第16話子供のころの記憶

●子供の頃の記憶


 子供の頃の記憶です。


 私は、親に拷問器具の使い方に慣れなさいと言われていました。


 将来の仕事で使うことになるからです。


 私の親の仕事は、国家に仇なす罪人を拷問にかけ、真実を白日のもとにさらすこと。その役割のために、一族は代々血に汚れた拷問器具を使ってきました。


 父はずっと私に言っていました。


 正気であれ、と。


 痛みで真実を白日にするのだから、狂ってはならないと。


 常に正気であらなければならないと。


 人を拷問にかける仕事は精神的にくるものがあるのか、私の一族には狂人が多かったのです。だからこそ、父は言っていました。正常であれ。


 私は、痛みが好きでした。


痛みを感じているときは、自分が正常であると立証できる気がしたからです。


人の悲鳴が響き渡る部屋で、自分の痛みがある間は私は正常でした。


 ですが、私の兄が狂いました。


 そして、狂人がおこなった拷問が本当に正しいものだったのかと断じられたのです。拷問に正しいも間違いもありません。あるには、残酷な事実だけです。


 私の一族は、表の世界から追われました。

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