第25話殺し屋の生徒たち
●殺し屋の生徒たち
私は警備隊のヨーシャに、昨日あったことを相談しました。
正確に言えば報告なのでしょう。私が属していた殺し屋の組織は、しばらく大人しくしていました。しかし、生徒たちを鍛えだしたということは近々なにか大きな動きをするのかもしれません。
そのときには警備隊の強力が不可欠です。だからこその報告でした。もう一つは同世代のヨーシャに自分はどうするべきかを教えてほしかったのです。
ヨーシャは、私の話を淡々と聞いていました。
彼は、あらかじめ私のことを知っています。
というより、私が現役時代にヨーシャが私のことを追いかけまわしていたこともありました。だから、彼が私に詳しいのです。
「だから、どうしたんだよ」
ヨーシャは、そう言いました。
突き放すような良い方でした。
「マサネの方は特になにも言ってないんだろ。なら、気にすることないじゃないか」
ヨーシャは、当然ながら他人事です。ですが、それは当たり前なのかもしれません。私がいくら落ち込んでいても、ヨーシャには関係がありませんから。
「なんですねてるんだよ」
ヨーシャは、私の頬をつつきます。
私は「すねてなんていませんよ」とそっぽを向きました。
「すねているだろ」とヨーシャはいいました。
「お前はすねてるんだよ。」
言い聞かせるようにヨーシャは言いました。
「秘密にしたかったことが表に出されて、それですねているんだよ」
そう言われてしまえば、そうなのかもしれません。
「素直になれよ。お前は一番何が怖いんだ」
「……マサネが、私を怖がることが一番怖いです」
私の一言に、ヨーシャは笑いました。
「ほら、それだけが怖いんだ。でも、マサネはお前のことを怖がってはいないだろ」
そうです。
マサネは、私のことを怖がってなどいません。
思い返してみれば、マサネが私を怖がったのは彼が拷問部屋を見たときぐらいだったと思います。それ以外は、彼は私を怖がったりはしませんでした。
「……帰ります」
私はそう言って、岐路につきました。
家では、マサネが待っていました。
私は、自分よりも背の低い彼をじっと見つめていました。
「あの……どうか私のことを怖がらないでください」
私は、そんなことを言っていました。
「私はあなたに怖がられることが、たぶん今は一番怖いので」
私がそう言うと、マサネは笑い出しました。
「おまえ、元殺し屋で拷問とかもやってたんだろ。それなに、たった一人に嫌われるのが怖いのかよ」
そういうと、私の背中を叩きました。
ばしばしばし、と痛いほどです。
厚みのない私の体が大きく揺れました。
「嫌わないよ」
マサネは、やけに自信たっぷりに答えました。
その自信が、私にはとてもうれしいものでした。
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