85話 vs 仏体Ⅹシリーズ typeB ベヒーモス(3)


 ワタシのムチで亀甲縛り宙吊りの青鬼ショウを見下ろし、

「ショウ… この部屋の窓を割って突入するよ… 覚悟を決めろ」


 ショウはワタシを見上げ、

「うん…」


「突入した後は、視力5と嗅覚探知があるショウが、鳥のクソのついた本体のアリを始末しろ…」


「そんな! ユキノ様! 俺だけ窓から部屋の中に放つ気!? 殺人アリの中へ!」


「ショウ… 部屋の中の白いクソつきアリは仏体ほとけたいⅩシリーズの『無限増殖ベヒーモス』…」


「この凄い勢いで拡がり続ける黒い蟻は仏体Ⅹシリーズ!? なんだよそれぇ…オレタチ『ケルベロス』とあまりに格が違い過ぎるじゃん…」


「そんなことは無い、ワタシはすでに仏体Ⅹシリーズのリバイアサンを殺してるし」


「マジ? いつ?」


「説明は後な? ここでボスアリを殺さないとな… 敵の大将のイブも死ぬだろうけど、このバベルの塔内の洗脳された敵兵も、大都市カーリーも、ティアマトの町もみんな死に滅ぶ…」


「うん…」


 ワタシは下のショウの頭を、ニーハイブーツの底でポンっと叩き、


「男になれ、ショウ、おまえも一応、地獄の番犬なんだろ?」


「うん…でも…オレに…できるかな… ベヒーモスを殺すなんて…」


「大丈夫だよ、ショウ」


「え?」


「おまえ1人じゃねえって、そんなことするか? 閻魔女王を舐めんじゃねえよ」


「うん」


 ワタシはカカトを振り上げて~


「いくぞ! ショウ!」


 ブン!


 中年奴隷へ玉蹴りを!!

 

 ガチン!!


「ぼう!! (≧◇≦)」


 バリ――ン!


 4Fの部屋の中に突入! すぐ中年奴隷の首輪のリードを強く引っ張りブレーキをかけると!


 すでに無数の蟻がワタシにまとわりついている!


 いってぇぇ 痛い!!! むちゃくちゃ痛い!!


「みつけだせ!! ショウーー!!」


 ムチはショウを縛って浮かしているから使えない!!

 体につきまくった蟻を左手で払う!

 下のショウは!


「ユキノ様!? 大丈夫!!」


 ワタシは予想通り、蟻で真っ黒な部屋の中を見て、

「んなことより! ニオイ嗅げ!! 鳥のクソついた5ミリの白アリ探せ!!」


「クンクン…集中集中…クンクン…痛い!! 動けない!!」


「我慢しろ!! 集中しろ!!」


「クンクン!! いる!! この下!! 真下!!」


「マジか!?」


「白いの見つけた!! オレの真下にいる!!」


 蟻にあちこち噛まれながら下を凝視するが…


「どこよ!? どこ!?」


「下だって! いててぇぇ!!」


 覚悟決めて、


「ショウ! ムチを解くよ!! コロセ!! ベヒーモスを!!」


 解く…


 ボトンと落ちたショウ!


 すぐに!! コブシを床にドン!!


「うわ!! ムチャ堅い!? 紛れ逃げられた!!」


 すぐに、ショウの体に蟻が登り出す!!

「ぎゃあああ!! 死ぬ!! マジ死ぬ!!」

 ワタシは、中年奴隷から降りて、

 ムチを振り!!

 ショウの背中の蟻をふり払い!!

「探せ!! コロセ!! 白アリ殺せ!!」

 ワタシの言葉に四つん這いになり下を向いていたが!

 ショウは顔を両手で掴み!!

「鼻に入った!! やばい!!」


 くっ…


 当然の如く、ワタシにまで蟻が登ってくる!!



 はっきり言って… 勝負時…



 逃げたら負け…


 ワタシは四つんばいになり…

 下を向き、

 ショウが床ドンした辺りを目を凝らす…


「どこどこどこどこだ? どこだ~! 痛い! いてええ!!」


 ポトン

 

 みずが落ちた?

 ちがう… 水にしては白いし粘り気がある…

 浮いてる中年奴隷のサルグツワの隙間からヨダレ落ちた?


 あ?


 白い蟻… あれか? ワタシが見てたところより50㎝? ヨダレ落ちた所…

 けっこう離れていやがった…

 しかも… アレ… 交尾してんのか?

 王様アリさんよおぉぉぉぉ… ふざけんなぁぁぁ

 

 スタササっと四つん這い歩きして、

 白いクソのついた蟻をつまむ…

 全身を無数の蟻どもに噛まれているワタシは…


「お前がぁぁ… ベヒーモスかぁぁ…?」


 もう、蟻に包まれて全身が黒くうごめくショウから、


《 はやく… ころ…して… よ 》


 ワタシは胸の隙間から、ライターを取り出して…


 カチャ…


 つまんでいる堅いベヒーモスを炙る。


 そりゃ指は熱いよ…


 だけど…


 耐えられる… みんなの命が懸かってんだからな…


 ベヒーモスの足はすぐに燃え消えた…


 しかし、まだ首は動いてやがる…


「はよ死ね… クソ蟻…」


 すぐに…


 ワタシについていた蟻が落ち始めた…


 ショウもザ~っと蟻が落ちて姿が確認できるようになる…


 全ての蟻は機能停止した…


 だけど… 噛まれまくって、ダメージ半端ないわ…



 ワタシはバタンと蟻の死骸のじゅうたんに尻もちをついて…

 ショウを見つめる…


 フフ


 ショウも壁にもたれて座ってワタシをボ~っと見つめている…

 ショウのイケメン顔… ボロボロじゃん…


 でも… よく頑張ったよ…

 あんたがいなきゃ…


 こんな強敵… 倒せるはずが無かった…

 それと、

 なんといっても鳥のクソが無ければ100パー無理だったでしょうね…


 ワタシは大きく息を吐いた後に、


「ベヒーモスやったな… ワタシとショウの2人で…」


 ショウに、右手でグッドサインを送ると、


「やったよ… ユキノ様と2人でベヒーモスを…しゃあ!!」


 グッドサインを強く返してきてくれた。


 ワタシは浮いている四つん這いの中年奴隷を思い出し、


「あ? おまえもだ、3人だったわ」


「ぼう♪ (^ω^)」


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