92話 『S』ロード


 私のなまえは『西田ひかり』です。


 捨て子だった私に誰かが、その苗字と名前をつけてくれたみたいです


 中学を出て働きました。

 学校の給食の調理の手伝いでした。

 続きませんでした。

 施設から遠いけど、大きい会社の社員食堂でも働きましたが、

 邪魔みたいだったので辞めました。

 未成年で風俗で働きました。

 結構長く続けれたけど…

 捕まりました。

 私は施設を出ました。


 そして


 流れ着いた、住み込みできるSMクラブで、

 2歳上のユキノ先輩に出会いました。


 口は悪くて、むちゃくちゃ怖いけど、

 暗くてクチベタで気の弱い、私を可愛がってくれる


 とてもやさしい大好きな先輩です。


 ユキノ先輩と、出会ってからリスカする事も無くなりました。



――――――――――――――――――――――――――――――



 天まで届くバベルの塔を昇り続ける広いリフトの中央で、


 1人あぐらで座る、ユキノの元後輩SM嬢の卑弥呼メロンレディは…

 いつも頭部を隠すマスクメロンを腰の横に置いている。

 赤のボンデージを着た、肩までの長さの金髪の後ろ姿…

「もう… 目が限界しんどい、もうカラコン外す… ここまで来たら、もう瞳を隠さなくていいよね…サタン


 緑のカラーコンタクトを外す…

 もう1つも…


 その両瞳はグルグルの『渦巻き』


「ああ~超久しぶりにコンタクト外したら、きもちいい~」


 パコっとマスクメロンを被ると、


 ドゥ――――…


 低い音が、


「上の方で、塔の下での無駄な戦いを止める&時間稼ぎ役を買って出た『S』ロードの同志トールさんがユキノ先輩と戦っている? (;'∀')」


 スマホを胸の隙間から出して、写真を押し、


「死んでから地獄で たくさん写真撮った イブともババアとも (._.)」


 ↑にスライドしていく…

 一緒に新宿のバーで酒を飲む、

 咥えタバコでグッドサインのユキノと、

 Ⅴサインの卑弥呼のツーショット写真がある、

 その卑弥呼の髪は黒くて肩までで、唇を噛んで微笑んでいる。

 そこを開き…


「ユキノ先輩… (._.)」



 この写真は、ワタシとユキノ先輩が死ぬ前の深夜、2人で飲んだ時…

 『S』ロードの始まりの12時間くらい前だったかな…




「ユキノ先輩…すごい… こんなにたくさんおさつ…」


「おう! 最近は毎日、池袋でナンバー1よ! 卑弥呼、今日は全部ごちるわ!」


「ユキノ先輩ありがとう…」


「最近、上客の常連が来てんの。  毎日8時間予約してくれてオプションもフル。   しかもね『S』uper『M』axコース…しかもソイツ、部屋に入ったらすでに『目隠し』『サルグツワ』『リード付き首輪』で四つん這いのスタンバイ状態   …どんだけ変態やねんって!!」


「ワタシなんか…1日、1人いるか…いない時もあるし…ユキノ先輩すごいです」


「まあワタシんち、リウマチの母と認知症の父がいるからね、ワタシは人一倍稼がないとね」


 昔からずっと話すのが苦手な私は… 

 人との会話に入って行くタイミングが掴めなくて…

 話相手が話が終ってから… ずれた話をしてしまう…

 だからユキノ先輩、間を作って話してくれてるけど…

 なかなか難しい…


 数日前にチーフから…

 今月でクビと伝えられている…

 ユキノ先輩は辞めたら、私に会ってくれるのかな?

 足手まといの私を…

 たぶん無理だよね…


 私は若いと言われるだけの18歳

 でも この世界

 なにも無いじゃん



 ドンドンドン!


《 卑弥呼!? 大丈夫か!? トイレなげえぞ! 》


「うん… すこし酔っぱらったかな…眠ってたみたい」


《 そう? なら途中まで一緒に帰ろうよ 》


「うん」


《 店ん中で待ってるよ 》


「うん」


 ありがとう ユキノ先輩 最後に楽しい夜を…


 便座から立ち、ドアを開ける…


 

 SMクラブの用意している、住み込みの古いアパートに辿り着く。


「もうシャワーはいいや…」


 ピコン


 ラインが鳴り、開く、


 ユキノ先輩からだ…


―――――――――――――――――――――――――――


大丈夫?

ちゃんと帰れた?


            うん!あざっす!(*'▽')

            ゴチでした!(´▽`)

 

じゃあ、

また明日な?


            先輩ありがとう(´;ω;`)

            こんなワタシに(´;ω;`)


気にすんな

だけど

ラインと実際話す感じ全然ちがうよね

卑弥呼は?



            そうかな(^_-)-☆

            顔見せなくていいからかも(^ω^)


客少ないなら

仕事でもさ

ラインみたく明るくしてみたら?

仮面被ってでも?


            やってみようかな(;^_^A

            ユキノ先輩がいうなら・・・


ほじゃ

おやすみ

がんばれ



            おやすみなさい (*'▽')



―――――――――――――――――――――――――


 『だいすき』と最期に書きたかったけど…

 先輩を苦しませるかもしれない…

 苦しまないかもしれないけど…


 前夜から用意していた自殺用に結んであるビニール紐をトイレのドアノブにかける。

 結んだ紐を首にセットして、

「ふう~~ふう~~…よし…」


 その時…


 敷布団の下から…


 スル~~っと鎖が出てきた?


 幻覚? クスリは最近やってないけど…


 黒い鎖の先は蛇…


《 西田ひかり 》


「うん… そうです…」


《 オレにその命をくれないか? 》


「なんで?」


《 ユキノと… 》


「先輩?」


《 一緒に死んでくれ、明日、SMクラブ『ヘブンズドアー』で 》


「なんで? ユキノ先輩と?」


《 ユキノは混沌カオスのお墨付きを貰い、オレの後継者候補の女 オレはまだユキノの姿しか知らなくて どんな人間かは詳しくは知らないけどね 》


「なんの後継者なんですか?」


《 オレはサタン 》


「サタン? 魔王? あなたが?」


《 ずっとこの世の悪を取り仕切ってきたけど オレはもう今の時代ついていけないんだよね 悪の神も世代交代が必要 だから次の世代のサタンを造るための試練 地獄で『S』atanロードを始める 》


「サタンロード? ユキノ先輩がサタン…? 」


《 明日、ユキノと一緒に地獄に堕ちて欲しいんだ『西田ひかり』… ある理由があって時間が無いんだ 》


「地獄…」


《 もし受け入れてくれたら… 『西田ひかり』には、頼みたい使命もある 》




 使命を聞いた…




「 いいよ ユキノ先輩が神様になれるんだよね? これからの時代の?」


《 おまえの使命の「」を越えたらおそらく… だけど『S』ロードはヤラセ無しの 気力・知力・体力・時の運 すべてが必要な命がけのガチな試練だから サタン継承を成す確率は極めて低いだろうけど 》


「ユキノ先輩なら ぜったいになれる あの人がならなきゃダメ」


《 西田ひかり… 》


「こんな私の命が… これからの私と同じような人の役に立てるのなら…」


  『よろこんで 』


 心から、そう強く思った。


《 本当にありがとう これで『S』ロード計画の同志メンバーは全て揃った 明日は頼む… 》


 私はリスカの跡を見た後に…


「私が地獄に堕ちたら… 地獄デビューできないかな?」


《 地獄デビュー? 》


「高校デビューとか分かる?」


《 地味なのが派手になる…みたいなの? 》


「うん… 髪も金色に染めてみたい、マスクメロン大好きだけど、生まれて1回しか食べた事ないから、いつでも食べれるようなのがいいな… 性格もまるでラインのような性格で…」


《 うんうん… 他には? 》


「やっぱりSM…」


《 SM 》


「ユキノ先輩とのつながりだから…」


《 分かった ユキノ同様に オレのチカラの一部『S(サタン)』パワーを与え… 『西田ひかり』の希望を叶えよう…」


「名前は、私のハンドルネームの『メロンレディ』にして… 『西田ひかり』はもういらない…」


《 分かった では…地獄で待っている 地獄では残り少ない時間を大切にしろ メロンレディよ… 》



 

     ガタン




 リフトが最上階で止まる。


 そこには同志トールさんの死体。

 ケルベロスの3体。

 四つん這いで眠って動かないM便器。


 ユキノ先輩の姿は無い…


 ケルベロスが、焦って!


セント 「メロンレディ!?☆」

ショウ 「くそ!! やばい!! 俺達だけでメロンなんて無理ゲ―!」

リュウト「ユキノ様は1人で頂上決戦に行った! メロンも行け!! 俺達を無視して最後の戦いへ!! ユキノ様と決着つけろ!!」


 ワタシはチャッカマンで金色の巨大ロウソクに火を付けた後に、

 階段へ走り!


「さあ~イブを助けて ユキノ先輩との決着にいっくよ~~ (´▽`)」


 階段を駆け上がる!

 

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