第19話フィーネ
●フィーネ
フィーネと共に随分と歩きましたが、リヒトとゼタには会えていません。このままでは、きっと日が暮れることでしょう。ダンジョン内はそもそも暗いですが、外に残してきたマサネのことが気がかりでした。
「今日は、このまま休みましょうか?」
フィーネが、そんな提案をしてきます。
いい考えかもしれない、と私は思いました。歩き通しているだけでは体力を使いますし、灯り玉も無限にあるわけではありません。私たちは周囲の確認を行い、保存食を食べて腰を落ち着けました。
「今日帰らないことを同居人が心配していないと良いんですが……」
私のつぶやきに、フィーネが顔を曇らせました。
「私も……姉が心配していないといいんですが」
フィーネは、どうやら姉と一緒に暮らしているらしいです。
心配性の姉なので、とフィーネは言っていました。
「フィーネは、どうしてダンジョンに潜ろうと思ったんですか?」
私の質問に、フィーネは答えます。
「私もお金が必要で……姉が病弱なんです。魔法は昔から使えたので、ダンジョンに潜ってたらくいっぱぐれないってリヒトが教えてくれたんです」
たしかに魔法使いは少ないので、ダンジョンに潜る調達屋に魔法使いは重宝されます。ただ調達屋になったとしても、売れるものを手に入れられるかは運に左右されるので「くいっぱぐれないかどうか」については疑問が残るところです。大方リヒトが幼馴染と調達屋をやりたいから誘っただけなような気もします。
フィーネには言いませんが、リヒトとゼタの信用はだいぶ低くなっていました。彼らのミスで下まで落ちたのだから、仕方のないことだとは思います。
「あなたたちはいつから調達屋をやっているんですか?熟練者には見えませんでしたが」
「……実は、先月はじめたばかりなんです」
フィーネの言葉に、やはりそうかと思いました。
様々なミスから、熟練には思えませんでしたし。
「彼らに再開したら、少し話をしなければならないかもしれませんね」
そんなことを呟くと、前方で明かりが見えました。
立ち上がり、こちらも灯り玉を照らします。
「おーい、フィーネとシナか!」
リヒトとゼタでした。
私とフィーネは立ち上がって、二人に手を振りました。
見つけてもらうことができてよかったです。
「二人とも、大丈夫ですか?」
「ああ、こっちに怪我はないぞ」
その言葉にフィーネは安堵していました。正直、あの二人は怪我させて少し困らせてやってもいいような気がしました。
「あっちにヘビの死体があります。あれから取れるものをとってしまいましょう」
私は、そう提案しました。
大蛇の皮は丈夫なので、それなりの使い道はあると思います。
売って高値がつけばいいのですが。
私とフィーネは、ヘビのところまでリヒトとゼタを案内しました。そして四人で大蛇の死体を解体します。解体作業は手間がかかりますが、解体しないと持ち帰ることができないぐらい大きいのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます