で、汚い男の手の感触に、ルルーナの脳は気持ち悪さや不快感を覚える。
「おぉ〜、こいつぁやわらけえ……! 雲みたいな感触だぜ!」
ぐにぐに、と思うがままに弄ばれる己の胸。
ルルーナには耐え難い屈辱だった。
しかし、彼女には耐えなければならない理由がある。
「私のことは好きにしてもいいわ……! でも、部下たちには一切手を出さないで!」
それは自分以外に捕まった何名かの部下の存在。
ルルーナには彼女らを守る義務があり、守りたかった。
賊がこの要求を飲むとは思わなかったが、賊は簡単に首を縦に振る。
「あぁ、いいぜ。お嬢様が楽しませてくれたら、な?」
奴らは彼女の部下たちがいれば、魔法を使って抵抗しないこと、そして素直に奉仕をしてくれるであろうこと。
そしてなによりルルーナが堕ちそうな時に、完全に堕ちた部下たちの姿を見せることで完全に心を破壊できるだろうと考えていた。
「く……分かりましたわ」
予想通り、抵抗する気配のないルルーナに男たちはほくそ笑む。
そして、彼らは人質を取るまで散々暴れ回り、抵抗してくれた鬱憤を晴らすべく、そして痛みで従順にさせるべく暴力をふるい始めた。
「さっきはよくも暴れてくれた、な!」
一人の拳が、適度に鍛えられつつも脂肪も蓄えた腹に突き刺さる。
「うぐぅ……ぅぅ」
臓器を潰されるような痛みに、くぐもった声を漏らす。
「俺の腕、お前の魔法で傷だらけだ、責任取れよっ!」
パシィ! とまた別の男が白い頬を張る。
一切容赦のない暴力に、脂汗をびっしりとかいた顔に美しいゴールドの髪が張り付いている。
苦悶に歪む彼女の瞳は揺れ、口からはビンタで切れた口内から血が溢れている。
だが、彼女の眼には光があり、心は折れていない。そのことは賊も理解していた。
同時にまだまだ楽しめそうだ、と笑う。
それからさらに暴行を受け、体中にあざができた頃。
ついに、その時が訪れた。
「じゃあ、そろそろお願いしようか」
一人の言葉に、周りにいる男たち全員がギャハハ、と笑う。
彼らにとっては待ちに待った瞬間。
そしてーーー
ルルーナの碧眼から大きな雫がこぼれ落ちた。
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