64話 ゴーストタウン


 3時間後…


 ワタシはSMX(クルマ)の運転席に乗り、クラクションを鳴らす。

 う~んって感じでトンネルの道路で寝てたワルキューレは目覚める。

 さらにクラクションを鳴らすと、目を凝らしてコッチを見ながら、手の平を出して、「わかったわかった」のサインをした。

 ワタシは先行して走る、後ろをワルキューレの白いパジェロがライトを点けて、ついてくる。





 17時間後…





 暴風雨の向こうに、

 ついに街が見えた…

 台風地獄5000キロの中間地点ゴーストタウンが…

 

 ゴーストタウンに入り、運転していたワタシは!

「よっしゃ! 一番乗り!」

 右手で小さくガッツポーズ!

 周りを見渡して、

「 …か? だよね?」

 直後!

 後ろから! クラクションが鳴る!


 後ろのワルキューレの乗るパジェロが急に飛ばし! ワタシの車を抜き去る!


 なに!? 後ろでなにがあった!?


 バックミラーを注視する!


 トラック…? みるみる近づいてくる…!


 ちっ 飛ばすしかない! フルスロットル!


 しかし!!


 トラックは! ますます近づき!!


 ドン!! 後部に強く接触!!


 ハンドルを取られる!!

 標識に当たる!?


「ぐぐぐぐっ!! なんとか耐えれたぁぁ…」


 バックミラーに映るのは、トラックを運転しているサングラスハゲと、助手席の黒い兜で顏の分からない誰か!

 ワタシは赤鬼セントに!

「アレ誰だ!? 見えるか!?」


「アレはダークアーマー!☆ 間違いなく鉄壁のモリガン☆ 運転しているのは… ランボーと呼ばれる海坊主!☆」


「モリガンて修羅地獄四天王だよね!? なんでワタシを追ってくるのよ!?」


「うわさじゃイブの子供らしい☆ イブに命じられたのかも☆」


 また加速して来た!


 バカの一つ覚えかよ!


「セント! ベルト閉めてるか!!」


 ハンドルを切る!! ブレーキを踏む!!


 ギュ――――――――――ン


 ドリフトタ――――ン!!


 水しぶきが!! 高く舞い上がる!!

 後ろの青鬼ショウと白鬼リュウトは左の壁で重なり合う!


 よっしゃ! トラックは通り過ぎた!


 ココは先に行かせてやる…

 だけどやっぱり…

 トラックのブレーキランプが見える…


 とりあえず行方をくらまそう…

 メインロードからゴーストタウンの路地に入る…


 走ると、住宅街…

 

 開いたガレージが見えた… 前で車を停める…


 シャッター閉まりそうね… 牽引する荷車も入りそう…


 バックで入れる。


「セント、瞬でシャッター閉めてこい」


「了解☆」


 ガラララ~~~ 閉まる。


 運転席の窓を開ける…


《 ブ―――――……  》


 トラックが通った音…


「とりあえずまけたわ… ふう…」


 車を出る…


「一階がガレージで二階三階が住居の無人の家か…」


 セブンスターに火を付けて、


「ここで少し休むか…」


 SMXの後ろから、目隠しサルグツワ、四つん這いの中年奴隷を出して、

「ぼい (^ω^)」

 首輪のリードを引っ張る。


「さあ散歩するよ」


「ぼ (^ω^)」


 階段を上がる…うわ…やっぱり…窓が割れて強風雨が…


「あらら、これはガレージに居た方がマシね…」


 直後!!


 下から!!


 ガシャ――――ン!!


 シャッターを強く叩く音!


 急いで階段を下りると、こっち側に大きく凸(とつ)んだシャッター…

 向こうから声が聞こえる…


《 ガソリンノニオイ イルンダロ? ケルベロス… リターンマッチ 》


 もう一度! ガシャ―――ン来て!


《 デテコイヤ!! 》

 

セント 「この声…? フェンリル…☆」

ショウ 「うわあ… デビルマウンテンに封印された事をまだ根に持ってるのかよ」

リュウト「右足をセントに喰われたのも絶対に恨んでる…どうしよう殺されちゃう」


 ワタシはタバコをポイ捨てした後に、

 赤鬼セント青鬼ショウ白鬼リュウトの3体の肩を順にポンと叩き、


「どうやら、あなた達に用みたいね? ここはおとこ同士タイマンはってきなさい」


 三体鬼ケルベロスは声を揃えて、


「ユキノ様! 助けて!」


 しかたない…

 ワタシは中年奴隷の首輪のリードを掴みながら、

『S』pear…

『M』ax…

S難度 ★★★★★ ★★★

 ムチを大きなスピアにし、

 振りかぶる…


 直後!! 三度目のガシャ―――ンの 一瞬!!


「うおおぉぉぉ!!」


 ブ――――――ン!!


 さらに尖った凸に! 投げて! ブッサス!!



 《 キャン!! 》



全自動のサーチマニアが作動する。 ワタシの脳に情報が…

《《《《

『S』earch

『M』ania

魔獣フェンリル

LV 450

HP 2500

攻撃 3000

防御 400

速さ 3800

魔力 0

スキル

『嗅覚探知』『視力5』『死闘』『迷彩』

『グングニルの尻尾槍』


フェンリルの個人情報

デビルマウンテンに封じられていた突出したスピードを持つ魔獣

封じ込めるのに天界の凄腕18名とケルベロスが駆り出された

大きいワンボックスカー程の体

大きな鋭利な牙に強靭な顎の力、固く鋭い爪を持つ

悪食で何でも食べる

昔、敗れたケルベロスに深い執着心を抱いている

》》》》


 すぐにムチを元に戻して、ビュンっと振って血を払い、


「フェンリル、一丁あがり」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その頃、

 閻魔女王の車を探すモリガンは、

「閻魔女王はどこなの…? 視界も音も強風雨が邪魔をする…」

 運転する海坊主は、

「街の出口で待ち伏せしましょう」


「かあさん(イブ)がこの街に来るまで、先に行かせないようにね? 出口に行って道路からトラックを横にして止めなさい」


「サー!」


 日野の大型ダンプ『プロフィア』はゴーストタウンの出口で横に停めてアイドリング。

 全身ダークアーマーのモリガンは助手席から出て、荷台の乗り上がり…

 M134バルカン機関銃を包み隠していたシートを剥がし… レバーを握り、

 照準をゴーストタウンのメインロードに向け…


「閻魔女王…ワタシのM134で…ハチの巣にしてあげるわ…」




  ~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ワルキューレはゴーストタウンを出て、

 地獄の赤い空が見える台風の目に到達していた。


 メインロードの右側に、こうなった場合のあらかじめ作戦を立てていた。目印の大きな石を置き… メインロードから少し離れた岩陰にパジェロを停止。

 パジェロから出る。


「パジェロに積んだガソリンは最重要… 目印に気づけばクラクションを鳴らしてくる…」


 ミネラルウォーターをゴクゴクっと飲み、


「それまでの間、今回は燃料運送係のワタシは少し休ませてもらうわね…。 モリガンは強敵だけど必ずここまで、ワタシのセントくんを連れて辿り着けよ…クソ女…」


 横になり背筋を伸ばし、鳥のせせらぎを聞きながら…


「ふう、やっぱ天気って最高だわ~~」


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