第30話守れたもの

●守れたもの

「マサネ!」

 私たちが家に入ろうとすると、マサネの姿が見えました。


 マサネは、不死人に噛まれそうになっていました。私は飛び出し、マサネに噛みつこうとしている不死人を蹴飛ばしました。そのまま、不死人の首を狩ろうとします。


「待ってくれ!そいつは、ハクなんだ!守ってくれた人なんだ」


 マサネは、そう言います。


 私の手は、少しばかり躊躇しました。


 けれども、ここで不死人を見逃してしまうわけには行きません。私は、不死人の首を刈り取りました。マサネは、叫びます。


「ハク!!」


 私は、マサネを家に押し込めます。


「マサネ、どうして上に行かなかったのですか?」


 私は、マサネを問いただします。


「上には……もういけない」


 マサネの言葉は、その場にいた全員を騒然とさせました。リヒトもフィーネもゼタの上に行こうとはしていませんでした。けれども、上に行く道が閉ざされ閉じ込められたことは心理的なダメージを負います。


「このまま、皆が不死人になるのかな?……ハクみたいに」

 

 マサネが、弱弱しくそう呟きました。


 ハクというの人間が、どのような人間かは分かりません。分かりませんが、少しばかり私は彼にイライラしていました。


「弱い人間のことを引きずらないでいただきたい!」


 私は、マサネにそう怒鳴りました。


「ここにいるのは、生き残ろうとする強い人間です。マサネ、あなたもここにいる限りは強い人間でいてください!」


 私は、マサネに怒鳴っていました。


 私は、マサネに生き残ってほしいのです。そのためには、まずは気力でした。この地獄のような状態では、気力が弱くなった人間から死んでいきます。


「マサネ、あなたは私が守ります。だから、生きてください!」


 その言葉に、マサネは頷きました。


「分かった……シナ。分かったよ」


 マサネの瞳に、もう嘆きはありませんでした。


 生き残る、という強い思いだけがありました。


「俺も生き残るから、シナもな。絶対だからな!」


 この地獄の中で、マサネはそう決心しました。


 ならば、私も自分とマサネが生き残るためにも一人でも多くの不死人を狩るだけです。


「リヒト、フィーナ、ゼタ。休憩は十分ですか?」


 私は、三人に声をかけました。


三人は三者三葉に、返事をしました。


けれども、返事の内容はほとんど変わりがないものでした。


私たちは、外に出て不死人の首を刈り取り続けました。


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