第4話ウェイトレスの話
●ウェイトレスの話
「確かに行方不になってる子は何人かはいるね。でも、ユシス以外は若い子だし、駆け落ちでもしたんじゃないかと言ってたよ」
私は『犬に死体』に着て、一番年かさのウェイトレスに話しかけました。話好きなウェイトレスは、上記のことを教えてくれました。つまり、若い女性が消えたのは事実でしたが、若さゆえの駆け落ちだと思われていたとのことでした。
人が消えるというのは、ここでは珍しくありません。
下にもぐったのか、上に逃げたのか、どちらかを目指して人は消えるのです。駆け落ちならば上でしょうか。ですが、失踪した若いウェイトレスたちばかりで、ユシスというマサネの父親が消えたのは珍しいことのようでした。ウェイトレスたちの失踪が駆け落ちならば、ユシスの失踪とは別の事件です。
「消えた子たちの名前を教えてもらえますか?外見の特徴もお願いします。あと、ユシスが殺される原因みたいなことに心当たりはありませんか」
マサネは、ユシスを私が殺したと思っていました。
ですが、私はユシスと旧知の仲というわけではありません。それは、マサネも分かっているはずです。つまり誰かが私に殺しの依頼をしたと考えていると推察するのが、自然なのです。
「ユシスねぇ。お金遣いが荒い人だったみたいだからね。ここのオーナーにも金の無心をしてたみたいだし」
ウェイトレスの話だと、息子を働かせてその給料の前借をしようとしていたらしいのです。そんな父親でも、マサネは唯一の肉親であるユシスを慕っていたとの話でした。そうでなければ復讐のために私を襲ったりはしないでしょう。私は健気な子だな、とマサネのことを思いました。
「ありがとうございます」
私は礼を言って、『犬に死体』を出ました。
ユシスには金のトラブルが付きまとっているようでした。
これは、面倒臭いと思わなくもありませんでした。
ですが、金のトラブルならば話を聞く人間は限られています。
私は、ダンジョンに潜る準備をしました。
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