65話 vs フェンリル(1)


 ワタシは青鬼ショウと白鬼リュウトに、

「オマエラ、シャッターを開けろ、そろそろこの廃屋から出るよ」


ショウ「うん、ユキノ様、フェンリルをってくれてありがとう」

リュウト「ういっす。ユキノ様、ありがとう」


 2人は、コッチにでこった、ワタシのスピアムチで穴が開いたガレージのシャッターをガガガっと途中まで開けると、

ショウ 「うお! フェンリルいない!?」

リュウト 「血の跡があるけど~!? デカいスピアが頭部にブッ刺さって死んでないの!?」

 またシャッターを落として、慌ててワタシの後ろに走ってきて…


ショウ、リュウト 「まだ死んでない!!」


 ワタシは赤鬼セントに、

「フェンリルは大きいワンボックスカーくらいの体なんだよね?」


「うん☆」


「なら、とりあえずお前達、三体鬼ケルベロスは三階に避難してろ…」


「了解☆」


 ワタシは右手のムチを顔の前に持って来て、

「ワタシがフェンリルを殺してやる…」


ショウ「たのみます!」

リュウト 「あざっす!」

 すぐにショウとリュウトは階段を上がる…


 残ったセントは真剣な表情で、

「ユキノ様…☆ フェンリルは今までの、どの敵より強いかも☆ 奴のスキル『嗅覚探知』『視力5』『死闘』『迷彩』のうち…『嗅覚探知』と『視力5』は台風で精度はいまいちだろうけど…すでに『死闘』を発動していると思う☆」


「ミノタウロスと同じアレね… 内臓飛び出ても痛みを感じない…」


「そして… ヤツの最悪に厄介なスキル『迷彩』…おそらく、このスキルで天界最強オーディンを殺している…☆ デビルマウンテンに封印した時も…『迷彩』を活かし天界の凄腕15名を殺している…☆」


「ケルベロスはどうやってフェンリルを倒したの?」


 セントは赤のタキシードの腹部をまくり、傷を見せた。


「肉を切らせて右前足を断った… フェンリルが歩行困難なうちにデビルマウンテンを結界封印した☆」


 ワタシはフェンリルのサーチマニアを思い出し、


「スキルに『グングニルの尻尾槍』というのがあったけど…分かる?」


「知らない☆ グングニルはオーディンの持つ最強の槍…食べて吸収したんだろうね…グングニルの先から光弾が出るかもしれないよ☆」


「光弾?」


「当たれば溶けるレーザビームみたいなモノ☆ しかしフェンリルは魔力を持ってないから放つほどHPが削られるはず…☆」


「数は何回も撃てないということね…」


 ワタシは永久の目隠しサルグツワの中年奴隷の首輪のリードをセントに手渡した。

 セントは少し驚いた顔で、

「え?☆」


「コレ(中年奴隷)も3階に連れていけ」


「コレ(中年奴隷)を連れて行かないの?☆ 戦闘力がかなり落ちる☆」


「コレは目が見えないうえに四つん這い。 強風雨じゃ座って空も飛べない」


「うん☆」


「フェンリルは潜伏戦の強敵… うかつにコレに頼ってたら逆に殺されるわ…」


「ユキノ様…頑張って☆ 中年奴隷☆ ついて来て☆」


「ぼっす (^ω^)」


 中年奴隷はセントに引っ張られけつをフリフリしながら階段を上がる。


「さてと…」


 常識的にはガレージから出る所を待ち構えるでしょうね…


 ラクシュミの商店街の文房具屋で買った方位磁針コンパスを地面に置く…


 ガレージの出口が東…

 

 ガレージの西の、上にある窓にジャンプで飛んであがり開けて外を見ると…

 

 わりかし大きな用水路…


「いくか…」


 窓の上に乗ったワタシは輪ゴムで長い髪を結び…

 ビニール袋の中にライターを3つ入れて、胸の隙間に入れる。


 せ~のっと、

 フッっと飛び下りる。


 

 ザバーーン 


 

 やっぱ台風の用水路! 凄い流れ! 足は届くけど!


 すぐに!


『S』pace !

『M』uchi !

S難度★★★

 でムチを伸ばし北の遠くにある柵に巻き付けようとした…


 その時…


 え?

 水が赤い?

 フェンリルの血?


 どこにいる!? 全く見えない!


 水が流れてくる北に!


 バシャン!! バシャン!!


 水しぶきが上がる!!


「やばい!!」


 流れに身をゆだねる!!


 近づく水しぶき、その隙間、その一瞬見逃さない…


 おそらく頭部のどこかから流れる血だけは…


 存在を確認できる…


 それにしても!

 アイツ、外で待ち構えてなんかなかったな!

 ずっとSMX(クルマ)の置いてある家の周りをグルグル回ってやがった!

 

 とか考えていると~~~!!


 もう3メートルくらいまで来てる!!


 

 おおラッキー!! 橋が!! アイツの高さより低いであろう橋が!


 すぐに!


『S』pace !

『M』uchi !

S難度★★★

 でグーーーーーーンと伸ばし


 橋の根本の下にある大きな下水管に巻きつけ急停止し、

 ムチを縮め、下水管に入る!


 その時!!


 ビュぅぅぅぅ~~~~☼パ―――――――――☼ン!!


 音が!


 下水管の外でバラバラっと落ちるコンクリート!


 橋が崩れた!


 フェンリルがグングニルの光弾を放った!?

 

「やばいゼッタイに! この下水管の中にまで放ってくる!!」


 すぐさま!!

 30センチの高さの水の逆流の、下水管の中を四つん這い走り!!

 命がけの全力疾走!! 



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