91話 ロンギヌスの槍


 広き石畳のバベルの塔の頂上…


 一番乗りはイブ、


【エデン…】


 剃髪の頭の上の、魔王アスタロトの黒いレディースハットのツバを、上にずらし見上げる。真上にあるは、地獄の赤い空にうねるブラックホール。

 その周りはウジャウジャと飛竜ワイバーンが沸いている。


【ゆけ! ワタシにまとわりつく蛇!!】


 黒き鎖のドレスの鎖蛇サタンを放つ!!


 グ―――――――――――――――――――――


 蛇の口にはカギの先が向けられている!!


 ブラックホールに突入すると、黒から青にス―――… うねりも消えた…

 それを見たイブ…


【 ただいまエデン アダムと人間ワタシのふるさと 】


 その時…

 エデンの横に、食虫植物の様な巨大な時空の隙間が少しずつ開きだす…


 グググググゥゥゥゥ


【 やはりきたか創造主… 実体で… 】


 見えた巨大な青い瞳の片目から。


<🔵> { イブ 目を覚ませ 


 その時、

 

 ヒュ―――――――ン


 下から、黄金の鎧・アームメットヘルムのトールが▲(三角)羽で飛んできた…


【 くっこのタイミングで… 天界最強のトールか… 】


 しかし、トールは角度を下げて、下の階の周りを凄い速さで旋回し始める。

 鎖蛇サタンの頭がエデンから戻って来て、


《 心配するなイブ トールとオレはだから 》


 グシャ!! 


 下の階の石壁をトールが突き破る音がした。


《 下は閻魔女王とトールでバトルを始めるようだ さてと… 》


 鎖蛇サタン… 『渦巻き』の瞳で『創造主』を見て、笑む。


《 20xx年 ついに おまえの時代が終わる 》


<⭕️> { おのれぇぇ禁断を破った裏切者がぁぁ!!!


 食虫植物の隙間の眼力が直視できないレベルに!


 無数いた全てのワイバーンたち!

 ヒュヒュヒュヒュヒュっと堕ちていく!


 イブは全くの無事だが鎖蛇は苦しむ!!


《 ぐぎゅぅぅ!! 心が潰れるぅ動けないぃ クソがぁぁ『気合チート』だぁあ!! 》


<⭕️> { イブ!! そのヘビの元の姿は天使ルシファー(サタン)!! そしてアダムはすでに死んでいる!!


【 なに? 】


 鎖蛇はイブを見つめ、

《 イブ!! 『創造主』へ放て!! その右手の宿命の槍『』を!! 》

 

<⭕️> { イブ!! ルシファーを殺せ!! その槍で!!


【 ロンギヌスの槍の残数は2… 】


 イブは鎖蛇の頭へ『ロンギヌスの槍』を振りかぶり…


【 もち蛇いくっしょ!! 】


 顔面蒼白の鎖蛇サタン

《 ちょいちょぅぉいちょいちょ~ 》


 創造主は青い瞳を垂らした直後…


【 ……ふん!!! 】


 ブ――――――――――――――――――――――ン



<🔴> { なぜ? イブ?


 瞳の中心からやや右側に槍は刺さっている。


【 クソボロだけど、ロンギヌスの槍はもう1回だけ放てる なぜ?だと…創造主おまえが死ぬ前に答えよう よく聞け 創造主に蛇のバカ2体 】


 イブは槍に宿った魔力で、

 ス―――――――っと投げた後に戻ってくる『ロンギヌスの槍』を右手に戻す。

 創造主の瞳は徐々にパズルの様に崩れ始める…


 鎖蛇は、イブを見て…


《 そうかい 『ロンギヌスの槍』… 最後の1撃で…オレを殺すんだね?》


 顎を少し上げて、強く目を瞑り… 


《 いいよ… イブに殺されるなら… 》


 瞑った目の隙間から一粒の輝くナミダが…


【 アホか? おまえ 】


《 え? 》


 左手の青いティファニーのバッグを鎖蛇に突き出し…

 プルプルと震わせ、コメカミには血管が浮き出ていた。

【 ふざけんなよぉ このクソザコヘビィィ… おまえぇぇルシファーだったのかががぁぁ… 創造主はぁぁ嘘を言えないんだよぉぉ!!】


《 うっ 》


【 このバッグの中のドブネズミを…アダムだと~? 創造主に魔法かけられたぁぁ? エデンの扉を開けたら、残ったを守るために創造主が出て来るから、殺したらアダムの魔法が解ける~? 】


《 あわわわ… 》


 イブは今までずっと大事に持っていた、青いティファニーのバッグを投げ捨て、

【 言え… 鎖蛇 おまえがアダムを殺したのか? アダムのスキル『王様ゲーム』は おまえがアダムを殺して強奪してたのか? …おまえベリアル同様に『サーチマニア改ざん』を持っていたな…?】


《 うっ… 》


 目を瞑った鎖蛇は沈黙を続けるが、ついに…


《 ああ そうだ オレが アダムを殺した 》


 『渦巻き』の瞳が笑む。


《 ころせよ イブ アダムを殺したオレが憎いだろう? ころせ 》


【 ヘビ おまえは殺さない 】


《 なに? 》


 イブは己の首に『ロンギヌスの槍』をつける。


《 待て!! イブ!! やめてくれ!! 》


<〇> { や…め…ろ…イブ


【 ワタシは『不死』と『自然治癒(強)』と『創造主の加護』を与えられてるけど… 『ロンギヌスの槍』なら死ねる…ワタシが死ねば‥‥ワタシのエキストラチート『伝播』で… 現生も地獄も天国もヒトは全て死ぬ… 】


<○> { …イ…ブ…ほん…き…か


【 あんたが創ったワタシ(ヒト)をぶっ壊してやる… 創造主のあんたを、先に殺したのは逃げられたら永久に殺せないから… 】


《 やめてって!! イブやめろって!! 》


【 クソヘビ お前の大好きなヒトが誰一人居ない世界で永久に生きろ 】


 イブはロンギヌスの槍を首からすこし間合いを作り、


【 もうアダムの無い世界に 生きてる理由は無い! 】


 その時!!


 ガシャ――――――――――――!!!


 岩に砕ける高波の様な、石床を砕き散らす衝撃に! イブは吹き飛ばされる!!


【 黒いムチ!? 閻魔女王の!? 】


《 あのトールがムチに巻かれている!? 》


 吹き飛んだ『ロンギヌスの槍』は… 見えなくなる。


 イブは憤る!!


【 閻魔女王のクソがぁあ!! 】



 その時…



 パタパタパタっと…

 白い天使の翼で、やっと頂上まで上がってきた、黒の胸当てを装着した金髪ベリーショートヘアで小柄なワルキューレが到達…


 その左手には…

『ロンギヌスの槍』


 『イブ』『鎖蛇サタン』『崩れゆく創造主』の一同、


 ワルキューレに一点集中…

 それを見たワルキューレ、


「最高のモンを手に入れたわ…『フェンリル』の不意打ちで奪われたオーディン様のロンギヌスの槍を…」


 右手で、腰の魔法剣 F(ファック)を抜き、


「創造主が崩れていってる? 鎖蛇サタンはクソユキノじゃなくて…ワタシが『ロンギヌスの槍』で殺し… イブは永久に魔法剣の『F』antasy(幻想世界)に封印させてもらう… オーデイン様とワタシは対イブ専用で選ばれた2人だからね…」


 もはや崩れ過ぎて 言葉を発せなくなった創造主…

 心で、


    まさに招かざる客 ワルキューレ…


    ワルキューレ お前の言った、それは幻想だ 

    だれにも伝えてない事がある…


    『ロンギヌスの槍』はヒトでしか放てない

    それにイブとサタンと比べ、圧倒的に弱いお前が死ねば

    最後の仏体Ⅹシリーズ type C ジズが発生してしまう

    そうなれば最後の希望…

    閻魔女王は死んでしまう


    ん? 


    もう1人… ヒトが近づいてきている…

 

    メロン?


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