大丈夫。


 4月27日。熱くも寒くもないほど良い晴れの日。


六年二組の教室に駆け込む正夫。


「おはようございます!」


いつものように数人が反応するだけだったが…


「おはよう…」


瞬が返事をしてくれた。


義樹よしき君と太郎君は…来てないね」


瞬が開いた座席を見ながら言った。


「昨日…あの後に何かあったの?」

「いや、強盗を追っかけたら怖い目にあっちゃって…」

「そ、そうなんだ…」


気まずい空気が漂う。


「あの、オマワリさんは____」

「いなかったよ」

「え?」


正夫は暗く笑う。


「そんなのいるわけなかったんだよ、」

「そ、そうだね」


「昨日は置いて行ってごめん…」


不意の謝罪に驚く瞬。


申し訳なさそうな顔をする正夫。


それを見て微笑む瞬。


「いいよ、そんなことより学校終わったら義樹のところに行こう…」


正夫は満面の笑みを浮かべた。


「うん!」





 糸星町いとぼしちょう清蓮せいれん高校へ続く通学路。


サリィと制服を着た戒理かいりが横並びで歩きながら会話をしていた。


「良かったな」

「えぇ、でもあの子に魔物の種を与えた者の手掛かりはなかった…」


残念そうな顔をするサリィ。

戒理かいりはハハ、と笑いながら…


「いいさ、奴が魔物を解き放つなら俺たちが退治し続けるだけだ!」


太陽を掴むように腕御高く掲げる。

それを見て微笑むサリィ。


「魔物退治は俺たちに任せろ!」


なんてな、と笑う。


「それはいいけど戒理かいり…」


真剣な面持ちになる。


ごくり、と喉を鳴らす戒理かいり


「あなた、…」


先ほどまでかっこつけていた男子の絶叫が町中に響き渡る。






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魔戒の勇士がここにいる。 烏賊墨 @M-Ikasumi

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