76話 鎖蛇の正体


 ここは?


 3畳の和室… 布団にテーブルだけの部屋…

 ワタシが両親と住んでいたアパートのワタシの部屋…? ユメ?


 疲労のあまり、旅館のお風呂で眠ってしまったのね…


 悪夢ナイトメアは必ず障害者用トイレからスタートだったけど…

 今回、黒い鎖蛇のワタシへの呪いドッペルゲンガーは手法を変えて来たか…


 いつもは眠る時には横に三体鬼ケルベロスが居て、うなされたら起こしてくれたけど…


 今回はそうはいかない…



 ワタシは机の上の小さな鏡をのぞく…

 中学生くらいのワタシ。

 服は上下赤のジャージ。

 隣のリビングから母の声が、


「ユキノ~ごはんよ~」


 ワタシは、ため息をついて…

「ナイトメアが始まるんだろ~ だいぶ慣れたけど…」


 てか、すでに、

 窓の外のベランダに、黒いビニール袋を被った上下迷彩服のドッペルゲンガーがいるし…


 ワタシは窓越しに、なぜか入ってこないドッペルゲンガーに話しかける。

「聞こえるか? ドッペル?」


「聞こえるわよ… ワタシ」


「ありがとうね… あんた呪いなんかじゃないわ」


「どした?」


「悪夢でも、まだ現世アッチにいる家族に会わせてくれるから…」


 部屋を出て、リビングに行く…

 週1のチクワが具のカレーが入った鍋がテーブルの上に置かれている。

 その向こうで…

 とうさんは、大好きだった『24』のドラマを見ている。



 ワタシはつぶやく、


「中学生の時のワタシと、とうさんの好きだった『24』のドラマ…」

 


 そうよ



 もっと早く気づいて、病院に連れて行ってれば…

 あんなに病気が酷くならなかったに…

 いえ、ワタシは気づいていた…

 24を見るペースが異様に早くなってたこと…

 とうさんが2話入りを、最初の一話だけ見て、次のDVDを見ていた事に…


 無関心? いえ違う…


 とうさんが大好きだったから…


 まさか自分のとうさんが、という思いが強すぎたから…


 現実を… まだ若い父の認知症の兆候が、急に現れ…


 理解しようしなかった。


 戦おうとしなかった。



 そういうのはたぶん



 ワタシだけの事じゃない


 人間は心の生き物。


 その心は、イブが食べた、エデンのによって創られた


 しかし認知症なんてモノ


 あれは 本来あったモノじゃないはず




 《 еゞfえyΛdΘ 閻魔女王ユキノ 最後の禁断の果実を喰え 》



 だれ?



 家族はフッと消えて…


 テレビから… リバイアサンの時、渋谷の上空で見た、

 黄色い瞳が画面いっぱいに映る。


「創造主?」


<🟡> 《 今回の眠りはオレが支配している ドッペルゲンガーは手出しできない 


「たすかるわ」


<🟡>《 地獄での お前を見てきた 


「そう」


<🟡> 《 イブより先に エデンの園の最後の禁断の果実を食べろ 最後の禁断は お前が解け


「なぜ? イブに食べられ、全てのヒトにその感情が伝播することを拒むの?」


<🟡> 《 すでにヒトのココロは文明の発達と同じくオーバーフェンスしている 

    《 イブが食べれば ヒトに認知症は激増する 若年性も 


 ワタシは気になったことを問う


「イブのドレスの黒い鎖蛇は… それを知っているの?」


<🟡> 《 もちろん 


「やはり…鎖蛇アレはクソね…」


<🟡> 《 アレの正体は


「蛇の正体は分かっている」


<🟡> 《 オレが最初に造った


「黒い鎖蛇はサタンでしょ」


<🟡> 《 それは今の姿と名 元の名はルシファー 


「あの黒い鎖蛇の姿は偽り?」


<🟡> 《 元の姿は 美しい天使 だが罰として 永遠にヘビから元の姿に戻る事は無いが 



 ワタシは創造主の黄色い瞳を見つめ…


「創造主」


 <🟡> 《 なんだ 


「アイツはワタシがぶっ殺す」

 黄色い瞳は… 


<🟡> 《 ・・・・・ 

    《 ならば閻魔女王ユキノ 

    《 おまえがサタンを殺し 



 急にテレビが…

 笑ってイイトモのオープニングが流れ出す。


 なつかしい…


 え? てことは…


 悪夢じゃないって事は…


 ゆっくり眠れる?



 ワタシは母の懐かしいカレーに見向きもせずに、自分の部屋に入り、懐かしい布団を広げ、


 バタンキュー


 ふう~♪


 窓の外でドッペルゲンガーが両手をつけて見てるけど、


「うわわ~ ちゃんと眠れる~ 創造主って無茶苦茶いいヒトじゃん…zzz」

 

  

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