38話 現生の宗教団体『清き女神』


 宇宙創造主が生んだ、究極の存在『仏体ほとけたいⅩシリーズ3体』のうちの1体、

 古代怪物『リバイアサン』が破壊した渋谷の、交差点では…


 必死に訴えかける白い上下の服のショートヘアーの教団の女がいる…

 周りには団体の広告のテッシュを配る信者たちもいる。


 《 ここで確かに起きた悲惨な超常現象!! アルマゲドンは近いのです!! 》


 《 ここに現れた空飛ぶ女ユキノ様は!我々の教団の教えの女神だったのです!》


 《地獄からサタンが現れ! 世界を滅ぼすアルマゲドンを阻止する女神です!》


 《 今の日本の政治では!! 日本!…いえ! 世界は終焉です!! 》


 中央に居た、同じく白の上下の服で、大柄な50代のウエットな長い髪の教祖は拡声器を取り、涙目で訴える!


 《我々は! 次の衆院選挙に『女神の党』として!! 250名以上を出馬します!!》


 《 女神の使者の私! 教祖『太仁田敦ふとにたあつし』に!! 皆様のお力添えを!! 》


 《 ワシは!! ワシは!! ワシはー!! 清き女神ユキノ様とぉーー!! 通信できるんじゃぁ~!!》


 花を添えに来ていた女性が、


「ワタシの娘は帰ってきますか!?」


 《ちょっと待って………


  教祖は耳に手を当てて… 小さく目を細めながら三度、頷いた後に、


  帰ってきます! 清き女神は言いました! 我々を信じてください!!》


 後日… 

 テレビ


 『女神の党』の代表太仁田が涙目で、マイクを右手に中腰姿勢で熱く語る


 《 消費税廃止!! 公務員の給与25パーセント削減!! いじめた!いじめた!いじめた子供には実刑!! 沖縄から米軍撤収!! 原発完全廃止!! 風俗完全廃止!! 競馬も競輪も競艇も廃止じゃあぁぁぁ!!!》


日曜に討論の司会 「財源は?」


 代表太仁田は目を細めて…… 少しの間から…


 《 若い者がぁぁお年寄りのためにぃぃ…払うんじゃ!! ……女神ユキノ様はワシに言ったんじゃ…タトゥーもピアスも薄着も禁止じゃあぁぁ…籍入れるまでの肉体関係ものぅぅ…全てぇぇ実刑じゃぁぁ…! 若者の自由と醜い欲望がぁぁぁぁ悪魔をぉぉ…サタンをぉぉ…アルマゲドンを呼ぶんじゃぁぁあ!!!》



 テレビを、ソファーに並んで見ていた70代の夫婦は、


妻「たしかに…最近のテレビでも、今の若い人たちは無茶苦茶だからね~。 神様も、いえ空飛ぶ女神も若者達に、怒っているのかも知れませんね」


夫「愚連隊とか、オレオレ詐欺とか、おやじ狩りとか、痴漢冤罪とかもあるしなぁ…SNSとかもあるんだろ?」


 テレビから、涙ながらの声が、


 《 だからぁぁぁ…だからじゃあぁぁ‥‥…国民年金1人20万んん!! 厚生年金倍増ぅぅ!! 若者だけ生活保護排除ぉぉぉ!! 電子マネー廃止ぃぃぃ!! 》


夫 「一回、ココに入れてみるか?」


妻 「はい、一回入れてみましょうか? 若者にお灸をすえないといけませんもんね」


 後日…


 選挙の前日の夜…

 渋谷の交差点では、若者の数万規模の群れが無数のプラカードを持つ…

 掲げられたプラカードの中には、


『僕らから自SEX由を奪うな』

『女神党FU●K 現代KILL 日本DEATHA』

『ユキノはヘブンズドアーのSM嬢=風俗嬢! ユキノは女神じゃない!』

『こんな時代にしたのは誰だ! 俺達のせいなのか!?』

『ユキノは絶対に言ってない!』

『女神の党! ユキノを出してみろ!!』

『ユキノの声を俺達私達に聞かせろ!!』


 警察が来ても先頭にいる、タトゥーや髪を染めた若い男女たちは、

 女神の党のビルに物を投げながら!


「ふざける! 女神の党ー!! 消えろー!! 女神の党ー!!」

「いかさま教祖!! いかさま教祖!! うそつき!! うそつき!!」

「ぜってえ! 女神ユキノは言ってねえだろ!! 詐欺師!出て来い!!」

「ワタシ達からスマホを奪うな! ジジババのために重税を背負わすな!」


 ピ―――! ピ――――! ピ――――!


《 下がりなさい 物を投げるんじゃありません 公務執行妨害になります 》


 せき止める無数の警察の笛の音や、拡声器の声が鳴りやまない…





 渋谷『女神の党』のビルの2階にある選挙事務局では、

 10人以上のテレフォンレディが電話をしっぱなしの中で、

 パソコンを操作するショートヘア―の女秘書が、


「警察がなんとかしてくれるでしょう…教祖様…期日前投票の出口調査を見ても、選挙は優勢です…少なくとも200は堅いです」


 代表太仁田はブラインドを少し開けて、

 ワイングラスを回しながら…デモの集団に目を細め…


「ほんとうにすまん…すべて‥‥清き女神ユキノ様の意志なんじゃぁぁ…」


 涙を流した後に、

 ワイングラスの酒を飲み干した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る