第8話保護
●保護
私は、保護されていたマサネに会いに行きました。年齢を偽っていたマサネは、どこかばつが悪そうにしていました。
「ヨーシャ……警備隊の人から事情は聴きましたよ」
改めてみるマサネは、小柄で弱弱しい存在ではないように思われました。それどころか、しっかりとした芯が通った強い子供に見えました。
首に絵あたしが付けていた爆弾はありません。あれは、そもそも嘘でたし。
私が考えていたことが分かったのか、マサネは首をさすって私を睨みました。嘘でも爆弾をつけたといったことを恨んでいるのか。それとも、嘘をついたことを恨んでいるのか。
「歳……いろんなところに嘘をついてた」
マサネは、小さく呟きました。
私は、頷きました。
「知っています。聞きました」
「俺は、養護施設に行くのか?」
「その件ですが……」
私は、マサネを見つめました。
「あなたが嫌でなければ、私の家に来ますか?」
私の申し出に、マサネは顔を真っ青にしました。
「あの拷問部屋に?」
「だから、あれは全部偽物です!」
人聞きの悪いことを言わないでほしいものです。
ですが、マサネは納得がいかないという顔をしていました。
「あの……部屋を片付ければ人が寝る空間ができますんで」
嫌がっているところ、申し訳ないのですが開いている部屋があそこしかないのです。マサネは、急に笑い出しました。
「あんたは、俺が命を狙ったのに俺と一緒に住もうっていうのかよ」
「狙いがあったんです。……あなたのごはんが毎日食べたくて」
『犬に死体』はなくなってしまいました。そこでのご飯が食べられないのは、私にとっては死に値します。だから、そこで働いているマサネと一緒に住めば、『犬に死体』の味をまた食べられると思ったのです。
「たったそれだけのため?」
マサネは、私に尋ねます。
私は、神妙な顔で頷きました。
「たった、それだけとは言わないでください」
美味しいものを食べるのは、私の何よりの楽しみなのです。
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