第11話美味しい食卓
●美味しい食卓
帰ると、マサネが夕食を作ってくれていました。
使用していたのは、私が過去にとってきたモンスターの肉でした。
「おかえり、シナ」
マサネは、笑顔で私を迎えてくれました。
私もつられて、微笑みます。
「ただいま」
マサネが作ってくれたものは猪の肉の生姜焼きでした。きっと美味しいだろうという予想で、私の胃袋が悲鳴を上げます。マサネは、くすくすと笑っていました。
私と同居してから、マサネの笑顔が増えたような気がします。
元々、よく笑う子だったのかもしれません。
思えば、私と話していた彼はいつも緊張を強いるような場面ばかりでした。安らぎを得るとマサネは、明るく朗らかです。
「夕飯作ったから、手を洗ってこいよ」
マサネに言われて、私はいそいそと手を洗って食卓の準備を整えます。マサネが作ってくれた生姜焼きは前にして、私は「いただきます」と手を合わせます。
甘辛いタレが絶品でした。私は幸せな気持ちで、生姜焼きを頬ばります。
「そういえば、明日から仲間と一緒に別のところに潜ることにしました」
「仲間?」
マサネは私の言葉をいぶかしみます。
まるで、私に仲間がいるだなんて信じられないとでも言いたげです。
「仲間って言っても、今日知り合った人たちですよ」
私は、リヒトたちのことを話しました。
マサネは楽しそうにリヒトたちのことを聞いていましたが、潜る場所を変えるという話題には納得できない顔をしていました。
「同じところには、獲物がいなくなっちゃったのか」
「はい。そうです」
私は、地図を広げました。若い頃からずっと使っている、ダンジョンの地図です。私が潜っている南側のダンジョンの書き込みは多いですが、北側のほうにはほとんど書き込みがありませんでした。私が、ほとんど潜ったことがないせいです。
「私は南側によく潜っていましたから、書き込みが多いんです。ですが、最近南側に人が多くなったせいなのか狩れる獲物が減っていましたから」
このまま南側だけを狩場とするのは難しいことマサネに説明しました。それと同時に、新しい場所に行くために仲間がいるとも説明しました。仲間がいれば、新しい場所の調査もやり易いのです。
「明日は北側に行くんだ……」
マサネは、心配そうに私を見ていました。
「大丈夫ですよ。私もそれなりに経験者ですし、仲間もいますし」
父親を亡くしたばかりのマサネは、少し他人の不在に敏感になっているような気がしました。
「……拷問器具を見せた時には、こんなんではなかったんですけどね」
もっと怯えられていたし、ここまでの信頼もなかったような気がしました。
「そりゃ、ほぼ初対面で拷問器具だぞ」
今は亡き、拷問器具部屋。
今では、その部屋はマサネの部屋になってしまっています。端っこの方に、ちょっとした器具は残しておいてもらえましたけど。
「前から思ってたけど、お前って加虐趣味とかもってないよな?どうして、あんなに拷問器具を持ってるだよ」
マサネの質問に、私は一瞬戸惑いました。
「その……集めたくなりませんか?」
私の言葉に、マサネは大声で叫びました。
「ならない!」
その声に、私はちょっとばかり驚いてしまいました。
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