37話 ユキノ


 ワルキューレの持ってきた地図を辿って、進むと、やがて出口の光が見えた。

 足を組み座るワタシを乗せ浮く、四つん這いの中年奴隷は出口を抜けた。


「よっしゃゴール!」


 出ると高台で、下に、大きな栄えた街が見える。

 街の外れにジャンボな飛行機と滑走路、その向こうは、崖?奈落?から遥か上空まで紫のモヤモヤしたオーロラ?


「セント? あのイビツなオーロラはなに?」


「地獄の底の死熱が出てる☆ 約1000度だから☆ 下のアンドロメダの街の空港の超耐熱飛行機で抜けないとダメ☆」


「ほえ~、どのくらいの距離?」


「約1万キロ、日本アメリカ間くらい距離」


 遠い…


 まあいい… 行くしかないし…


 ワタシ達は高台を下る。

 離れて後ろから、ヒラヒラと翼をはためかせたワルキューレがついてくる。


 ん? あっやばっ


 アイツ、普通に飛行機に乗せたら大変なテロになる…


 ワタシは進行を止めて三体鬼ケルベロスに、

「このアンドロメダの街で一泊泊まろうか?」


赤鬼セント「賛成☆」

青鬼ショウ「やった初めてちゃんと休める!」

白鬼リュウト「ういっす♪」


 離れたワルキューレもなぜか一人ぼっちなのに拍手してる。

 地獄耳…?


 ワタシは、ショウとリュウトに、来い来いとサインして、30万ほど2人に渡して、耳を近づかせて小声で…

「おい、おまえら、ホテルでチェックイン済ませたら、街で高性能のマスク100枚くらいと…」

 親指でワルキューレを指して、

「アレ(ワルキューレ)が入りそうなキャリーケース買って来い」


「うん」

「ういっす」


「アレ(ワルキューレ)は荷物として運ばないと大被害(バイオテロ)になるわ、最悪、黒か青のゴミ袋でいい」


「うん」

「ういっす」


 ワルキューレはワタシ達を「???」って感じで見てた。


 さて降りようっと、やっと本当にちゃんと休める!


 ゴハンも!






  ーー ラビリンスの最深部 --


 薄暗い袋小路に光る水晶の中に、現生のニュースが映し出されている…


《 本当に信じれません!大勢の人が突如、現れたブラックホールに吸い込まれて 》

《 渋谷の交差点では、200人以上を切り裂いた、かまいたち現象も起きたとか 》

《 すさまじい異臭悪臭がしたとも聞きます 》

《 異常事象災害が起きる前に牛の恰好をした殺人鬼が渋谷にいました! 》

《 アルマゲドン? その言葉で今回の事を説明できるのですか 》

《 空飛ぶ変態とSM嬢と天使これ… 本当にフェイク映像じゃないんですね? 》

《 ブラックホールに吸い込まれた行方不明者の捜索は尚も続いてます! 》



 逆さで岩に張り付き、水晶を見ている、黒い小さなコウモリが1匹…

 首には赤いリボンがつけてある。

 コウモリは興奮気味で、

「間違いなく! リバイアサン! リバイアサン! 超スーパー大物!!」


 バサバサと飛び、水晶を目の前に来て、閻魔女王ユキノが映っている静止の状態にし… よだれをボトボト垂らしながら、

「この女~~最高だな~~たった1人で『ミノタウロス』と、仏体ほとけたいⅩシリーズの『リバイサン』を殺りやがった~~」


 ドドドドドドド

 音がする。


 コウモリは音のする方を睨みつけ!

「どこのだれだー!? 魔王最強のオレと殺りあう命知らずの決死の挑戦者か!! 1秒で死ぬっぞ!!」


 音が止まり、静かにポロポロと小さな丸い穴が開き、

 イブの黒い鎖蛇が顏を出した。

「アスタロトくーん♪ お邪魔しまーす♪ なんか今イキりはいってなかった? 魔王最強のオレって聞こえた気が」


 コウモリは曲がり角で、ジャイ●ンに会ったの●太のような顔で、

「なっなんだい? キミか? きっ気のせいだよ…」


 蛇は水晶の静止しているユキノを見て、

「お? おいおい♪ アスタロト~気が合うね♪ お前もユキノちゃんのファンになった?」


「このかわいちゃん? ユキノちゃんって言うの?」


「おう! 閻魔女王ユキノだぜ! 魔王ベルゼブブもブッ殺したマブな女だぜ!」


「この娘って、ベルゼブブもぶっ殺したんだ~~3大魔王はキミとボクの2人になったんだね…」


「おうアスタロト! 一緒に来いや! きっとユキノちゃんに会えるぜ!」


「でもボク…キミほど強くないし…、キミ…ヤバい計画を立ててそうだから…当然、敵も凄いのばっかだろうし…」


「戦わなくていいの! アスタロトはイブと一緒にいるだけでいいの!」


「え?どういう事?」


「イブとオレは最強だけど、イブは頭が悪いからオーディンに殺されかけたんだよね、でもそういう所も大好き♪」


「イブって頭悪いんだ…」


「アスタロトの完璧な変化で、イブの衣装の一つに化けて、もし万が一の時にイブを守って欲しいの!」


「それくらいなら、加わってみようかな… 生のユキノちゃんを見てみたいし」


 ボワっと、赤いリボンのついたオシャレな黒いレディースハットに変化。


「羽!」


「あ? ごめん」


「魔王アスタロトが頭の上に乗ってるとバレたらキレるから絶対に喋るなよ!! ころされっぞ!」


「わっわかってるよ、リボンが外れたら変化強制解除だからね、気にかけといてね」



   ーー ラビリンス安全経路の出口 --


 鎖蛇と繋がった黒の鎖のドレス、左手に水色のティファニーのバッグ、右にロンギヌスの槍を持つ、剃髪の美しすぎる女イブがいた。

 近くには、

 オーディンを飲み込みグングニルの尻尾槍となった灰色の大きな狼フェンリルと、剣道面ババア(西太后)と卑弥呼(メロンレディ)、それと、槍を持った兵隊も100人ほど。


 イブは酷い剣幕で、

「こら!! どこへ行ってた!! ワタシにまとわりつく蛇… ワタシとアダムを待たせるとは確実に死にたいようね…」


「ごめん、でもイブにプレゼントがあるんだ…」


 瞬で、イブの左手が、蛇の口先をギューッと掴んだ。

「んん~…んっんっん…」


 ロンギヌスの槍を蛇の鼻先に突きつけ、

「あ?プレゼントだぁぁ? 分かってる? もみじ饅頭だったら殺す…八つ橋でも殺す…食いもんだったら殺す…」


 イブの顔の横に、

 もう1つの鎖の先が、アスタロトの黒いレディースハットを運んできた。


「ふ~ん…帽子か? おい、鏡持ってきなさい」


「は!」


 三国志な兵2人が即、長方形の鏡を持ってきて、支える。


 イブはロンギヌスの槍をポイして、アスタロトの帽子を被り、

 水色のティファニーのバッグを持ったまま、

 鏡の前で様々なポーズをした後、鏡に顔と水色のバッグを近づけ、

「アダムどう?似合ってる? そう、うん、フフ、アダムったら、クスクス」

 ほくそ笑む。


 鎖蛇は冷や汗を垂らしながら、

「どう? イブ? 気に入った?」


 未だに様々なポーズをし続けるイブは鏡を見ながら、

「まあ悪くはないわね、しいて言えば、リボンのワンポイトがワタシにはちょ~っと幼い感じかな、外した方がいいわね」


 鎖蛇は汗をドバドバ流し、

「いやいや、イブは若いからぜったいあった方がイイと思うよ!」


 イブはまんざらでもなさそうな顏で、鏡にポーズを決めた。

「ウフフそう? そうかしら? まあ、リボンもありね」


 次に、下のアンドロメダの空港を見ながら、ロンギヌスの槍を拾い


「配下共、17時間後に飛行場に集合、3機チャーターしてる、バベルの塔へ帰るわよ。ワタシはホテルで休む」


「は!」


 フェンリルはイブに頭を下げ、

「オノリクダサイ…イブ…」


「フッ」


 イブはフェンリルの背に乗り足を組み、ロンギヌスの槍を置いてから、

 大切そうに青いバッグを両手に持つ。

 黒いドレスと黒いハット…2体の魔王を纏うイブは、

 配下達を引き連れ、アンドロメダの街へ…


 一番後ろを歩く、メロンレディと剣道面ババアは、

「メロン… 街に着いたら付き合ってくれんか?」


「ババア…どこに行くの~ (´▽`)」


 ババアは嬉しそうに、

「ホストクラブ♪ 久しぶり、アンドロメダに来たからな、昔、通ってた店に顔を出さんとな」


「行く行く (*'▽')」






 東京の保育園で、子供達が2人の先輩後輩の私服警察に、


「本当に! 黒い服のお姉さんが助けてくれたの!」

「ムチがすっっごい伸びて、牛を巻き付けて上に飛んでいったの!」


「分かってるよ、ドライブレコーダー、渋谷のライブカメラ、スマホの動画に映ってたからね…キミたちから見て、怖い人だった? 良い人に見えた?」


「う~~ん、両方かな」

「うん、そんな感じ」

「絶対に正義の味方って感じじゃない」

「でも絶対に悪い人じゃない!」


 私服警察2人は車に入る…


「先輩、池袋でSM嬢してたユキノ20歳で間違いないですよね?」

『声紋鑑定も100…着てた服も、特徴も』

「突然、現れ、牛男の殺戮を止めて、ブラックホールを、なんらかの手段で止めて消えた」

『だけど間違いなく火事で死んでいる』

「分からない……死後の世界から来たと?」

『・‥‥…ぷっはは、しょうがないな! 報告書に死後の世界から、空飛ぶ変態に乗ったSM嬢ユキノが来たと書くしかないな~!』

「先輩? 死んだら分かりますかね? この動画のユキノが何者か?」

『おっおま…ぷぷ…しっ死んで調べて来い! 空飛ぶ変態に乗った…SM嬢?ぷぷ』

「いやです! でも、もし事故かなんかで死んだら調べてきます」


『よっしゃ、オレも約束するわ、死んだら、空飛ぶ変態に乗ったSM嬢が……ぷっ…何者かをな…』




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