49話 閻魔女王のホンダ『SMX』ワルキューレの日産『フェアレディZ』


 ガン ゴゴゴコ――――――――……


 着陸…

 目を開ける…

 他の乗客がぞろぞろと出る…

 後ろのシートから三体鬼ケルベロスの赤鬼セントが、

「大丈夫?☆ ユキノ様☆」


 前を向いて座ったまま、

「止まない悪夢ナイトメア、だけど、ユメの中のドッペルゲンガーのおかげで鍛えられたわ…」


「鍛えられた?☆」


 ワタシはセントを見上げ、

「 『S』trong 『M』ental 」


「さすがユキノ様☆」


 立ち上がり、

「行くよ、ケルべロス」


 後ろのセント、ショウ、リュウトが立ち上がる…

 引き連れ出口へ、

 智佐が、不安な顏でワタシを見て、

「ユキノ…」


「笑ってよ智佐」


「うん、ご乗車ありがとうございました」


 ワタシは親指を立てて、

「最高のスマイルだよ」


 飛行機を降りる、

 サイドの貨物室から3つのキャリーケースを出して貰う。

 引いて空港から出る。

 少し離れた所で、

「こっちが中年奴隷だね?」

 カチン カチン ガッチンと開けると、


「ぼいっす (^ω^)」


 ケツをフリフリした目隠しサルグツワに首輪の中年奴隷が出てきた。

 ワタシはうすい髪をナデナデしながら、

「元気だった?」


「ぼう! (^ω^)」


 次にワルキューレの入っているキャリーケースを見つめ、マスクを何重にも装着しながら、

「おい! ショウ、リュウト開けろ! 気をつけろよ!?」


ショウ 「うん…」

リュウト 「ういっす…」


 マスクを何重にもつけたイヤな顏のショウとリュウトは、ケースを開ける…



 ッ―――――――――――ン



 おえええ!! くっっっせええええ!!


 グテっとした… コレ(ワルキューレ)は… ワタシを見上げ、


「みっ…みず…みず…」


 ワタシはペットボトルの水を、

「ほら、これ」


「クソ女… もう11時間、缶詰はやめてくれ…ゴクゴクゴク…ぷは~ゴクゴク」


 その時!

 ボトンっと近くにデカい飛竜? が落ちてきた!

 ピクッピクっと〆られた魚のように動く、

 それを見たセントは、

「ワイバーンだ☆ 上空に流れたワルキューレの死臭をモロ吸ったんだろうね☆ もう死ぬ☆」


 上を見る、

「うわ? 上にうじゃうじゃいるじゃん? 自販機に群がるカメムシみたいだわ」


 セントも上を見て、

「飛竜はバハムートが仕切っているんだけど☆ バハムートに何かあったみたい…ユキノ様もワルキューレも☆ あまり高く空を飛ぶのは危険だよ☆」


 ワタシは物知りセントを見て、

「バベルの塔へ向かうには、次は何がある?」


「危険な修羅地獄…☆ ふつうは飛行機で空を渡るけど☆ ワイバーンの大量発生で陸路を行くしかない…車を手に入れないと☆」


「修羅地獄? どんな場所?」


「『大魔王サタン』『大魔神パズス』『妖魔ネビロス』…そして新興勢力の『鉄壁のモリガン』の四天王で修羅地獄の覇権をめぐり争い続けてる地獄だよ☆」


「どれが一番ヤバい?」


「軍勢の大きさは、パズス、ネビロス、モリガン、サタンの順番だね…☆ まあどの王も強さは『S』uper『M』ax級☆」


「ふ~ん…大魔王サタンか…? 見てみたいものね…超有名だから…ん?」


 ショウとリュウトが最後のキャリーケースを開けると、

 中には…

『うみねこの鳴くこ●に』の漫画全巻とDVD全巻とフィギア(ベアトリーチェ・マリア・シャオン)が…


ショウ 「ちゃんとある♪」

リュウト 「ショウ、はやくアニメDVDみたいね」


「コイツラまだ持って来てたの? さてと、みんな車を買いに行くよ」



 近くにあった中古車販売店に、

 皆で並んで車を見る。

 臭っさいから、ワルキューレだけ外で待たしてある。


「古いのばっかだけど、品揃いは多いわね?」


 若い販売員が、

「マジで修羅地獄を渡るんですか?」


「うん」


 トヨタのランクルを手の平で指し、

「これが一番おすすめですね1993年式です。オフロードにも強く、パワーも貨物性能も問題ありません、今ならたった85万円です…あ…ウチは現金のみですからね?」


 ワタシは運転席をチラッと見て、

「うわ、これMTじゃない?」


「免許はAT限定ですか?」


「そうよ」


「これもですけど、デリカとかハイエースとかは…ウチはMTしかないんですよね」


「参ったな… あ?」


 ワタシは光り輝いて見える…

 1台の黒い車に一点集中…


「アレがいい。 昔、ウチで乗ってたやつだ…」


「アレですか…? 2000年式のSMX。 カーナビが新しいので価格は25万円です… だけどアレに5人の乗って修羅地獄を?」


「大丈夫♪ 大丈夫♪」


 ワタシは支払いを済ます。


 SMXに荷物とケルベロスと中年奴隷を乗せて、中古車販売店から出る。

 外でぼっちで待ってたワルキューレは、ワタシの車が通過した直後に走って追いかけながら、

「クソ女ーー! ワタシはーー!?」


 ワタシは車を停車し、マスクを何重にもを装着した後に、窓をウィ――っと開けて、

「空飛んでついて来い」


「やだ! ワタシも車運転できるし! 空はワイバーンだらけだし!」


「はあ? 女神なのに車運転すんのかよ?」


「ワタシを誰だと思ってんのよ! 戦女神よ! 戦闘機も操縦できるし!」


 ワタシは、大きくため息をついて…

「じゃあ、待っててやるから、さっさと車買って来い」


 おいおい…

 手の平を差し出してきた…


「おまえ…金は? ラブホはワタシ達のカードでお前の分も払ったけど…てか…明細見たら、お前の部屋のオプション購入料金が5000円ついてたぞ? 何買ったんだ?」


「何買ったか…………覚えてないし、金!!!」


「凄腕助っ人の癖に…ちっ…しょうがねえなぁ…」


 数えて10万円を出して、

「中古のミラでも買って来い」


 コイツは金を取った後に、

「ミラ? ‥‥ふざけんな!くそ女!! 戦女神ワルキューレが中古のミラ!?」


 後ろの窓が開き、セントが100万の束をだして、


「ワルキューレ☆ これで買ってきて☆」


 瞬で取ったコイツは…

 涙目笑顔をセントに向け、


「あっあっありがとうセントくん… 行ってくるね!」


 中古車販売店に、パタパタと飛んで入って行った…

 ワタシはセブンスターに火を付けて、


「セント? 100万はやりすぎでしょ?」


「金を残しても仕方ない☆ 使う時には使う☆ お釣りも来るだろうし☆」


「ふう~~ なるほどね、ワタシの10万も返して貰わないとね」



 5分後…


 エンジンの爆音が聞こえる…


 え??


 販売店の出入り口から貫禄ある車の頭が見えた…

 赤の日産フェアレディZ?? 90年代の型っぽいけど… 

 110万円で… よく足りたな…?

 間違いなく… 全部使ったんだろうけどね…


 赤のフェアレディZは、ワタシのSMXの真横で停車し窓を開け、ワルキューレは金のべリショートヘアーをかき上げながら…

「クソ女ぁぁ… まあまあぁいいのあったわぁぁ…赤のフェアレディZ…3.0 バージョンS 2シーター Tバールーフ… そして…」


 勝ち誇った顔を見せて、


「MT~~」



 ぐっ…!



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