Side file.02『カンフル』
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2016年5月24日
営業終わり、先輩との談話でのこと。
「──いい出会いでもあった?虞瞳君。
最近なにか変わったように見えたものだけど」
「いい出会い…ですか?
それなら、とびっきりのがやってきたんですよ!
とってもありがたい話ですね」
「そうだったら良かった、……ホント。
…………去年の今頃、君の眼は酷く濁って、欠けたような瞳だった。
もちろん仕事してたし、君は熱心だったけど、どうもいたたまれない風貌だった」
──彬愛が荼毘に付して以降、
澱んだフィルターが僕には張り付いて、世界は殆ど同じように見えていた。
汚泥に塗れて、記憶のフィルムは見分けなんてつかない。
ぜんぶぜんぶ、同じ。
何を食べても同じ味。
どんな風景を見ても、どんなフィクションを見ても、感想は同じ。
どんな朝も、どんな夜も、僕が感じ取ったのはみんな同じ、絶望という名前の感情。
そうやって、死んでいるのと変わりがない4年間を過ごした。
「けど、今の君の眼は濁りが失せて、少しずつ透明に、輝いて見える。
よかったあ……いい出会い、あったんだね」
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