第27話広がる病
●広がる病
私は急いで家に帰りました。
「マサネ!」
急いでの私の帰宅に、マサネは眼を丸くしていました。
「どうしたんだよ。そんな顔をして」
「説明している暇がありません。不死人が広まりつつあります」
「不死人?」
マサネは不死人のことを知りませんでした。
「危険なモンスターが持っている病です。今すぐに地上に走ってください。もしも出れないときには、誰にも見つからないようなところに隠れて。噛みついてきそうな相手には、決して近寄ってはいけませんよ」
「ちょっと待てよ」
マサネは、急く私を落ち着かせます。
「お前は、どうするだよ」
「……できるかぎり、不死人を倒して事態を落ち着けます。マサネ」
私は、彼に顔を近づけました。
そして、前髪で隠されていた額に自分の額を近づけます。
「あなたは逃げきってください。親しい人がどんなに倒れても、自分が生き残ることを考えていてください。あなたが生きていれば、私はそれでいいんです」
マサネは、私の言葉にうなずきます。
「分かった。地上に逃げればいいんだな」
「はい。地上でも気を抜かないでください」
私は、マサネの背中を押しました。走れ、と念じます。走って、走って、誰も追いつけないほどに走って、安全なところまで逃げてくれと願います。
私は、家を出ました。
家の外では、混乱が広がっていました。
不死人の病が広がり、他人が他人に噛みつくという光景が普通になりつつありました。私は鎌を構えて、自分に噛みついてこようとした他人――不死人を殺します。不死人を殺す際には、まずは頭を破壊します。脳を破壊すれば、不死人は動きが止まってしまうからです。これ以外に不死人を殺す方法はありません。
私は、不死人たちを殺していきました。
殺しても、殺しても、不死人は湧いてきます。
「シナさん!」
フィーネの声がしました。私が振り向くと、背後から不死人が襲ってきました。その不死人をゼタがなぎ倒します。
「もう手が付けられないぞ」
フィーナと共にいたゼタが叫びます。
気持ちはわかります。
ですが、戦い続けなければなりません。戦うことを止めたら、不死人たちに負けることになります。それはこのダンジョンの終了を意味します。
私たちは戦い続けなければならないのです。
「それでも……休みがないのが辛い」
駆けつけたリヒトが少しですが、ばて始めていました。フィーネの魔法は傷を治すことはできますが、疲労に対しては聞きません。そのフィーネにも疲れが見えていました。
「フィーネ、リヒト、ゼタ、一時撤退しましょう」
このまま戦っていても、スタミナの関係で押し負けてしまうでしょう。
私にはまだ余裕がありましたが、それでも疲れが見え始めたリヒトたちに注意を向けながら戦うのは難しいものがあります。
「撤退って、どこに!」
リヒトの質問に、私は答えました。
「近くに、私の家があります。そこで少し休みましょう」
私の提案に全員が賛成しました。
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