第43話美味しい

●美味しい

 マサネが、美味しいサンドイッチを作ってくれました。


 マサネは特別なことは何もしていないといいますが、私にとってはとても特別な味になります。リヒトたちもサンドイッチに舌鼓をうっていました。


「おいしいぃ!」


 特に、フィーネは大喜びでした。


「これは、シナさんの気持ちが分かってしまいます」


 そう言ってもらえると、私は大変うれしいです。


 マサネも嬉しそうでした。


「喜んでもらってよかったよ。まだまだあるから、食べてくれよな」


 マサネの料理を食べた人間は、みんな笑顔になりました。やはりマサネはすごいのだと私は思いました。


「シナ、どうしたんだよ」


 マサネは、私の方を見ていました。


「いいえ、なんでもありませんよ」


 私は、そう答えます。


「マサネのごはんは、相変わらず美味しいとは思っていましたけど」


「ありがとうな。でも……俺はシナに人の殺し方を習わなくて正解だったかもしれないな」


マサネはそんなことを言いました。


「リヒトたちの訓練を見ていて思ったけど、俺じゃ無理だったよ。だって厳しすぎるもん」


 マサネの言葉に、私は笑います。


「リヒトたちも元々が結構強いですからね。あんな力業の訓練になったんですよ。初心者のマサネだったらもうちょっと穏やかになったと思いますよ」


「それでも俺に教える気はないんだよな」


「はい」


 私は、そう答えました。


 マサネには人殺しの技術を身に着けてほしくない。その願いは今も変わりがありません。


「これは私の我儘です」


 私は、マサネを見つめました。


 マサネはサンドイッチを食べていました。


「どうか……どうか、守らせてください」


 私はそう呟いていました。

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