第10話狩場
●狩場
安全地帯を後にして、私はダンジョンの下にもぐっていました。
潜っていると、自分が生きやすい場所というのが出てきます。そういう場所に、私は何度ももぐることになります。ですが、何度ももぐれば当然のごとくそこの場所は狩りつくされることになります。
「こまりましたね」
私が潜った場所も、そのように狩りつくされていました。
モンスターがいなければ、私たちも儲けがなくなってしまいます。別の狩場を探さなければなりません。私は、ため息をつきました。
「別の場所を探さないといけませんね」
私は、荷物を持って地上を目指します。
「おーい」
背後から声をかけられて、私は振り向きました。
そこには、同業者がいました。
「おまえも、なにも見つかなかったのかよ」
調達屋の同業者は、私の肩を叩きました。
どうやら、相手も何も見つからなかったようです。
「なぁ、明日俺たちと一緒に潜らないか?」
みたところ、同業者は三人組でした。三人で組んでいるということは、初心者なのかもしれません。あるいは私とは違って、深く潜ることを生業としているか。どちらかでしょう。
話を聞いてみると後者でした。
三人のリーダー格である、リヒト。治癒と魔法の後方支援を担当する女性のフィーネ。そして、一番大ぶりな武器を使用しているゼタ。という男二人、女一人のパーティーと私は一緒に行動することになりました。
三人ともこの界隈でずっと潜っていましたが、他の場所にはあまり行ったことがないとのことでした。不安なので、初めての場所にはできるだけ大人数で挑みたいとのことです。
それは私も同じ気持ちです。慣れた場所以外の仕事は緊張します。それにどこに危険があるかどうかが分からないというのも、一人が危険な理由の一つです。
「おまえの得意武器は鎌か?珍しいな」
リヒトは、私の鎌をじろじろと見ていました。
たしかに、鎌が武器というのは珍しいのかもしれません。というか、私以外では見かけたことはありませんでした。
「なれると使いやすいんですけどね」
私が、そう呟きました。
リヒトたちの武器は、ごく普通の剣でした。体格が大きなゼタのみ、かなり大きな剣を持っていましたが。
「あなた方は剣ですか」
「ああ、俺の剣は親父の形見だ」
リヒトは、自慢げに剣を見せました。
父親という単語に、私は嫌なものを思い出しました。マサネの父親の件です。あの事件を忘れるには、もうしばらく時間が必要でした。
「どうしたんだ?」
人懐っこいリヒトは、私の顔を覗き込みます。
「いいえ……何でもありませんよ」
私は、そんなことを言ってごまかしました
「それより、皆さんは組んで長いんですか?」
見た感じ、三人は組んで長そうでした。フィーネは「幼馴染なんですよ」と笑顔で答えてくれました。子供のころから一緒だったという三人は、大人になっても変わらずに一緒にいるらしいのです。なんとも微笑ましいことです。
「では、明日からお願いします」
そう言って、私たちは別れました。
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