第12話ダンジョン潜り

●ダンジョン潜り

 翌朝、私はマサネが作ってくれたお弁当を持ってダンジョンに潜りました。途中で、リヒトたちとも合流できました。リヒトたちは昨日と変わらない恰好でありました。


「それでは、どのような感じで潜りますか?」


 私の質問に、リヒトは「しんがりを頼む」と私に言いました。


「俺たちはいつも先頭を俺。真ん中をフィーネ。最後にゼタっていう並び方でダンジョンに入ってたから」


「わかりました。その並びで行きましょう」


 三人のいつものリズムを崩したくない気持ちもありましたし、このなかでは私が一番年かさでありました。そのため、撤退のタイミングなどを知らせるしんがりが合っているような気がしたのです。


 北の方面のダンジョンは、南と同じくようは見た目です。岩をくりぬいたようなひんやりとした外見です。私は、石棺を思い出してしまいます。


「視認できる範囲にモンスターはいないな。もう少し潜ろうか」


 リヒトの言葉に、全員が賛成しました。


 私は一回目の灯り玉の効力が弱まったので、交換をします。


「シナは、普段は一人なのか?みんなと行動するのも手慣れているように見えるけれども」


 リヒトの質問に私は笑いながら答えました。


「普段は一人ですよ。大人数にも慣れているのは歳の甲ですよ」


 フィーネが、驚いたように私を見つめました。


「シナさんは何歳なんですか?」


 私はフィーネだけに聞こえるように、小さな声で自分の年齢をささやきました。その年齢はフィーネの想像よりもずっと上の物だったのでしょう。彼女は声を上げて驚きました。


「シナさんって、私たちよりもずっと年上なんですか。そうは見えません」


 フィーネがいうのも無理はありません。


 私は、実のところ若く見られがちの人種です。だから、実年齢をきっぱりと当てられたことは未だかつてありません。


「誰に師事したんだ?」


 ゼタは、私に尋ねます。


「基礎は、同郷の方です。ですが、鎌の扱い方は自己流です」


 こんな私でも、昔は刀を使っていました。


 それは、大昔のことでしたが。


「刀か。このあたりでは珍しい武器だな」


 ゼタは、刀の話に食いつきました。どうやら武具の話が好きな男のようです。


「ですから、一度壊れると修繕が大変だったんですよ。それで、思い切って武器は自分が一番不得意なものに特化させようと思いまして……」


 不得意なもの、というのは他人の命を奪うことです。


 私は、それが一番不得意だったからこそ武器はそれに特化させました。


「仕事が終わったら手合わせを頼んでもいいだろうか」


 ゼタの申し出に、私は頷きました。


「いいですよ」


 ゼタは目に見えて、嬉しそうに表情を変えました。その様が子供の用だったので、私は噴出してしまいました。


「ゼタは戦闘馬鹿なんだ」


 リヒトの言葉に、ゼタは「強い人間と戦えるなんて滾るだろうが」と呟きます。その表情は、すねた子供のようでした。仏頂面のようなゼタでしたが、少し喋れば彼は子供の用に表情を変えました。それが、少しばかり面白く感じられました。


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