9話 閻魔女王の軽トラ


 店の外へ出た。


 テイクアウトの天津飯を地面に置くと、四つん這いの中年奴隷がサルグツワの口をパックにねじ込んで食べだす。


「ぼぎゅぼきゅぐちゃ~~(^ω^)♪」


 周りの野良猫達が不気味そうにコイツ(中年奴隷)を見ていた。

「ん?」

 ワタシはラーメン屋の横にシャッターの開いているガレージがある事に気づく、

 中を覗くと…


 軽トラだ!?


 ガレージの中に入り運転席を覗くと、ATだし、車のカギも刺さってる…


 ヘヘ


 ドアを開け… 運転席に座る…


 すると赤鬼のセントが、トントンと窓を叩いたので、手動式をキュルキュルと回して、窓を開けると、

「ユキノ様✰ まさか盗む気?✰」


「あたり」


「盗みは駄目✰ すこしまってて✰」


 セントは行き、すぐ帰ってきた。ラーメン屋の店主も同伴してきた。

 店主はへこへこと運転席のワタシに頭を下げ、

「あなたは閻魔大王から地獄を守る使命を受けた、閻魔女王だったんですね?」


「うん」


「なら使ってください、私はほとんど乗らないので、燃料は満タンあります、予備もそこにたくさんありますから、古い車ですいませんね。 あと漫画を差し入れします道中ヒマなら読んでください」


「ありがとう」


 店主はワタシに一礼して、荷台に『うみねこの鳴く●ろに』の全巻を入れて、店に戻った。

「おい三体鬼ケルベロス、燃料を積めるだけ積みなさい」


 ケルベロスはせっせとポリタンクを積んだ、総数12缶。

 え~と、この大きさは約20リットルだから、約240リットル?

 これだけあれば、餓鬼地獄2000キロはなんとか横断できそうね。

 ワタシは運転席から中年奴隷と三体鬼ケルベロスを見て、


「セントは助手席で道案内をしろ、他のグズ二匹と中年奴隷は荷台に乗れ」


 四つん這いの中年奴隷と、青鬼ショウと白鬼リュウトは荷台に乗った。

 ショウとリュウトの2人は、なぜか楽しそうだった…まったく危機感ゼロ。


 セントが助手席に乗りシートベルトを締めると、

「ユキノ様は免許持ってたんだね✰」


「ええ、高校中退だけど唯一持ってる資格が運転免許証よ、AT限定だけどね」


「さすがユキノ様✰ 俺とショウとリュウトは運転できないけど…アレ(中年奴隷)は運転免許証を持ってるのかな?✰」


「持ってても、目隠しで目が見えないんじゃ意味が無いわよ」


 ワタシはキーを回す。


 ドッリュリュリュッリュ


 その時、セントが、

「まさかユキノ様☆ 今から餓鬼地獄を横断をする気?✰」


「ええ、そうよ」


「飲酒運転になるから✰ 民宿で泊まった方が✰」


「時間をかけると敵に用意されるでしょ? 気が変わった、今すぐ行く」


 高速バック!!

 きゅいーん 高速転換!


 キキキッキーー!


 フルスロットル!!


 ブブ―――ン


 ドラッグストアが見えたから、


 キーーーー!

 急ブレーキ。


 ワタシはパンと外に出て、安全運転を要求してきた荷台のショウとリュウトに、


「今から、寝ずに一気に餓鬼地獄2000キロを横断するために酒をたくさん買ってこい」

 と、黒光りしたムチを見せると、ササッとショウとリュウトは荷台から降りて、ドラッグストアに行って、すぐ戻って来て、


「買って来たよ」


 ビールロング缶を4ケース抱えて持って来た。


 たまらずワタシはバカ2人にムチを、


   パ――――ン!

 パ――ン!

   パ――ン! 

パ―――ン!!


「バカかぁお前らぁ、ビールはぬるくなったら不味いだろうがぁ、返品してこいちゃ!!」


青鬼ショウ「イッテ~、まじイテテ…」

白鬼リュウト 「くっ、じゃあ! 何を買ってくればいいんだよ!?」


「んなもん日本酒に決まってんだろ!! カスBL犬が!! 早く行ってこいよ!」


 その時、セントが来て、

「ショウ、リュウト、オレも行くよ」


 三体鬼ケルベロスがドラッグストアに入ってすぐ戻ってきて、

 たくさんの買い物袋を持った赤鬼セントが、


「辛口、甘口、梅酒、麦焼酎、ゆずリキュールも買ってきたよ、甘いコーヒーと水も紙コップも多めに、トイレットペーパーも。それと女性に必要そうなモノとか、餓鬼地獄でいろいろ使えそうなモノも」


 ワタシは赤鬼セントを見つめ、


「フフ……セントは気が利くわね?」


 ワタシはショウとリュウトを睨みつけ、


「それに比べてショウとリュウトは、なんというか…考えが浅いし向上心が無い。 これから餓鬼地獄2000キロを横断するのに、ドラッグストアに行って缶ビールだけだ~? 無い頭1滴残らず絞りきって考えろ? 遊びに来てんじゃねえぞ?」


 ワタシは運転席に乗り、窓から顔出して、

「乗れ」


 ショウとリュウトは不貞腐れて荷台に乗り、

 寝転がって『うみねこの鳴く●ろに』の漫画を読み始めた。


 反抗期の中学生かよ…


 セントは助手席に座り酒を紙コップに次ぎ、

「どうぞ✰ユキノ様✰」

 ドリンクホルダーに入れてくれた。


 ワタシはアクセルをフルスロットル!!


 ブ――!




 その頃…

 同じ町に…


 バイク・ベスパ50ccにトットットットとアイドリングして乗る。

 卑弥呼メロンレディの姿が…

 隣にはマネキンの顔に「西太后」とマジックで書かれたババアがハーレーに乗っていた。 エプロンをつけたババアの背中には3丁のショットガン。


 腕を組むメロンレディはマスクメロンを小刻みに震わせ、


「ははははは(≧▽≦) ユキノ先輩、まさかワラワがM便器ちゅうねんどれいの目隠しの中に発信機を仕込んでいたとは気づいていないようね (*'▽')」


 ショットガンババアはマネキンの口からツバをメロンレディのベスパに吐き、


「メロン! なんだい、そのしょぼいバイクは!? 餓鬼地獄を舐めてんのかい!」


「ワラワは原付免許しか持っていない (^^ゞ ワラワはコレで後ろから追い、ユキノ先輩の前には、ワラワの兵『メロン気球隊』が待ち伏せている…これでユキノ先輩を挟み撃ちよ。 ベスパは軽いし100キロ出るし、燃料も『S』ame『E』nergie『Ⅹ』anadu の魔法で幾らでも用意できるしね (´▽`)≪うほ~い」


 ショットガンババアはメロンレディのベスパをガンっと蹴りつけ、


「お前は餓鬼地獄の恐ろしさを知らんからな!? 原チャリで地上を走って無数の餓鬼や、魔物に喰われるんじゃないよ!!」


「ははは(^^) 魔物~? おもしろい、では、そろそろ行っくよ~ ('▽')」


 メロンレディは発信機を見て、


 ブーーー


 ベスパを走らせた、ショットガンババアのハーレーも、


 ゴゴゴーーー!


 それに続いた。


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