Side file.01『嘘ではなくて』
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2016年4月29日
「──その手荷物なにさ、虞瞳君」
「いや、ごはんとかいるかなって思って、ちょっと買ってきたんですよ」
「おっ、気が利く~」
「どれ、食べます?」
一応近くのコンビニエンスストアで売っていた粗方はおさえてあった。
「おでんがいい…このさっむい外で食べるおでんは格別なんですよ……!!」
「力強いですね。
…じゃあおでんをどうぞ」
「わーい!アッツアツのおでんだァ!!
いっただきまーす!」
「…いただきます」
僕は余ったおにぎりとサンドイッチあたりを食べる。
「食べたこと、あんまりないけど結構…おいしい」
「よかったじゃーん。
ん?というか何?こういうの食べたことないのかい?」
「まあ…、そうですね。
多分二桁よりは下…なのかな?」
家庭的にも、僕の性格的にも、この手のを利用した記憶はそうない。
そもそも僕の交友の関係上、自炊は多くなる。
「うぇ、すごいね。
私はいつもこんなんだよ。健常者だねえ」
「別に、人それぞれじゃないですかね?
なんでもそうですけど、その人に合っていればいいと思いますよ」
「ふーん。
じゃあ、私に合ってるのは、これなのかな──」
樫之さんはこう言いきった。
その食事をするさまは、嬉しそうに見える。
立ち振る舞いからも、一見は底からの幸福のように見えた、
目には靄が映る。膿が映る。
僕には、あの涙を流させた、心の膿が、見えていた。
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