77話 「雪子」と「おいも」のトヨタ ベルファイア



 地獄のレディ―スチーム『白装束』の副総長…

 頭に白い三角布、白装束を着た幽霊「おいも」は、


 昔、この旅館でバイトしていた事もあり、

 スタササっと髪をなびかせ、

 すぐに『月見』の間のフスマの前に来た。


「この中に黒女ユキノがいる…せ~の」


 スタン!!


 フスマを開け!


「こら!! ユキノおら! 表でろや!!」


 中には…

 閻魔女王ユキノの姿は無く、

 三体鬼ケルベロスが、


セント 「誰?☆」

ショウ 「どうしたの?」

リュウト 「ユキノ様いない」


 都会風のイケメン3体を見たオイモは…


「あっ… ユキノが、どこにいるか分かりますか?」


「なんの用☆」


「ワタシの友達(総長雪子)が、ユキノに話があるみたいで…」


 セントは立ち上がり、

「呼んでくる☆」

 部屋の入り口のオイモとすれ違う…

 通り過ぎた後に、オイモはセントの背の高い後ろ姿を見て…


「あのひと… ヤッバ…」


 部屋の入り口で、腕を組み制止して待つオイモ。

 その姿にショウが、


「なにかジュース飲む?」


 オイモは腕を組んだままペコペコと頭を下げて、

「いえ、大丈夫す。 ありがとうございます」






 ワタシは、オイモの前で足を止め、


「たしか… 名前オイモだっけ…?」


 オイモは、少し背の高いワタシに顔を近づけ目を上げ、小声で、


「着替えたら話があるから出てこいや… 1人でな。 総長が外で待ってるからな? おまえケンカ上等って言ったろ?」


「少し待ってろ」


 セントと入ってフスマを閉める…


 化粧をすませ…

 黒のムチを右手に持ち、黒のボンデージを着て1人で部屋を出て、オイモに、


「いくか」


「ユキノ… おまえ死にたくなかったら謝っとけ…」


「あ?」


「部屋の中の男の誰かワタシに紹介してくれたら…ワタシから総長に持ち掛けてやるし…総長に土下座して謝って、白装束着てチーム『白装束』に入っとけよ…」


 チームに入って白装束を着ろ?


 ワタシは「フっ」と鼻で笑った後にオイモを見て、


「おまえ、なんにも分かってないね?」


「あ?」


「おまえのとこの総長なんてメじゃないし」


 オイモはこっちを睨み、


「やっぱ、おまえ…舐めてるし…ついて来い」


 ついていく…


 こんな田舎町のレディ―スの総長に負けてるようでは、

 イブのドレスの黒い鎖蛇を、ぶっ殺せない…



 旅館を出ると…

 4人の白装束がいるけど、


 だいたい不良オーラで、一目で分かった…

 アレが総長か…


 アイコス吸ってる青い髪の白装束の女…

 目は赤のカラコン?


 総長は近づいて来て、ワタシに顔をすぐそこまで近づけ、


「おまえがユキノ?」


「おまえが白装束の総長の雪女の雪子?」


「舐めてるらしいね? ついてこい」


「ここでいいじゃん?」


「ついてこいって」


 その時、

 旅館の女将さんのヌエが電球を買って帰って来て、


「あら、雪子ちゃんにオイモちゃんじゃない?」


 呼ばれた2人は、女将さんにペコっと頭を下げて、

「どうも」


「またいつでもバイトしにきてね♪」


 2人はまたペコっと頭を下げて、

「はい」


 こいつら…

 中途半端なヤンキーレディ―ス…?


 ワタシはレディ―スチームの5台のスクーターも見てしまい…


 たまらず…


「プッ」


 笑ったら、

 雪子、

「笑いやがった? ワタシを? ワタシのチーム『白装束』を?」


「ごっごめん…プ」


 はじめて怒った顔になった雪子は、

「ついてこいって!」


「おこってる…? ププ」


 直後、雪子が、


「このブス!」


 けっこう遅いパンチが来たから、スッと避けたら、

 つまづいて、

「いたっ」


 膝を擦りむいた~? うける~


「いってて~… 痛い…血?」


 よっわっ…

 遠くで見てた白装束の子分3人が、


「総長…?」

「まじっすか?」

「アレが…憧れだった雪子? さっきのアイコス1カートン返して欲しい…あんなのが極寒地獄仕切ってる? どんな地獄やねん…」


 覚めつつあった…


 ん? 

 オイモ消えた? 逃げた?


 ワタシはなんか…

 この10秒くらいで、全てを失いそうな雪子が可哀そうだったから…

 左手で、雪子の肩を触り、


「いじめてゴメンね… もう、あんたの勝ちでいいから…」


 その時、右手に持っていたムチの一部が雪子の白装束に触れた?

 全自動のサーチマニアが作動する… 知る価値もないでしょうけど…

 ワタシの脳に情報が…

《《《《

『S』earch

『M』ania

極寒地獄の支配者 錬金術師のニュクス 


封印のカラコン装着時

LV 2

HP 5

攻撃 4

防御 2

速さ 3

魔力 2

スキル

『武器チェーン攻撃(弱)』『吹雪(微)』

ドロップアイテム

【アイコス】


通常時

LV 800

HP 5500

攻撃 6000

防御 3000

速さ 2000

魔力 9000

スキル

『念力 (チート)』

『ブリザードブレス』

『冷耐性(超)』

『武器チェーン(超)』

『自然治癒(中)』


ドロップアイテム

【寄生虫ウロボロス(飲むとスキル自然治癒(中)】


ニュクスの個人情報

台風地獄の遥か下の次元にある異世界タルタロスで『根絶やしコウモリ』に殺害されて地獄に落ちた『S』uper『M』ax級のブリザード錬金術師。


凶悪な性格で極寒地獄では、数えきれない悪魔や鬼や人間を殺戮する。

しかし、ある日、極寒地獄で生き倒れしていた幽霊オイモを自身の生まれてずっとの孤独感からか? 助けてから、本来の名「ニュクス」ではなく、封印のカラコンつけて『雪女の雪子』を名乗る。 オイモとの友情から人間らしさが芽生え、オイモとのティアマトの町の旅館での温かみあるバイト生活、オイモに紹介され生まれて初めて付き合っていた優しいヤンキー彼氏、オイモと共に行き場のない幽霊女を集いレディ―スチーム『白装束』を発足。その週1の集会でチカラを封じるコンタクトを装着して、ティアマトの町に雪子として来る事が今はいきがいである。

》》》》


 コイツ!! まじっすか!?


 じつは無茶苦茶つよいのを知ったワタシは、

 距離を取ると、

 雪子はゆっくりと起き上がり…


「くっそ… 舐めやがって…」


 コッチを見てくる…

 あの赤いカラコンを外せば… 

 台風地獄のフェンリルほどじゃないだろうけど…

 修羅地獄のあのベリアル並みで、

 餓鬼地獄のベルゼブブより強くなるのかよ…?


 雪子は、子分の次に… 旅館を見た後に…

 悔しそうにうつむきながら…


「ワタシの負けよ…」


 遠くの白装束の子分たちは、


「雪子? フィニッシュまじ?」

「よわ… ありえんすぎる」

「1発も、もらってないのに? どんだけヘタレやねん… アイコス没収だわ」


 なるほどね…

 ここで雪子ニュクスが本気出して戦ったら、

 ティアマトの町の建物も、逃げたオイモ以外の子分にも被害がでるもんね。


 まあ… 雪子の「ついてこい」で、ついて行かなくて良かったわ…


 コイツ… 雪女を名乗ってるくせに…


 なかなか熱いやん…



 ワタシは雪子の耳に、顔を近づけ、小声で、


「ニュクス? この町を壊したくなかったんだよな?」


「え…?」


「今ワタシにはやる事があるけど…それが終わったら…タイマン受けてやるよ、ニュクスの指定の場所でな」


「約束だからな… ぜったいに負けないから」


 その時!


 向こうの道路に!


 日野の大型ダンプ『プロフィア』が凄い速さで通り過ぎる!!


「モリガンに抜かれた!?」


 雪子は、

「モリガン? 鉄壁の?」

 呟く。


 さらに!

 大型バス2台も通り過ぎていく!!


「イブにも抜かれた!?」


 雪子は、

「イブって… あのイブ? 最強?」

 戸惑っているけど、


「話はあと!!」


 ワタシは黒のSMX(クルマ)に乗り、

 あらかじめ出発の合図のクラクションを鳴らすと…

 隣のパジェロの後部座席で寝ていたワルキューレは運転席に乗り…

 先に行く。

 少しして三体鬼ケルベロスも来て車に乗る。

 駐車場から出て、奴らを追う!!




🚛= 🚌🚌=    🚙=🚙=




 30分後…


 ティアマトの茶屋の中で、生クリームあんみつを食べる雪子とオイモ。


 雪子は一口たべた後に…


「はあ…オイリン… ごち…おいしい…よ」


「ユッキー… 落ち込むな」


「ワタシのせいでチーム白装束が解散とはね…」


「でも… よく我慢したよ」


 その時、店の背中の曲がったオバアサンが、


「雪子ちゃん元気ないね~」


 オイモはオバアサンを見て、


「ティっ…オバちゃん…雪子が元気出る方法を思いつかない?」


「そうだねぇぇ… フフ…閻魔女王を追ってみたら?」


 雪子とオイモは、

「え?」


「閻魔女王が死ねば、汚名返上のタイマンが出来ないじゃないか? あのイブを追う閻魔女王を助けてみたら?」


 雪子はオバアサンを見つめ…

「うん、そうしたい」


 ケルベロスがBL(ホモ)と知らないオイモは、

 テーブルの下でガッツポーズをしながら、小声で…

「てことは… またイケメン3人(ケルベロス)に会える? 助けたら彼氏に? 特に赤(セント)」


 雪子は困った顔で、


「ワタシのワゴンRは調子悪いし… 追うには車とガソリンのストックが…食料も」


 オイモも困った顔で、


「ワタシとユッキー… お金あんま無いしね…車はノッぺー(のぺらぼう)のベルファイアを借りたらいいけど… 特にガソリン代がかかるなあ…やっぱり無理かぁ」


 オバアサンは、


「ちょっと待って」


 奥に行き、再び戻って来て、


「これ貸してあげる」


 1万札を4枚、雪子の前に出した、驚いた雪子とオイモは、


「おばちゃん! こんなに!?」


「いってらっしゃい、チーム白装束」


 

 30分後…



 町を出る、1台の黒のベルファイア。


 車の後ろにはガソリンの入ったポリタンクと食料がたくさんある。

 武器の雪子のチェーンと、オイモの警棒もある。


 助手席でアイコスを吸う雪子は、運転するオイモに、

「2時間ずつで交代な?」


「おけ、しかしヤツラと一時間近くも遅れを取ったわ」


 雪子はスマホの充電コードをソケットに刺しながら、

「大丈夫、極寒地獄の近道しってる」


 オイモは前を向いたまま、


「ユッキー…」


「なに?」


「ずっとトモダチな?」


「もちろん」


 雪子はアイコスを新しいのに刺し込んだ後に、赤い瞳をオイモに向けて


「吸う?」


「あざっす」



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