21話 カサンドラホテル最上階の客
ベルゼブブの城を越えるとデッカイ街が見えた。
「街?」
街の向こうに大きな大きな山がある。
赤鬼セントが町を指さし、
「血の池の町と同じで、あの街も地獄で住民権を貰った人間が住んでるカサンドラの街だよ☆」
「どうやったら住民権を貰えるの?」
「自殺者とかが優先だね☆ あと血の池の町のラーメン屋の大将みたいに料理が美味いとか☆ 水道技術や電気技術を持ってる人とか☆」
「ふ~ん」
次にセントは大きな大きな山を指さし、
「アレは☆ デビルマウンテン☆ 魔物がうじゃうじゃ潜む地獄で一番ヤバい山☆」
「『イブ』のいる『バベルの塔』に行くために、あの山を越えなきゃダメなの?」
「うん☆ でも今はロープウェイがあるから大丈夫☆」
ほんとだ? よく見るとロープウェイを昇るゴンドラがある。
10分後…
歩きながらカサンドラの街を視察する
血の池の町より、ずっと規模はでっかいし栄えている。
それに住人達もオシャレ。
キャバクラもあるんだ? 風俗も?
地獄に夜が無いからかな? 24Hと書かれた店がやたらと多い。
カラオケボックスもあった。
セントが、
「ユキノ様はカラオケ歌うの?☆」
「歌うよ、今回の使命が終わったらケルベロスも歌ってよ」
「どんな歌を?☆」
「DJオズマのアゲアゲエブリナイト? あれ盛り上がるから」
「了解☆ みんなで勉強しとく☆」
うん?
777と光る看板がある…
地獄にはパチンコ屋もあるの?
外から中を覗くと、無茶苦茶、客が多い。
青鬼ショウが、
「ユキノ様はパチンコするの?」
「したことない」
「この店は地獄で唯一のパチンコ屋だから、パチンカスが遠くから来てまでも打ちに来るんだよ」
「そうなんだ」
「置いている台は、検定切れで廃棄処分された多くのパチンカスの命を奪った台ばっかりだよ。 死んでも打ちに来るんだからギャンブル中毒って怖いよね?」
自動ドアが開き、同い年くらいの若い女が出てきた。 タバコに火をつけて、派手なネイルの手でスマホをいじり始める、
またドアが開き、太ったオッサンが出てきて女と向き合った。
女がオッサンに、
「5000先払い」
「あと払いだよ」
2人はワタシの前を通り過ぎ、パチンコ屋の横にある駐車場へ歩いた…
せっかく地獄で住民権を得てアレ?
呆れるわ…
だけど、なんとなくこの街が栄えているワケは分かった。
気を取り直して、三体鬼ケルベロスに、
「さすがに疲れた、この街で休もう」
ワタシは近くにあったインターネットカフェを指差し、
「もうあそこでいいわ、とりあえず寝たい、ネカフェなら何か食べる物もある」
セントは着ている赤タキシードの胸ポケットからブラックカードを取り出し、
「あんな隙間だらけのところダメ☆ せっかく閻魔大王からカード借りてる☆ この街で一番高いホテルの方が絶対に安全安心☆」
物知りセントが先頭で、この街で一番高いホテルまで案内してくれた。
うほ~っでかい~~
ホテルニューオゥタ二みたいなホテルだ~~~
『カサンドラホテル』
さっそく、目隠しサルグツワ白パンツ一丁で四つん這い中年奴隷の首輪のリードを引っ張り入ってみる。
「ぼべる、ぼっ!(^ω^)」
すぐさま、
ホテルマンがササっと小走りで来て、
「お客様、そのお連れ様もご宿泊でしょうか?」
「うん…やっぱりダメ?」
「はい」
中年奴隷はドレスコードに引っ掛かった…
だけど、
気を利かせてくれたホテルマンが、庭園の木陰に案内してくれた。
四つん這いの中年奴隷が入れる大きさの段ボールまで用意してくれた。
「これをお使いになられてください」
「ぼう (^ω^)」
さすが一流のホテルのサービスね♪
改めて、ケルベロスを連れてフロントに向かう。
「一番高い部屋空いてますか?」
「それでしたら、当ホテル1部屋しかない最上階のデラックススイートです。 24時間ご利用で650万円致しますがよろしいですか?」
たかっ! 650万!?
慌てて、振り返ってセントを見る。
キラキラ笑顔のセントは手でオッケーサイン。
「いっ、いいですよ」
ホテルマンはパソコンをカチャカチャしながら、
「少々、お待ちください…申し訳ございません、デラックススイートすでに他のお客様が入っておりました…誠に残念ですが」
「どんな人が、その部屋を借りているんですか?」
ホテルマンは笑顔で、
「個人情報にあたるので、お答えできません。 お客様、二番目に高い部屋は御用意できますが?」
「じゃあ、それでいいです」
「一泊40万です、カードですか?」
先払いで清算を済ませると、14階の部屋へ案内された。
さすが40万♪
白い壁にオシャレな椅子にテーブル♪ それに広い~♪
大きなベッドも4つある♪
ワタシはフカフカベッドで横になる。
「うわうわ~♪ これで久しぶりに眠れる~♪」
ケルベロスもそれぞれのベッドで横になっていた、
知らぬ間に…
クッワァァァァっとねむっ…
目覚めたら…
椅子に座り「うみねこの鳴くこ●に」を読む白鬼リュウトが椅子に座っていた、他のケルベロスは大いびきをかいて眠っていた。
ワタシは半身を起こし、
「リュウトは寝ないの?」
「ケルベロスは誰か必ず起きている習性があるんだよ」
「ふ~ん、お腹すいたね」
リュウトは、セントの赤タキシードの胸ポケットからブラックカードを抜き、
「オレも腹減った、隣のコンビニでなんか買ってこようか? 酒は冷蔵庫で冷やしてる」
ワタシは起き上がり、
「ワタシも行くわ」
リュウトと2人で隣のコンビニに行き、カップメン、お菓子、パン、弁当、中年奴隷の餌、等々、皆の分の食料を買う。
ホテルの庭園へ行き、中年奴隷の入った段ボールの前に、開けた弁当と紙パックに牛乳を入れる。
匂いで気付いた?
中年奴隷は段ボールからヒョイっと顏を出して、クンクンと嗅ぐ、
「ぼっ(^ω^)」
サルグツワの口で器用に食べ始めた。
ワタシはうすい頭をナデナデして、
「美味しいか?」
「ぼっ ぐちゃぐちゃぁぁ ぼう!(^ω^)」
荷物をリュウトに持たせホテルの中へ戻る。
エレベーターの前、
↑を押す。
う~ん、5階で止まってなかなか降りてこない…
やっと降りだした。
その時、誰かがワタシの隣に立った。
後ろのリュウトは、食料を入れたビニール袋をポトンと落とした。
「リュウト! 何してんだよ! 弁当こぼれんだろ!」
「あっあ? うっん」
エレベーターが開く、中に入っていた中年夫婦は、
ビクッっと反応し、目を逸らすように出る…
入って14階を押す、ワタシは入って来た誰かに、
「何階ですか?」
「17階を」
女の声だった。
17階を押す…ん? 最上階?
押した後「ありがとう」
と言った女をチラッと見た。
黒い鎖をドレスの様にしてまとった美しい剃髪の女。
本当にパッと見で分かる美しさ。
その右手には青いティファニーのバッグを持っている。
ワタシは一度、顔を前に戻す。
真後ろのリュウトはワタシの耳に小声で、
「それ以上、みちゃダメだ…絶対に…」
「え?」
チーン
14階のドアが開く、
ワタシは出た、リュウトも出た。
扉が閉まる…
リュウトに顔を近づけ、
「おまえ? あの女、誰か知ってるよね?」
「イブ…」
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