63話 36時間運転の睡魔


 ワタシがメインロードの橋を壊してから…


 36時間後…


 台風地獄5000キロの入り口から1500キロ進んでいる。


 ワタシ達のSMX(クルマ)と、先行するワルキューレの白いパジェロは、

 山岳トンネルに入る… かなり長いトンネル…

 その出口が見えた所で、パジェロがハザードを点けて停車した。

 ワルキューレはウチワを持って降りて、フラフラ~と、ワタシの運転席の窓の所にきた。

 ワタシは窓を少し開けて、


「どした?」


「クソワタシの車と違ってワタシは運転1人。 まじギブ… 少し休ませて…疲労と睡魔がやばい…」


「ちっ、仕方ないな… その休んでる間に、このトンネルで、ガソリンと食料を取る… 車も少しは休ませないとね」


「そうね…」


 ワタシは目にクマのワルキューレを見て、

「どのくらい休んだら走れそう?」


「そうね… とりあえず3時間かな」


「3時間後に起こすわね」


「了解」


 ワルキューレは出口に10メートルほど歩き…

 横になり、背筋をグッと伸ばした後に…


「ああ~~…つかれた~~・‥‥ぐが~ぐが~」


 とイビキをかきだした。

 

 ワタシは車から出て、後部座席を開けて、後ろの青鬼ショウと白鬼リュウトに、

「オマエラ、ガソリンを入れておけ」


ショウ「うん」

リュウト「ういっす」


「それから、パジェロのガソリン入ったポリタンクもだいぶ減ってスペースが出来てるから、牽引する荷車の食料と水はパジェロに詰め替えておけ」


「うん」

「ういっす」


「次の出発は3時間後な?」


「うん」

「ういっす」


 ワタシはパジェロに歩み、ドアを全て開けてワルキューレの死臭を換気する。台風の風ですぐに換気できた。 その後に、運転席に乗りカーナビのマップをいじる…


「あと700キロ行ったところに街があるのね?」


 ワタシの運転席のすぐ外に来ていたセントが、


「今は誰も住んでないゴーストタウン☆ でも☆ その街に全ての道は合流するようになっている☆」


「そう…」


 ワタシは車から出て、荷車からブランデーの瓶を取り、トンネルの壁に座りグッと飲む。


「ワルキューレを休ませる3時間が命取りにならなければいいけど…」


 セブンスターに火をつけ吸う。


 トンネルの向こうの暴風雨を見つめながら、


「この台風地獄は目は存在しないの…?」


 横に座ってカロリーメイトを食べだしたセントは、


「するよ☆ ゴーストタウンを出た辺りに…唯一、車をぶっとばせる場所☆」



   ~~~~~~~~~~~~


 その頃、


 日野の大型ダンプ『プロフィア』が、


 ドゥーーーン ブーーーーーン


 山道のコーナーを攻めながら走る。


 運転するモリガンは、ダークアーマーを外し、黒のタンクトップにデニムのショートパンツ。 後ろの寝台で眠る海坊主に独り言のように話しかける。


「次の問題、雨の日に川に理科の本を落としてしまいました。どんどん流され、どこまで流されて行ったでしょうか?‥‥3…2…1…ブ~」


 モリガンはドリンクホルダーのブラック缶コーヒーをグッと飲んだ後、


「答えはじゃじゃ~~ん! アメリカ~」


 マルボロに火を付けて、


「次! 手袋を逆から言ってみて! ‥‥…やるじゃん? ひゃはっはっは!」


 後ろから、


「あの? 運転替わりましょうか?」


「おねがい…」


    ~~~~~~~~~~


 またその頃、


 湾岸ロードを走るイブたちの大型バス3台が…


 先頭の白の三菱のバスを運転する剣道面ババアは、

 パイプを使い白い粉を、剣道面の中へス~~っと吸い、

「んはあ…はあ…クスリ使っても限界が来たようだね…今思えば閻魔女王と出会い、一度も眠っておらん…アンドロメダのラブホで眠るべきだったわ」


 毎度、強風で取られるハンドルに、


「しかも海からの風で、常に細心の注意が必要な湾岸ロード…36時間か…正直もう限界だよ」


 ルームミラーで、後方の席を除く、


「イブ様は、酒飲んで最後尾でお休みかい…メロンも眠ってやがる…おい!チョウ!」


 三国志なチョウが横に来て、

「何用でしょうか? 西太后様」


「おまえ…バス運転できっか?」


「自分は三国志時代の生まれなので! 無理です! このバスに乗る他の兵も!」


「ちっ…このバスの兵、カスばっかやん、メロンも原付だけだしね…」


 ババアは剣道面の隙間に、

 巻いて先に火をつけた大麻を持って行く、先は赤く光り… 隙間からフ~っと煙が、


「眠い眠い」


 ついに無線機を取り、

「こちら一号車、二号車三号車、運転手の予備はいますか?」


 ガガガッ 


《 こちら二号車、こちら最低人員2名で走行中、予備はありません》

《 こちら三号車、予備無し》


 その時、ババアの横に、走るフェンリルが来た。

 ババアは窓を開けて、暴風雨で剣道面がビシャビシャになりながら、

「どうした!? フェンリル!?」


「ソクドガオソクナッタ! ドウシタ!?」


「疲れだよ!! 一人で運転! もう無理!!」


「ナラ! スコシヤスメ! オレハサキニイク!!」


 フェンリルは先行し、凄い速さゆえに、すぐに姿が見えなくなった。


 ババアはハザードを点けて停車…


「さすがフェンリル速いわ…ふわああ~~~」


 背筋を伸ばし、


「さて…少し眠るか…」


 その時、ババアの横にイブが来て、


「西太后? 車をなぜ止めた?」


「イブ様‥‥?」


 剣道面ババアは千代の富士の引退会見の様に、かしこまって、


「正直… 体力の限界…」


 イブは運転席の周りに散乱した注射器や、グシャグシャのアルミホイルを見て、

「どうやらそのようね…三号車から一人運転手を呼べ、三号車は捨てる」


「ありがとうございます…」


 海からの風で揺れるバスにイブは…


「くっ…台風地獄にバスは不利…閻魔女王にかなりの差をつけられるわね…」


 前方を見て、


「フェンリル… 頼んだわよ…」


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