44話 渦巻の瞳


 覚めた!?



 放課後の教室、すぐに、隣の席の智佐が、

「どうした? ユッキー?」


 周りの、いつものつるんでるメンバーを見渡して、

「酷い夢だったわ…」


 でっかいエリカが、

「急に眠るし、大声上げるし、ワタシら、もう帰るし」


 あ? やば…


「みんな待ってよ! ワタシも帰る!」


 いつも、仲間内でやられ役のワタシは急いで、仲間を追って教室を出る…

 窓の外に…                  z

 ボロボロの半壊の木造旧校舎がある…

 こっちから見える壁は全て剥がれ、リカちゃんハウスのように内部が一望できる。


「あれ? あんな旧校舎あった?」

                            z

 智佐が、

「ユッキー? あたま大丈夫? 前からあったよ。 ナイトメアって殺人鬼が住むって言われてる旧校舎じゃない?」


「ナイトメア?」


「うわさじゃ~もう数えきれない人間を無残に殺したんでしょ? ウワサだけどね。あれ? エリカは?」


 ワタシはエリカが、リーゼントの先輩と、一緒に旧校舎に歩く後ろ姿を見て、

「エリカ、旧校舎に不良先輩と行ってるみたい」


 智佐はスマホを取り出し、

「そうそう、旧校舎で公開セクロスするからみんな見とけって言ってたわ! ひゅー! エリカ!」


 エリカ1人が、旧校舎のど真ん中の教室に見えた。

 ジャンプして、ジャンプして、強く上の何かにアタっている…

 戦っている? もがいている? 上の何かを捕まえようとしている?


 なんか異様な光景…

 横の智佐が、


「なんのパントマイムやねん…え? 血?」


 エリカ… 倒れた…

         z       z

 スッと教室の上から… オノが見えた…


「え? なに?」

 頭部に黒いビニール袋を被った上下迷彩服のヒトが下りてきた。

 コッチを向いて、


 《 青春を謳歌しろ 》


 ホラーのナレーションの様な低い声…

 いやこれ… 黒ビニールマスクからの心の声だよ…


 全裸の不良先輩が、上の教室に出てきた。

 黒ビニールマスクはエリカの部屋から奥の戸を開け、消える。


 すぐに、不良先輩の教室に入り、肩の辺りにオノを振り落とす。

                      z

 気持ち悪いほどに、オノを何度も振り落とす…


 むちゃくちゃ… こわい… 信じられない…


 仲間は、みんなビニールマスクが来るのでは?

 恐怖かつ逃げる準備。え?してない…

 また聞こえる。


 《 青春を謳歌しろ 》


 また奥に消えた。



 こわい…

                       z


 警察は… あんなのが居ても入らないといけないなんて… すごい仕事…



 智佐が笑いながら、


「ユッキー! おまえ行ってこい!」


「え? だってエリカ死んだよ!? はやく警察!」


「ぜってえ、ドッキリだって!」                z


 棒キャンディをずっと咥えていたホノカが、

「ユッキーとナイトメアのグロイ公開セクロスあると思います。 はよいけ、しばくぞ」


 智佐はワタシの髪の毛を掴み、

「はよいけゴミ、いちいち抵抗すんなバカ、今日のお前の黒のミニのボンデージの服装、超生意気だしシね」


 集団に逆らえない…

 行く…

 いじめられると…

 心が去勢されたようになる…

                           zz

 心がカラで歩む…


 うしろを向くと…


 仲間が消えている?


 ラッキー! 逃げれる!!



 なんに逃げる?


 恐怖? いじめ? 


 たぶんココ…

 逃げちゃ… ダメ‥

 もっと堕ちるきっと…           zz


 胸の隙間にさっきから気になっていたモノを取り出す、



 ドクロの刻印のキセル?

 

 何かのヒントがあると思い吹かす。


💀{ 逃げるんだ! ユキノさん!!  ‥消えた


 コイツなんかいかにも疑わしいから、

 旧校舎に行く‥ 


 下駄箱の奥からヌウ~~っと、

 黒いビニール袋の頭と迷彩服のナイトメアが出た。

 オノには血がこびり付く。


 《 ユキノ 恵まれない家族 いじめ もう逃げる? もう死ぬ? 》


 ナイトメアは、頭部の黒いビニール袋をガシャガシャっと左手で強く触る…


「逃げない」


 《 どっちも一緒 ナイトメアへ ようこそ 》


 体が? 動かない?

                        z

 近づいてきた! ナイトメアのオノが振り落とされる!!


 どわわわわーー!!!


 ワタシの腕がー!! おちた! あっさりスパーー!!



 《 ツギ ひだり 青春を謳歌しろ 》



 うごかなない!


 しぬ? しぬ? ワタシ? しににたくない-;.-.Λ¨


 いや! いや! ゆるして(≡、Z#(‷☯




 


   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 アリアドネ行52便の中の、

 最前席に座るイブはグラスのブドウ酒を空けた。

 すぐにチョウが、震えながらおかわりを注ぐ、


「ふう…しかし、ワタシにまとわりつく蛇… まさか夜魔『ナイトメア』とはね」


 スルル~っと黒い鎖のドレスのスカートから、黒い鎖蛇の頭がイブの顔の前に、


「ユキノちゃんが生きてるのオレ知ってたし、空港張ってればマーキング出来るんだしね♪」


「死熱の空に、まさに打ってつけの刺客、ワタシが行けば100パー閻魔女王を殺せるけど飛行機もタダじゃすまなくなる可能性もあるしね…」


「今頃、ユキノちゃんも、ビックリマンのロッチを初めて味わった子供の様な気分のはず♪ ナイトメアを倒すには飛行機の中の全ての人間を殺すしかない…ククク…ユキノちゃんにそれができるかなあ~♪ もしユキノちゃんがナイトメアを乗り越えたら、オレのライバルに格上げだあ~♪♪」


「それにしても蛇のくせに、魔王級だけど正体不明のナイトメアをよく引き込んだわね?」


 蛇はイブをグルグル瞳で笑み。

「わたしゃ~人間イブのただの引き立て役ですよん♪」


 イブは、そのグルグル瞳を見つめ、


「ん? その瞳…あなた以外にもどこかで見たような…?」


「この瞳は♪ 天界にも悪魔にも人間にもありますから♪」


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