10話 餓鬼地獄2000キロ
ブ―――ン
ブ―――ン
キュ――
ブ――――
コーナーを攻めながら、ワタシの軽トラは峠を上る。
門が見えた?
キキーー!
急ブレーキ!
赤鬼セントはパンっと助手席から降り、地獄のマスターキーで門の扉を開けて、また助手席に乗りシートベルトを締めて、
「さあ✰ ユキノ様✰ 餓鬼地獄へ✰」
軽トラをゆっくり走らせ門をくぐると… 高台から、餓鬼地獄が一望できる。
赤い空の下… たくさん岩山… まるで赤いグランドキャニオン。
小さく、うごめいているアレが餓鬼か?
うじゃうじゃ湧いた虫の様に あちらこちらにいる…
遠くに見える一部の餓鬼の集団が一斉にザワーとゆっくり動き出した。
でかいスライム? の様なモノから逃げているようだ。
ワタシはスライムみたいなモノを指さして、セントに、
「あのでかいスライムみたいモノは何?」
「アバドンだよ✰ 餓鬼でも何でも無限に食べる魔物だよ✰ 強靭な歯と噛む力を持っている✰」
「餓鬼地獄には魔物がいるの?」
「アバドンは不死身だけど動きは遅いから怖くない✰ ヤバイのはマンティコア✰」
「マンティコア?」
「人間の頭をした大きなライオン✰ とにかく速い、知能はアバドン同様に低いし主食は餓鬼だけど、大好物の人間を見つけたら凄くしつこくてタフだからね、マンティコアには出会わないようにしないとね✰」
ワタシの胸はドキドキした…
餓鬼? アバドン? マンティコア?
地獄らしくなってきたわ!
「行くよ!!」
グオーーーン
フルスロットで高台を下る!
バックミラーで荷台を見ると…
青鬼ショウ白鬼リュウトは『うみねこの鳴く●ろに』を寝転がり真剣に読んでいた。 四つん這いの中年奴隷は目隠し+揺れで酔ったのか? サルグツワの隙間から車の後ろに食べたばかりの天津飯を吐いているようだった。
高台から降りると、ワタシ達の軽トラに…
「あ~~?」
「んっ?」
「て~てててんしんはんのにおい??」
気づいた100は越える餓鬼ども、ゆっくりと近づき始めた!
ワタシはキュキュルと手動で窓を開け後ろのショウとリュウトに!
「ショウ! リュウト! なにかあったら! 一升瓶で餓鬼をぶん殴れ!!」
ショウは中腰になり一升瓶を持ち周りを警戒したが、白鬼リュウトは寝ながら漫画を読んだまま「ういっす」と口が動いた。
ういっす? カチンときたわ…
隣のセントが、
「ユキノ様✰ 冷静に!✰ 車を止めたら終わりだよ! ほら✰ 前を見て!」
前?
うわ!
なんじゃこりゃ!
数万? テレビで観たサッカー日本代表の試合の観客より多い餓鬼どもが群がり始めた! これはさすがにヤバい!!
ワタシはセントに、
「運転変われ!」
「え?✰ でも免許無いけど✰」
ワタシはセントの頭を左手でパンと叩き!
「生きるか死ぬかに免許なんて関係あるか! 右のペダルをひたすら踏んでろ!」
ドアを開け! 荷台に飛び移る!
未だに漫画を読むリュウトの股間をガン!!と蹴った!
もちろんブーツのつま先でね。
リュウト「うぼ!」
「リュウト! 漫画なんて読んでる場合かよ!!」
リュウト「痛ってぇ……ううう」
「周りを見ろ!」
ワタシは、まだ車の後ろで吐き続ける、四つん這い中年奴隷の
「うっっ…ぼっ(^ω^)♪」
「コイツのゲロ天津飯の匂いで餓鬼が、うじゃうじゃ湧いてんだよ!!」
リュウトは周りを見て驚いて、
「うわ! すげ!」
ショウが!
「ユキノ様! 前!」
前を見ると、高速で走る軽トラの100メートルほど前方に大きな岩が!
このままじゃ! ぶつかる!
「セント!! ハンドル右に回せ!!」
「はい!✰」
グーーン
大きな岩を、かするように避けた!
だけど!
岩の上からボトンボトンと2体の餓鬼が荷台に落ちてきた!
手足は異様に細く、腹が風船のように膨らんだ餓鬼…
餓鬼A 「てん・・しん・・はん・・」
餓鬼B 「くわせ・・ろ・・・」
餓鬼2体、口を大きく開け、
「あんぐっ」と、中年奴隷のサルグツワの付近を両方から喰らおうとした!
その時!
ショウとリュウトが、餓鬼の尻をドンと蹴飛ばして車から落とした。
しかし!
すでに前方には、無数に群がる餓鬼ども!
ワタシは運転席と荷台の間シャーシを左手で掴み、右手にムチを構え!
「前方はワタシに任せて! ショウとリュウトはサイドを守れ!」
一升瓶を持ったショウとリュウトは!
「了解!」
「ういっす!」
ワタシは… 精神を『S』に強力に委ねた後…
ムチを振りかぶって…
『S』pace !!
『M』agnitude !!
S難度 ★★★★★ ★★★★
ブ――――――――――――――――――――――――――ン
遥か向こうまで伸びたムチを!!
「うおおおおおおおーーーー!!!」
限界のチカラで振る!!
グウウ―――――――――――――――――ン!!!
超長距離に伸びたムチの半円の剛撃!!
岩をも貫いた!
テレビのノイズの様に群がっていたクソ餓鬼どもは、車のワイパーで消える雨水の様に… 前から消えた…
遥か彼方まで飛び散った餓鬼どもの一部は、パチパチと岩にぶつかる、それは血を吸った蚊が潰された様な姿。
ショウ「すっすげえ…前方の数万の餓鬼が一掃…」
リュウト「これが閻魔女王のチカラかよ…」
前方の餓鬼が消え、走り続ける軽トラの上…
フッっと、
ワタシは力が抜け… 片膝を付く…
「くっ…『S』パワーを使いすぎた?」
すると四つん這いの中年奴隷が近づいてきて、
「ぼ~('ω')」
尻を向けてフリフリした、片膝のまま残った力を振り絞り、尻にムチをパッ‥ン
「ぼっ('ω')」
身体の芯にジュン↑ という感じオーガズム…?
うん? 気のせいか…『S』パワーが少し戻った??
もう一度、ムチでパーンと打つ、
「ぼっ…(^ω^)」
ジュジュンビック↑↑ あっ… やっぱ感じてる…
なるほど! この中年奴隷とSMすれば『S』パワーは回復するのね!?
試しに「ういっす」リュウトの
「いってえぇてぇ!」
なにもおきねえ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます